スーパーGT第7戦タイを制し、ガッツポーズをみせる関口雄飛と国本雄資、坂東正敬監督 10月9日、タイのチャン・インターナショナル・サーキットで開催されたスーパーGT第7戦。ポールポジションからスタートした関口雄飛/国本雄資組WedsSport ADVAN RC Fが優勝を飾ったが、レース後、テレビ中継のインタビューに応えていた坂東正敬監督が、一瞬うしろに下がった後、涙を浮かべて戻ってきた。
■2011年からの悲願成就
日本のハコレースには欠かせない有力プライベーターのひとつとして、長年活躍してきたレーシングプロジェクトバンドウが、ついにワークスチームが熾烈な火花を散らす最高峰のGT500クラスで勝利を飾る瞬間がやってきた。10月8日に行われた予選では、関口雄飛が素晴らしいタイムをマークしポールポジションを獲得。LEXUS TEAM WedsSport BANDOHに2回目のポールポジションをもたらしていた。
迎えた9日のレースでは、ピットインタイミングのわずかに前、32周目の最終コーナー手前でタイヤバーストに見舞われたほかは、素晴らしいレース展開で優勝。2011年、GT500クラスにステップアップしてから悲願とも言える初勝利を飾った。ちなみにこの勝利は、ヨコハマタイヤにとって初めてのGT500でのポール・トゥ・ウインだという。
レース後、メインストレートに止まったマシンの前に、関口とともに駆けつけ国本と喜びあった坂東正敬監督。テレビ中継のインタビューに応えている最中、涙を浮かべたGTアソシエイションの坂東正明代表が近寄り、ガッシリと正敬監督の肩を抱きうしろに行くと、しばらく戻って来なかった。
ふたたびテレビカメラの前に戻ってきた正敬監督は、「涙隠しにつけていった」サングラスをかけていても分かるくらい泣いていた。「親父に褒められたんです。あれで泣いちゃいましたね」と正敬監督はレース後明かしてくれた。
■「すごいことをした。素直に褒めたい」
正敬監督が何を言われていたのかは、10月21日発売のauto sport No.1442に譲るが、チェッカー後しばらくしてから、坂東正明代表に「マサ監督に何を言っていたのですか?」と聞くと、正明代表は少し照れながらも「まあ、『おめでとう』って言ってただけだよ」と教えてくれた。
「勝つところまでやってきたからね。努力してきたことに対してもそうだし、すごいことをしたというところもある」と坂東正明代表。
「親としてもそうだし、レーシングプロジェクトバンドウの初代としても。特にオレは、GT500をやっていなかったから」
「GTアソシエイションの仕事をするために、右も左も分からない小僧にレーシングプロジェクトバンドウも坂東商会も渡して、だからといって大したフォローもしてこなかった。スポンサーの皆さんに支えられたところもあると思うけど、10年近くやってきて、いくら親の力があったからって、継続してやるのは自分の力でやっていかなければいけない」
「全然分からないなかで努力してやってきて、いろんなメディアに出たりして自分の名前を出して、勝つところまでやってきた。これは実績だと思う。やっぱりスゴいことをやってのけたのは事実。この環境でワークスチームが並ぶレースで、町田のプライベーターが引き継いでやってきたことが実を結んだということは、素直に褒めてあげたいと思ったから」
もともとサッカーに打ち込んでいた坂東正敬監督は、GTAの代表に就く父のあとを継ぎレーシングプロジェクトバンドウを率い、レースのことを必死に学びながらGT300、そしてGT500と戦いを挑んできた。ついに息子が成し遂げた栄光に、坂東正明代表も一時GTA代表の立場を離れ、父として先代として祝福に訪れたというわけだ。
「ドライバーもそうだし、チーム全体もそうだし、努力すれば絶対に報われると思うんです。そして、高いレベルに対してあきらめるのは簡単ですが、続けていくことも大事。時間はかかりましたけど、やっとスポンサーさんにも恩返しすることができた」と正敬監督も感慨深げだ。
レース後夕暮れに染まるサーキットで、多くのライバルチームの監督が坂東正敬監督のもとを祝福に訪れていたのが非常に印象的だった。