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SCREEN modeが語る、音楽家として突き抜ける方法「意図がはっきりしたコンテンツをやりたい」

2016年10月12日 16:11  リアルサウンド

リアルサウンド

SCREEN mode

 アニソンを再定義する。流行りのエレメンツを使わずに新しいものを作る。たとえ意味のない歌詞にも説得力を持たせる――毎回刺激的なフレーズが飛び出すSCREEN modeのインタビュー、今回のアイテムはTVアニメ『文豪ストレイドッグス』(TOKYO MXほか)第2クール・オープニングテーマ「Reason Living」だ。シンプルなマイナーキーのエイトビート、華麗に舞うストリングス、キャッチーなサビ始まりによる、作曲家・太田雅友が伝家の宝刀を抜いた豪快なロック・チューンと、これまで以上に熱くワイルドな歌を聴かせる勇-YOU-とのバランスは完璧。収録曲3曲の意外な関連性も含め、謎解きの楽しさにあふれた最新語録の登場だ。(宮本英夫)


・「前回よりも進化できた実感がある」(勇-YOU-)


――今回もまた、ミュージック・ビデオがすごいことになっていて。


勇-YOU-:体を張りましたね(笑)。前回はボクシングだったんですけど、今回は総合格闘技というか、組み技ありのアクションに挑戦したので。やりがいがありました。


――撮影秘話はあとでたっぷりと。新曲「Reason Living」は、前作の「ROUGH DOAMONDS」に引き続き、熱いロック・チューンになりましたね、雅友さん。


雅友:そうですね。


――それは『文豪ストレイドッグス』サイドからのリクエストもありつつ、SCREEN modeの今の志向がそっちを向いているということなのかな?と。


雅友:そうですね……熱いということでも、熱くないことでもいいんですけど、意図がはっきりしているコンテンツをやりたくて。たとえば「Reason Living」であれば、戦いの要素があるんですけど、MVひとつとってもただ演奏しているだけとか、イメージシーンがちょっと入ってくるだけとか、それってよくあるじゃないですか。その中で突き抜けて行くためには、自分たちのやっていることをはっきりさせることが必要だと感じているんですね。で、たまたまなんですけど、『文豪ストレイドッグス』と『食戟のソーマ』(TBS系/オープニング曲が「ROUGH DOAMONDS」)って全然違うアニメなんですけど、わりと曲に求められるものが近くて。『食戟のソーマ』は、料理のアニメであることを忘れて「バトルものと思って作ってください」ということがあったのと、『文豪ストレイドッグス』も戦いの物語というところがあるので、そこが図らずもリンクした部分があって。


――アニメサイドも、SCREEN modeにはこういう曲がハマるだろうという意図があるんじゃないですかね。


雅友:そうですね。まあでも、あんまり暑苦しいものばかりやりたくないですけどね(笑)。ただ、与えられたお題に対して限界までやっちゃう人たちなんで、求められることに対しての結果として、2作続いちゃったみたいな感じです。タイアップがあって、それに合わせて作りましたというのが通常なんですけど、それだとモノ作りのランクとしてレベル1というか、もう一段階上に行きたいなと思うので。そうなった時に、「Reason Living」という作品は、当然僕も勇-YOU-も作詞の松井洋平さんも原作をものすごく読み込んで作ってるんですけど、なおかつそこでSCREEN modeとして何か表現できないか?という時に出てきたのが、あのMVなんですよね。


――ああ~。そうか。


雅友:どんなに逆境にあってもあきらめずに立ち向かっていく、どんなに不遇な状況であっても必ず最後は上に向かっていくという、SCREEN modeとしての気持ちがリンクしていて。最後に敵を倒して、光に向かって階段を上っていくんですよ。アニメのイメージと自分たちの思いをリンクさせた結果、すごい熱い人たちみたいになっちゃったんですけど(笑)。とりあえず2作、一生懸命やったら続いたなという感じですね。


――さっきの言い方だと、クオリティはレベル2にも3にも上がったという感じですかね。アニメの世界とは違うもうひとつの映像を、楽曲を媒介にして作り上げるという。


雅友:そうなんですよね。今の時代、ネットにMVを上げるのが最初にみんなが音楽に触れるきっかけになってるんで。そうなった時に、ただ演奏してるだけでも嫌だし、曲と関係なくただ奇抜なものも嫌だなと思って、そこで何をするかが大切だと思うんですね。そこで勇-YOU-が戦っていたりして、見てる人が退屈しないように、エンタテインメント性があったほうがいいなと思うので。


――勇-YOU-さん。撮影はどうでした?


勇-YOU-:拷問されるシーンから、戦うシーンがあって、最終的には光に向かって脱出していくという流れになってるんですけど。作品を見てくださる人それぞれに違った見方があると思うし、単純に描写すれば、悪の組織につかまって逃げ惑う姿に見えるけど、それを深めていくといろんな心理が見えてくるので、それぞれに楽しんでもらいたいなと思いますね。アクション・シーンは前回に増してかなり過酷で、殴り合うだけじゃなくて組み合ったりすると余計に筋肉も使うし、細かいケガをしたり擦り切れたりもするし。プロに指導してもらいながら短時間であの映像を生み出すのは、勇気も集中力も精神力もいることだったので、研ぎ澄まされた状態でやれてシビれたなという感じですね。おかげで前回よりも進化できた実感があったし、自分の中でも変化を感じてます。


――はい。なるほど。


勇-YOU-:それと『文豪ストレイドッグス』のオープニング・テーマ曲ということで、登場人物の中島敦や芥川龍之介や太宰治の心情を取り入れた部分がすごくあるんですよ。中島敦って、異能力のせいで孤児院を追放されて、誰にも相手にされないときに拾ってくれたのが探偵事務所だったんですね。芥川龍之介も同じような感じで、ポートマフィアという悪の組織に入っていて。ふたりとも根はピュアなんですけど、たまたま入ってしまったところが善と悪だっただけで、芥川も悪だと思って人を殺してないんですよ。罪悪感を感じないで人を殺すという、裏を返すと、怖いほどの純粋性を秘めているような気がしていて。だけどその先にある“生きる意味”って何だろう?ということは、中島敦も芥川龍之介も、それぞれの人生を踏まえながらいろいろ考えてると思うんですね。それは太宰治もそうなんですよ。今やってる第2クールは、太宰治がポートマフィアにいた闇の時代から始まるんですけど、彼が転向する大きな理由が明かされて、彼もまた淋しい過去を背負っていることがわかるんですね。だけど、はかなくとも、答えが見えなくても、バラバラに見えても探偵事務所には不思議な結束感があって、ほっとする感じもあるし。中島、芥川、太宰とか、それぞれのキャラクターの心情にもリンクさせようとして、この歌詞を作ったということもありますね。


・「いつ使うか?という判断は必要」(太田雅友)


――雅友さん。曲作りとしては、どのへんがポイントですか。要素としては、ストリングスが大々的にフィーチャーされてますが。


勇-YOU-:あの弦はエモーショナルですね。


雅友:久しぶりこのパターンをやったなという感じですね。速いエイトビートの曲で、弦がめっちゃ入っているマイナーキーの曲は、久しぶりに作ったなと。


――ということは、自分の中にはずっとある引き出しだと。


雅友:そうですね。この感じはけっこう自分っぽいというか、昔からやってきたパターンなんで。ほかの人たちがやるともっと複雑になるんですけど、僕がやると単純になるんですよ。でもよく聴くと意外と難しくて、弾くとなるとちょっとせつない気分になるみたいな、そういうのは昔からやってるんで。でも毎回同じだと全部一緒になっちゃうから、いつ使うか?という判断は必要ですよね。それと、サビから始まるというのも、実はSCREEN modeはほとんどないんですよ。


――あ、そうでしたっけ。


雅友:そうなんですよ。「極限Dreamer」が〈君はShooting star〉から始まるんですけど、あれはワンフレーズだけだから、たぶん2ndシングルの「LφVEST」ぶり。


勇-YOU-:ああ、そうか。


雅友:これも、いつ使おうかな?って、とっておいたんですよ。サビから始まると、構成上の制限が多くなって、90秒以内にもう一回サビを入れなきゃいけないし、3番まで作るとサビが4回になっちゃう。トゥーマッチになっちゃう時があるので、サビ始まりは難しくて。構成も似てきちゃうし、「またか」と思われちゃうんで、使い時も「ここぞ」という時なんですよね。


――今回は「ここぞ」の時だった。


雅友:そうなんですよ。それは意図的に、そろそろ使うかと。


勇-YOU-:満を持して。


雅友:ぜひサビを2回聴いていただきたいと思います(笑)。それと前回の「ROUGH DIAMONDS」の時に、原点回帰というか、すごく簡単な方に行くみたいな感じがあったんですよ。今は複雑な曲が多いから、逆にスリーコードで押し切るとか、こんなに単純なのに説得力があるぞ、参ったか、みたいな(笑)。そこからの「Reason Living」という流れはあります。


勇-YOU-:そうですね。


雅友:もしも昔から僕のことを追いかけてる人がいたとしたら、「太田、またあのやり方だな」と思うかもしれないけど、そこは自信をもって今回ドロップしたので。


――「ROUGH DIAMONDS」の時には、「流行りのフォーマットを使わずに」という言い方をしてました。


雅友:そうですね。まあだから、アニソン・フェスとかに出ても浮きますよね(笑)。


――そんなことないでしょう(笑)。


雅友:でも盛り上がるんですよ。だからシンプルなものは届きますよね。去年“アニサマ”(『Animelo Summer Live』)に初めて出させていただいて、初めてSCREEN modeを見たという人が多かったと思うんですけど、それでもすごく盛り上がってくれたんで。


――せっかくなんでその話も触れておきますか。今年は2度目のアニサマ出演でしたけど。どうでした?


勇-YOU-:僕たち、2日目の出演だったんですよ。男性の出演者が少ない日で、バンドメンバー以外に、男で歌うのは俺らとOxTさんだけ。アイドルに囲まれていい気分にさせてもらったんですけど(笑)、ゆえに男性のお客さんが多かったんですね。「Naked Dive」と「ROUGH DIAMONDS」を歌わせてもらって、どシンプルでど直球の歌を歌った時に、みんな盛り上がってくれたし、いいアクセントになったんじゃないかなと思います。めちゃくちゃ楽しかったです。ちゃんとユニット名も忘れずに言いましたよ(※昨年の主演時に、自己紹介をし忘れた)


――それはよかった(笑)。


勇-YOU-:すごかったですよ。「Naked Dive」の2サビ終わりでお客さんを煽るんですけど、そこからの盛り上がりがすごくて。会場も大きいし、人のエネルギーもすごいし、アニサマは格別でしたね。


・「自分の声をもっと研究して、スペシャルなものになりたい」(勇-YOU-)


――話題をシングルに戻して、カップリングの話に行きますか。2曲目の「Mr.Satisfaction」は、グラムロックっぽいかっこいい曲。


雅友:グラム感もあり、80's感もあり。ボンテージなんですよ、イメージは。「Reason Living」のMVで、勇-YOU-がムチで打たれてるじゃないですか。あれが拷問じゃなくてプレイだったとしたらどうなんだろう?というのが、僕の裏テーマだったんですよ。で、曲を作って、松井さんが書いてきたタイトルが「Mr.Satisfaction」だったという(笑)。何も言ってないんですよ。すごいなと思った。


勇-YOU-:この話、使えるんですか(笑)。


雅友:何か通じ合うんでしょうね、彼とは。


勇-YOU-:それを俺に投影するという(笑)。


雅友:僕の中で80年代というと、自由な感じなんですよね。ニューヨークかどこかの秘密クラブで、男か女かわからない人たちがいっぱいいて、あやしく踊ってるみたいな、そういうものをイメージして作ったんですよね。そういうヤバいクラブで、この曲が流れてたら面白いなって。アニメ盤とアーティスト盤のCDの、アーティスト盤のほうには「Reason Living」のMVを収録したDVDが入ってるんで、音を消して流してもらって、音は「Mr.Satisfaction」を流してもらうと、新しい楽しみ方ができると思います(笑)。


勇-YOU-:雅友さんの裏テーマに沿って楽しめるということですね。


雅友:これは、SCREEN modeのセクシー路線のひとつでもあるんですよ。「LOVE and FAKE」とか、「RED AND BLACK」とか、時々やるエロ路線みたいな。それがついにムチを打たれるところまで来ちゃったと(笑)。


勇-YOU-:こういう曲、歌ってて楽しいんですよね。それこそ自由って言ってたけど、歌にも自由さを乗っけられるんで。「Reason Living」は自分の中の王道というか、今まで積み重ねたものをすべて出せた部分があるんですけど、「Mr.Satisfaction」は、歌うよりも演じるほうのスイッチが強く入るので。語尾の動きとか、いたずら心のある歌いまわしとか、ちょっと誘ってる感とか、色気とか、いろんなことを考えながら歌ってましたね。自分の声をもっと研究して、スペシャルなものになりたいという思いがすごく強いので、日本語が多少聴きにくくても味を出す歌い方をしてみるということが、「Mr.Satisfaction」でトライできたので。それはこの先の自分のテーマだと思ってるんですけど、この曲はレコーディングしていて一番楽しかった曲ですね。


――さらにもう1曲。「Distance~風の先へ~」は、前の2曲とはまったく違うバラード。


雅友:これはかなり前からあった曲で、どこで出そうかな?という感じだったんですけど。今回、表題曲がかなり圧力が強いんで、きれいなバラードを入れたらいいんじゃないかなということで、やった感じですね。今回は歌詞もみんなで書いて、なかなかストレートなラブソングになりました。(歌詞を見ながら)この主人公は、けっこう激情なんですよね。〈燃え尽きてしまったら/もっと楽になれるの?〉とか。破滅的な。


勇-YOU-:けっこう深いところまで行っちゃってますね。


雅友:バラードは、あんまり今まで書いてこなかったんで。バラードって誰でも書けるかなと思ってたんで、あんまりキャリアの中で書いてきてなかったんですけど、SCREEN modeになって、別の人に書かせるわけにもいかないんで、最近書くようになったんですよ。勇-YOU-が歌うことを考えると、普通に歌えちゃうから、あえて「Reason Living」みたいなものを歌ってもらって、新しい表現をしてもらいたいなという部分があるんですけど、その一方で勇-YOU-にしか歌えない歌というものがあると思うから、王道のバラードを歌ってほしいなという部分もあって。さっき言ったエロ路線みたいなものと同時に、バラード路線というものもやっていこうと。


――はい。なるほど。


雅友:アニソン業界や声優業界だと、いわゆる歌のプロの方じゃない場合も多いじゃないですか。そういう方でも歌えるようにということで、バラードを作ったりすることも多いんですよ。でもそうじゃなくて、王道のど真ん中の、手加減してないバラードを勇-YOU-には歌ってほしいなと思ってるんで。そういう意味で、これはまったくアニソンぽくないですね。そこもSCREEN modeの魅力のひとつになったらいいなと思って、時々やっているマジバラード・シリーズの1曲です。


勇-YOU-:本当に難しいんですよ。メロディがシンプルだから、嘘がつけない。言葉を聴かせるバラードなので、押すよりも引く楽曲というか。SCREEN modeの軸として自信をもって伝えたいのが、こういう王道のバラードだというところもあるので。今後とも大事にしていきたいですね。


雅友:〈どれほどの痛みなら/この想いは届くの?〉って言ってるんで、痛みを受ける覚悟もあるんですよ。「Mr.Satisfaction」のように。


勇-YOU-:全部つながってるのか! 妙な説得力があるな(笑)。


雅友:「Mr.Satisfaction」が、なんでムチ打たれてるか?という解釈がここにある(笑)。ムチを打ってる人がすごく好きなんですよ。


勇-YOU-:面白いなあ。


――今回のシングル、衝撃の三部作ということが判明しました(笑)。これはぜひCDでお買い求めいただかないと。


雅友:「Mr.Satisfaction」を聴かないと、始まらないと思うんですよ。すごく気に入ってるので。アーティスト盤のほうにしか入ってないので、ぜひ3曲とも聴いてほしいですね。
(取材・文=宮本英夫)