誰しも若い頃は、身体も脳も調子がいいものだ。僕も以前は記憶力に自信があったが、三十路に入り、最近ではふとしたときに頭に浮かんだ仕事上のアイディアですら、3分以内に忘れてしまっている始末。
さらに腰痛や背中、首の痛みも慢性化していて、どれだけ寝てもこの痛みがなくなることがないため、ロキソニンに頼りきりだ。(文:松本ミゾレ)
「320ゴールド手に入れた! 税金が20ゴールドひかれた!」
さて、先日ツイッターで「#中年ドラクエ」というハッシュタグつきのツイートが流行した。主に30代以上のユーザーが、現状の自分の実体験を、「ドラゴンクエスト」の演出風にツイートしているんだけど、これが結構面白かったので、ちょっとこちらでも紹介したい。
「宿屋で寝ただけではHPが全回復しない」
「ほとんどのイベントが迷宮入り」
「上司がバシルーラを唱えた 地方の子会社に飛ばされた」
「呪文の名前が『アレ』『あのアレ』『火が出るアレ』など抽象的になってくる」
と、こんな具合に面白いものがいくつかあった。個人的に自分が特に好きだったのはこちらだ。
「魔物のむれをやっつけた!
320ゴールド手に入れた!
税金が20ゴールドひかれた!
生命保険が30ゴールドひかれた!
健康保険が15ゴールドひかれた!
住宅ローンが30ゴールドひかれた!
教育ローンが25ゴールドひかれた!
年金が30ゴールドひかれた!
車の」
文字数オーバーになるほど力いっぱいにツイート。書いた人は天才だと思う。笑ってしまうと共に、なんかイライラしてくるし。
中高年ともなれば、身体にもそろそろガタが来る頃。記憶力もガタ落ちし、自分のポンコツ化に気付くことも増えてくる。そういう辛い現実を、ドラクエの世界観で捉えることによって、少しだけショックも和らぐように思えた。
現実のようにシビアな設定だった名作「ウィザードリィ」
また、ドラクエではレベルアップすると強くなることが多いが、「中年ドラクエ」では、レベルアップしたのに「ちから」や「すばやさ」が逆に下がるという内容もあった。
悲しいけど現実では、人は経験や年齢を重ねるうちに老化していくものだし、そのせいで身体能力だって軒並み落ちる。そういえば、まだドラクエも登場していなかった1981年に、「ウィザードリィ」というパソコン用ゲームソフトが存在していた。
このゲーム、ドラクエなどの後世のRPGに多大なる影響を与えたが、僕も死ぬほどやりこんだ。同作は、キャラクターの職業が現実と似通った作りになっている。「戦士」や「盗賊」といった容易になれる職業はレベルアップも早いが、「ビショップ」や「忍者」といった上級職ではレベルアップするまでがかなり長くなる。
バイトがバイトリーダーになるまでの期間は本人次第でいくらでも早まるが、政治家、学者といった高度な知識や経験などが必要な職では大成するまで時間がかかることと同じだ。
また、キャラクターは戦いでダメージを受けてHPがゼロになると死ぬ。一応復活のチャンス自体はあるが、そこで失敗すると文字通り本当にキャラが死に、消えるので油断がならない。
それからレベルアップの際も、年齢がある程度のラインを超えると、ほとんどステータスがアップしなくなるどころか、下がることもある。これもまた、中高年以降年々輪をかけて体力が低下する現状と似通っている。
歳を経るごとに人はいろんな意味で下降線をたどることになる。「ウィザードリィ」はそういう面にもしっかり目を向けていたということだろう。しかもこのゲームはオートセーブなので、やり直しが効かない。こういうところも、人生と似ている。
さすがにユーザーに親切とは言えないシステムなので、現在発表されている多くのゲームには採用されていない。だけど、ゲームの中で魔王を倒すよりも、現実の世界で日常をこなし、健康で長生きする方が難しいというのも、改めて考えると面白いものである。
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