厚生労働省は10月12日、2020年の東京五輪に向け、飲食店やホテルなどの建物内を全面禁煙とする受動喫煙防止対策をまとめた。違反した場合は、管理者などに罰金を科す方向で検討を進める。早ければ2017年の通常国会に必要な法案を提出したいとしているという。NHKなど各社が報じた。
受動喫煙による健康被害は以前から問題になっている。6月の厚労省の発表によると、受動喫煙が原因で死亡する人は国内で年間約1万5000人に上るという。
喫煙者嘆く「ただでさえ喫煙所少ないのにまた安息の地が減る」
公共の場での受動喫煙防止は、現時点では健康促進法による努力義務に止まる。今回の動きは、厚労省が対策強化に乗り出した形だ。飲食店やホテルなどのサービス業や一般の事務所は喫煙室の設置を認めるが、建物内は原則禁煙。駅や空港ビル、バスターミナルも同様に原則禁煙とする方針だという。
これに対し、たばこを吸わない人たちからは歓迎の声が挙がった。
「当然だねぇ他人が飯を食ってる横でタバコを吸うような常識知らずは厳罰に処さないと」
「このためだけにオリンピックを開く価値があると思うくらいありがたいわ」
「どんどんやってくれ『受動喫煙』で病気にさせられるのは納得いかない」
だが、分煙などでただですら喫煙が制限されている喫煙者たちからは、当然のことながら反発の声が挙がる。
「は?建物内の喫煙禁止…??ただでさえ喫煙所少ないのにまた安息の地が減るわけ??死ねってか??」
「高い金を払いなんでこんなことになるんだ。煙草だめ!みたいな風習作りやがって、だめなんだったら売るんじゃねえーよ!」
「タバコくらい好きに吸わせろや」
せまい店だと「禁煙席」では意味がないこともある
しかし、屋内での全面禁煙はもはや不可避だ。8月末には国立がん研究センターが、受動喫煙による日本人の肺がんリスクは約1.3倍であると発表。もはやリスクは「ほぼ確実」から「確実」なものになったと説明している。喫煙はすでにマナーで何とかなる問題ではなくなっている。
ツイッターにはこんな投稿もあった。
「たしかに『禁煙室』じゃなく『禁煙席』だとあんまり意味ない時あるからね…(せまいお店だと結局煙とか匂いがきちゃうしお店にじたいに染み付いちゃってる)」
「都内の某珈琲店に入った瞬間に、タバコ臭くて、壁で仕切られているはずの喫煙室から副流煙が禁煙席にもに流れ込んでたんだよね。意味ないじゃん!と思って、そのお店でた」
たしかに、狭い店では「分煙化」といって席を分けても実質的に全く分煙できていないケースがある。副流煙の被害をなくすためには、いっそのこと全面禁煙にするか、コストをかけて喫煙室を設けるかのどちらかしかない。
禁煙化は客だけではなく、そこで働く人の健康も守ることになる
また、飲食店で禁煙化を進めるのは、客のためだけではない。ツイッターには、今回の報道を受け、「店舗従業員保護のために必要な事」という声もあった。タクシー業界では、乗務員の健康被害を防ぐために車内での喫煙が禁止されたが、飲食業界も同じような流れになっていくことが予測される。
厚労省の情報サイト「e-ヘルスネット」によると、イギリスやカナダ、アメリカの一部の州では、官公庁や医療施設、教育機関だけでなく、レストラン、バーでの完全禁煙が実施されているという。2020年の五輪では、日本よりも禁煙が進んだ地域の人が東京を訪れることになるが、これを機会に受動喫煙の危険性を改めて認識し、欧米先進諸国並みの環境を整えていくべきだろう。
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