今週末、栃木県のツインリンクもてぎでMotoGP第15戦日本GPが開催される。今シーズンも日本GPを含めて残り4戦。日本GPから3週連続でオーストラリアGP、マレーシアGPと続くフライ・アウエイ3連戦となる。
ツインリンクもてぎは、1999年に初めて世界GPのホストコースとなり、この年は日本GPとして開催された。その後、2000年から2003年までは、春の鈴鹿、秋のもてぎと日本で二度ずつグランプリが開催されていたため、もてぎで開催されるGPはパシフィックGPという名称だったが、2004年以降はもてぎで開催されるグランプリが日本GPとなった。
もてぎのコースはロードコースとオーバルコースのふたつのコースから構成されていて、これがツインリンクというコース名の由来だ。GPの舞台となるのは1周4.801kmのロードコースで、オーバルコースの下をくぐる2カ所の立体交差があり、5コーナー先をファーストアンダーブリッヂ、バックストレッチ後の90度コーナー先をセカンドアンダーブリッヂと呼ぶ。
左コーナー6、右コーナー8の計14のコーナーで構成されており、レイアウト的にはストップ&ゴータイプのコースで、比較的パッシングポイントも多い。
過去のレースにおいても、1コーナー、3コーナー、5コーナー進入、S字やV字コーナー、ヘアピン入り口など、多くのポイントでパッシングシーンが見られた。そして、もてぎ最大にして最後の勝負所は、バックストレート後の90度コーナーだろう。
バックストレート手前のヘアピンをうまく立ち上がれるかが、バックストレートでのトップスピードに影響し、90度コーナーの進入にも影響する。最終ラップまでバトルが続いた場合は、90度から最終コーナーのビクトリーコーナーまで目が離せない戦いとなる。
ストップ&ゴーのもてぎレイアウトは加減速の繰り返しとなるため、燃費にも厳しいコースでもある。過去のMotoGPクラスのレースでは、レース終盤にガス欠に見舞われるマシンも見られた。
2013年の日本GPでは、悪天候により金曜日の全セッションが中止となるなど、大幅にスケジュールが狂った。2014年は天候に恵まれたが、昨年は決勝日のみ雨となり、午前中の霧の発生によりタイムスケジュール変更を余儀なくされた。今年は今の所、3日間共、天気予報では晴れのち曇りとなっている。
昨年のMotoGPクラスではダニ・ペドロサ(レプソル・ホンダ)が優勝、2位にバレンティーノ・ロッシ(モビスター・ヤマハ・MotoGP)、3位にホルヘ・ロレンソ(モビスター・ヤマハ・MotoGP)が入賞した。
MotoGPクラスの決勝はウエット路面でスタートしたものの、次第に路面が乾いていく難しいコンディションとなり、レース序盤はロレンソがリードしていたものの、路面が乾き始めると後方から猛追したペドロサがロッシ、ロレンソを相次いで交わし、ホンダのホームグランプリでシーズン初優勝を達成した。
Moto2クラスでは金曜日の段階でタイトルを確定させていたヨハン・ザルコ(カレックス)が優勝。Moto3クラスではニッコロ・アントネッリ(ホンダ)が優勝した。
第14戦アラゴンGPを終えて、MotoGPクラスではマルク・マルケス(レプソル・ホンダ)がランキングトップをキープ。マルケスはアラゴンで今シーズン4勝目を記録、ランキング2位のロッシとのポイント差は52に広がり、日本GPで75ポイント以上の差に広げることができれば、マルケスのタイトル確定の可能性がある。
マルケスは2010年の125ccクラス、2012年のMoto2クラスで、もてぎでの優勝経験があるが、MotoGPクラスのベストリザルトは2013年と2014年の2位入賞、昨年は4位だった。
「3連戦はいつもシーズンの重要なピリオドとなる。異なるコンディション、異なる時差の中で3レースを戦うからだ。だから、ボクたちはいつものように落ち着いて、レースに取り組まなければならない」
「日本GPはホンダにとってホームレースだし、重要な一戦だ。2014年にはタイトルを獲得したすばらしい思い出がある。もてぎはボクたちにとっていつもチャレンジングなコース。例えばアラゴンなら全力で勝つためにアタックするが、もてぎでは可能な限りのポイントを獲得することが重要なレースとなる。どんな状況にも適応できるようにし、可能な限りベストリザルトを目指して、オープンな気持ちでレースに臨みたい」
ランキング2位のロッシは、もてぎでは500cc時代の2001年に1勝、MotoGPクラスでは2008年に1勝と優勝回数は少ないが、表彰台を通算11回獲得している。ロッシはチェコGP以降、4戦連続表彰台を獲得するなど勝利こそないものの、コンスタントに上位でフィニッシュを続けている。タイトル奪還のためにはもてぎは重要な一戦となる。
「3連戦が楽しみだ。どのサーキットもすばらしいからね。過去のレース結果でもヤマハはいい結果を残している。勝利をめざして戦いたいね。とりわけ日本に来ることでハッピーなのは、ヤマハにとってホームレースだということ。ベストをつくしていいレースがしたい。もてぎのコースと雰囲気は好きだ。3連戦に向けてボク自身の状態はいいよ」
ロレンソはマルケスから66ポイント差のランキング3位と、タイトル連覇は厳しい状況。ロレンソにとってもてぎは2009年、2013年、2014年と3勝をマーク、2011年以降5年連続で表彰台を獲得に立っており、得意としているコースだ。
「シーズンの最も難しい局面のキックオフだ。3連戦だし、全てヨーロッパ以外のレースだからフィジカル的にもメンタル的にもきつく、すごくエキサイティングだろう。一方で3連戦はいつも素晴らしいアドベンチャーだ。まず、もてぎには素晴らしい思い出がある。日本を愛しているし、このコースは大好きだ」
「ヤマハのスタッフにとっても、他の日本のメーカーにとっても重要な一戦だ。本当のホームレースなんだ。チャンピオンシップは厳しいい状況だが、できる限りベストをつくし、勝利をめざす。ヤマハのホームグランプリでそれが実現できればファンタスティックだろう」
ランキング4位にペドロサ。今シーズンの中盤戦まで苦戦気味だったペドロサだが、サンマリノGPで1勝を記録、シーズン後半に入って調子を取り戻して来た。
昨年の日本GPでは変化する路面コンディションを味方につけて追い上げて優勝。2011年、2012年、2015年と通算3勝を記録しており、ペドロサにとって得意なコース。ペドロサの援護がマルケスのタイトル獲得の大きな武器となるはずだ。
「もてぎは大好きなコースのひとつ。ここはホンダにとってホームサーキットだ。これまでもいい結果を残して来た。日本のファンの前でベストリザルトを残したいが、まずはマシンのセットアップとタイヤについて理解する仕事から始めなければならない」
「現時点で重要なのはマシンとタイヤのベストコンビネーションを見つけること。金曜日のセッションスタートからうまく仕事を進めたい」
マーベリック・ビニャーレス(スズキ)はランキング5位。ペドロサとのポイント差は6ポイント。MotoGP初年度の昨年は転倒リタイアに終わったが、Moto3では2012年と2013年に2位、Moto2では2014年に2位と、もてぎでは3年連続で表彰台を獲得した経験を持つ。
イギリスGPでスズキのMotoGP復帰後初優勝を達成したビニャーレス。復帰2年目のホームレースとなるスズキに2勝目をプレゼントできるかどうかに注目が集まる。
「もてぎに向けてのフィーリングはとてもいい。大勢のファンのサポートがあるし、スズキの人たちも応援に来てくれる。レースごとに成長しているから自信はあるし、毎レース、トップ争いができると思う。プレッシャーもないし、仕事に集中できる。マシンは進歩しているが、電子制御を理解し、セットアップを進めることができればもっと戦闘力を上げることができるだろう」
「もてぎで収集した情報はダイレクトに日本の開発陣に反映することができるので、マシン開発をさらに進める原動力になってくれるはずだ。去年は雨がレースを難しくした。今はさまざまな解決策があるのでもしウエットでも心配していないよ」
インディペンデントチームランキングではトップとなるカル・クロッチロウ(LCRホンダ)がランキング6位。チェコGPでMotoGP初優勝を飾るなど、好調なクロッチロウがファクトリー勢にどこまで食い込むかに注目。
アンドレア・ドビジオーゾ(ドゥカティ)はランキング7位。ランキング8位のアンドレア・イアンノーネ(ドゥカティ)はサンマリノGPで負傷した胸椎のケガが完治しておらず、日本GPを欠場することになった。ドゥカティは代役を立てず、ドビジオーゾのみで日本GPに臨む。
ポル・エスパルガロ(ヤマハ・テック3)がランキング9位、エクトル・バルベラ(アビンティアレーシング)がランキング10位に続く。
また、ヤマハの開発ライダー、中須賀 克行が今年もワイルドカード参戦。中須賀は日本GPには2012年から5年連続のワイルドカード参戦となり、昨年はベストリザルトとなる8位入賞を果たしている。全日本JSB1000でもランキングトップを独走し、鈴鹿8耐では2連覇を達成した日本一速いライダーだ。
今シーズンのMotoGPクラスはタイヤがミシュランに変更されたことで、タイヤチョイスとそれに合わせたマシンのセットアップが重要になっている。ここまでの14戦で8人のウイナーが誕生しており、雨などの難しいコンディションのレースでは、インディペンデントチームのライダーにもチャンスが生まれている。10月中旬のもてぎの気温、路面温度がどんなドラマを生み出すのか注目が集まる。
Moto2クラスではヨハン・ザルコ(カレックス)が202ポイントでランキングトップにつけ、Moto2クラス初の連覇なるかに注目が集まる。しかし、ランキング2位のアレックス・リンス(カレックス)とのポイント差はわずか1ポイント。ふたりにとってこの3連戦は重要なレースとなる。
ザルコは昨年の日本GPでタイトルを確定。これはタイトル争いのライバルだったティト・ラバット(カレックス)が初日のフリー走行2回目で転倒負傷、欠場してしまったためだった。
そんな中、ザルコはポール・トゥ・ウインで優勝、チャンピオンにふさわしい結果を残した。ところが今年は昨年と状況が異なり、わずか1ポイント差でのタイトル争い。もてぎでのタイトル確定の可能性はないものの、ザルコとリンスがどんな結果を残すかに注目が集まる。
リンスは昨年のレースでは雨に苦戦し、11位に終わっており、Moto3時代からもてぎでの表彰台経験はない。
リンスから39ポイント差のランキング3位にサム・ロウズ(カレックス)。ロウズは前戦アラゴンGPで今シーズン2勝目を記録。ザルコとリンスにどうからんでくるかに注目。ランキング4位にトーマス・ルティ(カレックス)、ランキング5位にフランコ・モルビデリ(カレックス)が続く。
オランダGPでグランプリ初優勝を飾った中上貴晶(カレックス)はランキング6位。中上は2011年に代役参戦でMoto2にデビュー。このときは決勝朝のウオームアップで転倒負傷し、決勝欠場となったが、2012年よりMoto2フル参戦を果たし、ベストリザルトは2012年の7位。
昨年は雨の決勝で3番手走行中に転倒、再スタートして22位と悔しい結果に終わった。今シーズンはここまで1勝、3位入賞3回、ポールポジション1回と好調で、ホームレース初優勝への期待が高まる。
また、日本人ライダーでは3人がワイルドカード参戦。昨年からMoto2ヨーロッパ選手権に参戦中の長島 哲太(カレックス)は、先週開催されたヘレスラウンドでも3位表彰台を獲得、ランキング3位につける。9月にはアラゴンGPにもワイルドカード参戦しており、今年2度目のMoto2クラス参戦はホームレースでの戦いとなる。
全日本J-GP2クラスからは浦本 修充(カレックス)と関口 太郎(TSR)のふたりがワイルドカード参戦。浦本は全日本ではスズキのマシンで戦っているが、チームオーナーの加賀山就臣の尽力、全日本J-GP2参戦チームの協力により、JAPAN-GP2というチーム名でワイルドカード参戦を実現した。
関口は2ストローク250cc時代にレギュラーライダーとして世界グランプリに参戦した経験を持つベテラン。全日本に戻ってからはST600、J-GP2で活躍を収めてきた。久しぶりの世界グランプリ参戦となる。
Moto3クラスでは前戦アラゴンGPでブラッド・ビンダー(KTM)がタイトルを確定。チャンピオン、ビンダーがもてぎでどんな走りを見せるかに注目。ビンダーは2014年に3位入賞経験を持つ。
ランキング2位にホルヘ・ナバーロ(ホンダ)、ランキング3位にエネア・バスティアニーニ(ホンダ)が続く。ナバーロは前戦アラゴンGPで今季2勝目を獲得、昨年のもてぎでも3位に入賞している。バスティアニーニは今年は勝ち星はないが、ナバーロと共にホンダのライダーとして負けられない戦いとなる。
オーストリアGPでグランプリ初優勝を飾ったホアン・ミル(KTM)がランキング4位に続き、バレンティーノ・ロッシの後継者として期待の高いニッコロ・ブレーガ(KTM)がランキング5位、ランキング6位のファビオ・ディ・ジャンアントニオ(ホンダ)と、ランキング4位を争う3人の戦いは、レギュラー参戦1年目のライダーによるルーキー・オブ・ザ・イヤーのトップ争いでもある。
日本勢では尾野弘樹(ホンダ)がランキング23位、鈴木竜生(マヒンドラ)がランキング26位につける。共に2年目の尾野と鈴木だが、ここまで尾野がアルゼンチンGPの6位、鈴木がイギリスGPの11位がベストリザルト。昨年のもてぎでは鈴木が13位入賞。尾野は2番手走行中の序盤に転倒リタイアに終わっている。2回目のホームレースで上位をねらっている。
ワイルドカードでは佐藤励と岡崎静夏(TSR)のふたりの全日本ライダーが初挑戦。現在のMoto3は、全日本J-GP3とはマシン仕様が異なり、共通ECUなどのMoto3用パーツを受け取るのはレースウイークに入ってから。フリー走行1回目から仕様の異なるマシンでスタートしなければならないという厳しい状況での参戦となるが、レギュラーライダーにどこまで迫れるかに注目だ。