F1日本GP、そしてスーパーGTタイ戦と同じ週末に開催された、オーストラリア・スーパーカー(旧V8スーパーカー)シリーズ最大の祭典“バサースト1000”は、予選から圧倒的な速さを見せたレッドブル・レーシング・オーストラリア、トリプルエイト・レースエンジニアリングのジェイミー・ウィンカップ/ポール・ダンブレル組がトップチェッカーを受けて完勝……かと思われたが、終盤にウィンカップが起こしたアクシデントに15秒加算ペナルティが課せられることとなり、同じホールデン陣営の“サテライト”としてシングルカーエントリーしていたテンコ・オートスポーツのウィル・デイビソン/ジョナサン・ウェブ組が繰り上げ優勝となる、波乱の結末となった。
事件はレース終盤、フィニッシュまで残り11周の150周目に起きた。
首位争いを展開していたボルボS60のスコット・マクローリンに対し、戦略の違うウィンカップのホールデンが猛追。そのスピード差を活かして最終コーナーでインにダイブするも、ウィンカップのコモドアはスライドが止まらずボルボS60をコース外へ弾き飛ばすと、失速したウィンカップの背後に3番手のホールデン・ワークス、ガース・タンダーが迫りテール・トゥ・ノーズとなる。
そこへコース外から復帰したボルボが絡み、タンダーのコモドアとマクローリンのS60がホームストレート上で激しくクラッシュ。セーフティカーが導入される事態となった。
「戦略の違いもあって、ピットを終えたウィンカップが速いのはもちろん分かっていた。でも僕らはレースをしていて、可能な限り早くコースに復帰しようとしただけだ。意図的にヒットしたかったわけじゃない」と、状況を説明するマクローリン。
これに対し、スチュワードはマクローリンに選手権ポイント25点剥奪のペナルティを与え、クラッシュの引き金となったウィンカップのドライビングに対しては、15秒のレースタイム加算という判断をレース後に下した。これにより、トップチェッカーを受けたウィンカップ組は11位まで後退。しかし、チームはこの裁定を不服として控訴することを決めた。
「まだ裁定の日時は決まっていないが、今言えることは“我々は単にレースをしただけ”だということだ。(ボルボの)インに飛び込みオーバーテイクを狙ったが、マシンをうまく止められずにヒットしてしまった。懸命にレースした結果、一日の終わりにすべてを奪われてしまったような気分だ」と、ウィンカップ。
この裁定により、2番手を走行していたウィル・デイビソン/ジョナサン・ウェブ組が逆転勝利。週末最初のフリープラクティスでは、トラブルもあって17番手からのスタートとなったウイニング・ペアだが、日曜決勝のファイナルラップまでに2位浮上を成し遂げ、その時点で3番手だったトリプルエイトのもう一台、現選手権リーダーのシェーン・バン-ギズバーゲン/アレクサンダー・プレマ組と0.1434秒というバサースト史上最少僅差でゴールラインを通過し、栄冠を手にした。
また、ワイルドカード枠での参戦で注目を集めた女性ペア、シモーナ・デ・シルベストロ/レニー・グレイシー組のニッサン・アルティマは、昨年グレイシーがオイルに乗って序盤にクラッシュし21位に終わっていた雪辱を晴らす、14位フィニッシュ。今回もトラブルに見舞われながらも、シモーナは「この結果は予想できなかったし、昨年を上回れてハッピー」だと振り返った。
「私のスティントでは、クルマに乗り込んだ途端にクールスーツが壊れ、シングルシーターみたいに風も当たらないから、とにかく暑くてハードだったわ。でも、そういう事態を見越してトレーニングする必要を学べていい経験になった。セカンドスティントでは、シリーズのレベルの高さをイヤと言うほど実感させられたし、(来季からのフル参戦が)改めて楽しみになったわ」