籍は抜かずに残したままで、結婚生活を“卒業”する「卒婚」。もともとは「卒婚のススメ」(杉山由美子著)という本から一般に広まった造語で、タレントの清水アキラ(62)などが実行している。
離婚との違いは、夫婦関係を断ち切るのではなく、「結婚」という形を持続しながら、それぞれが自由に自分の人生を生きるということ。家族として仲良くやっていくための前向きな選択の場合もあれば、離婚の前段階の選択肢という場合もある。(文:みゆくらけん)
夫から金銭面で援助を受けながら、自由を謳歌
アラフォー向けのビューティー雑誌「美ST」(光文社)11月号ではこの「卒婚」を特集。実際に卒婚している一般人の奥さま方が、誌面に顔出しでそれぞれの卒婚事情を告白するという、なかなかアグレッシブな内容だ。特集ページには、デカデカと以下のタイトルが掲載されている。
「人生一度きりですもの。私が私らしくいるために、籍は抜かずに距離を置きました。40代で『卒婚』を選んだ私たち」
夫の束縛でランチにも行けなかったが、卒婚した今は趣味の書道も人に教えるまでになり、お泊まりも自由になったという40代の奥さま。この方は、夫に離婚を切り出したが「僕の面倒は見なくていいからそばにいてほしい」と言われ、同居で卒婚という今のカタチに落ち着いたのだという。子どもは1人で、夫とは親の責任のみを共有し、あとは互いに自由。金銭面では生活費と子どもの教育費を夫が負担している。
倹約家過ぎる夫との価値観の違いから卒婚することになった別の奥さまは、夫と子ども2人が住む家と一人暮らしの自分の家との二重生活中。生活費と子どもの教育費は夫が負担。毎日夫たちが住む家に向かい、朝晩の食事を作って自分の家に戻るという日々を送っている。奥さまは今のスタイルに満足しており、このように語っている。
「私は昔から自由人なので、こんな生活の方が心が軽くなり、夫にも優しく接することができるようになりました。以前はお友達との外出も嫌がられていたのですが、今では素敵なお友達とお食事したり美容の話をしたり、充実した日々です」
他にも、覆面座談会で登場した奥さま方が、自身の卒婚について語っている。Yさんは夫への愛情がなくなり、顔を見るのも嫌になって離婚したが、「娘2人を育てていくには自分1人では経済的に無理」と同じ夫と再婚した。
セックスレスで夫婦が疎遠に、そこから卒婚へと至る
そういった流れのため、婚姻関係にはあるものの、心の中では卒婚しているという。「夫は家事も手伝うようになったし、保険や年金を考えると籍を入れておいたほうが快適に暮らせる」と離婚にこだわらなくなったということだが、夫のことを考えると少し切ない。
「紙切れ一枚の関係でも主婦業をしっかりやっておけば、安定した生活を得られるから、割り切って卒婚している今のスタイルは我慢しているわけではない」
これはYさんに共感するSさんのセリフだが、結局共通するのはリスクある離婚より結婚したままの卒婚の方がトク、ということだ。「老後のことを考えると不安だから籍は抜かない」「子どものことを考えると、籍を抜くメリットもないし世間体もあるし」と奥さま方は口を揃える。「世間体・子ども・お金」、この3つが卒婚の理由のようだが、そもそもの原因はセックスレスだという指摘も。
「思い出せば夫との関係がおかしくなったのは、夜の生活が嫌になったと自覚した時からかな」(Sさん)
「私も。次女出産後からは一切なくて」(Yさん)
「私は拒否し続けてたら『そんな夫婦ってない』ってケンカに」(Mさん)
「セックスだけが夫婦愛とは思わないけど、この気持ちは卒婚への一歩になるよね」(Yさん)
うーん。衝撃的な誌面にかぶり付きになっていた筆者だったが、「夫っていったい・・・?」という感想が脳内を占めた。特に違和感を覚えたのは、もっといろんなパターンがあってもいいはずなのに「私が」夫を嫌になって、「私が」夜の生活を拒否して卒婚するに至った、という「私優位」なアピールが凄いこと。
さすがは「美魔女の魔力が社会を変える」と本気で謳う「美ST」である。「イイ女が男をコントロールする」というバブル時代の価値観をプンプンに匂わせ、ここまで強烈に魅せてくれる雑誌は他にないかも。私はこの雑誌が好きだ。誌面から漂いまくる「女人生最後の狂い咲き」感が、たまらなく好きなのである。
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