10月9日午後2時、日本GP決勝のスタートを迎えた。未明の雨は朝までに上がったが、オフラインのグリッド右側だけがやや湿ったパッチが見られる状態。グリッド上ではメカニックがブロワーで風を当てて乾かす姿もあった。空は雲が覆い気温は21度、路面温度は25度とこの3日間で最も低いコンディション。
セバスチャン・ベッテルは前戦のペナルティで3グリッド降格、キミ・ライコネンは予選後にギヤボックス交換を行ない5グリッド降格、そして予選17位に終わったジェンソン・バトンはパワーユニットの全交換を決めて最新のスペック3.5に載せ換え最後尾グリッドからスタートすることとなった。
ポールポジションのニコ・ロズベルグが好スタートを切ったが、2番グリッドのルイス・ハミルトンが出遅れてライコネンの後方8位まで後退し「みんな、ゴメン」と無線でチームに詫びるがエンジニアは「気にするな」と答えた。マックス・フェルスタッペンが2位に浮上し、グリッド上で「リヤブレーキがすごく熱くなっている!」と白煙を上げていたセルジオ・ペレスは好スタートで3位まで上がったが、1周目にダニエル・リカルドを交わしたベッテルが2周目の1コーナーではさらにペレスまで抜いて3位に上がる。
ハミルトンに「ベッテルがペレスを抜いたから、前のライコネンもヒュルケンベルグを抜くかもしれない」と無線が飛ぶが、その通り6周目にライコネンが攻略したヒュルケンベルグを続いて7周目の1コーナーでパスして7位に上がる。
2位フェルスタッペンは「全体的にグリップ不足に苦しんでいる」と無線で訴え、3位ベッテルが忍び寄る。ライコネンはデグナーで縁石外の人工芝まではみ出す場面も。10周目になるとフェルスタッペンは「左リヤにかなり苦しんでいる」と無線で訴える。一方ハミルトンには「他車がタイヤに苦しみ始めた。君はこのタイヤをできるだけ長く保たせる必要があることを忘れるな」と指示が飛んだ。
10周目にはレッドブル勢と9位ロマン・グロージャンがピットに飛び込んでハードタイヤに交換。11周目にはグロージャンに反応してヒュルケンベルグがピットイン、そして12周目には首位ロズベルグと2位ベッテル、ペレスとライコネンがピットイン、13周目にハミルトンがピットインを済ませてバトル中のライコネンとペレスの前で戻りピットストップで2台抜きに成功。
さらに14周目の西ストレートではリカルド、15周目にはノンストップで引っ張るバルテリ・ボッタスまで捕まえて4位まで浮上した。
これで上位はロズベルグ、フェルスタッペン、ベッテル順。そこから13秒離れて4位ハミルトン、リカルド、ライコネン、フォース・インディア勢の順となる。
後方では大混戦となり、シケインの入口でカルロス・サインツJr.と交錯したエステバン・グティエレスが「何やってるんだ!完全に僕をブロックした!」とスピンを喫して縁石でマシンにダメージを負った。グロージャンもノンストップで引っ張るジョリオン・パーマーに引っかかり、パーマーには「ターン1のディフェンスは動くのは1回のみにしてくれ」とレースコントロールから警告を受ける。
後続では15位フェリペ・ナッセを先頭にアロンソ、サインツ、グティエレス、バトンの大渋滞となるが、25周目にヘアピンで大きくロックしたナッセが「ハードにフラットスポットを作ってしまった!」とピットに飛び込んだ。アロンソは「ここでプッシュしろ」と指示されるが「プッシュしたいけど、どのタイヤでプッシュしろっていうんだ?」と呆れる。
26周目にライコネンがピットインし2度目のタイヤ交換をすると、28周目にはフェルスタッペンが反応。さらに29周目にはロズベルグがピットインしてフェルスタッペンの5秒前でコースに戻った。一方3位争いのハミルトンは33周目まで引っ張ってピットインし、猛プッシュ。翌周ピットインしたベッテルをアンダーカットすることに成功した。コース上での逆転を期してソフトタイヤを履いたベッテルだが追い抜くまでには至らず、「逃げていく。彼はストレートで逃げていくよ」と嘆く。
レースが終盤に差し掛かると「バカげている! 何秒もロスしているんだ」「鈴鹿では高速で前のクルマについて走ることなんてできないんだ!」というベッテルなど大勢のドライバーが青旗について不満を訴えた。ライコネンも「カモーン!彼らは深刻なくらい遅いんだ!」と訴える。フェルスタッペンには「青旗の状況を改善すべく努力している」とエンジニアが伝えるが「冗談だろ!?」と状況は改善されていないと反論する。
45周目、フェルスタッペンの背後にはハミルトンが1秒差まで迫り「フロントタイヤの温度が下がっている。以前のペースを取り戻すために少しプッシュしてくれ」と指示が飛ぶ。首位ロズベルグには「フェルスタッペンとはまだ5秒差だが後ろにルイスが迫っているので彼はプッシュしている」と状況が伝えられた。
ロズベルグは「フロントタイヤの温度がワーキングレンジの下限になっている、気をつけろ」と言われながらも危なげなく53周を走り切って鈴鹿初制覇。2台の2位争いは最後まで続いたが、52周目の最終ケインで仕掛けたハミルトンはブレーキングが間に合わずオーバーシュート。結局最後までオーバーテイクにまでは至らず、フェルスタッペンが2位のままフィニッシュしてハミルトンは3位に終わった。
これでメルセデスAMGは3年連続となるコンストラクターズタイトルが決定。ロズベルグは「みんな、素晴らしい週末だったよ。コンストラクターズタイトルおめでとう!」と無線で祝福した。
ベッテルはソフトタイヤを最後まで保たせて4位、ライコネンは周回遅れに抑え込まれて苦戦しながらもリカルドを寄せつけず5位でフィニッシュした。トップ3チームの後ろではフォース・インディア勢が最終スティントにミディアムを履く戦略で7位・8位を確保。その後ろにはウイリアムズ勢が1ストップ作戦で9位・10位で、スタート直後にフォース・インディアにブロックされてポジションを下げたグロージャンは0.9秒差で及ばず11位に終わった。
マクラーレン・ホンダ勢は決勝でもペースが振るわず、アロンソは1ストップ作戦のマーカス・エリクソンと15位を争ったものの追い抜きには至らず16位。バトンは最後尾グリッドからハードタイヤでスタートしたが結局ソフト、ソフトと繋ぐ2ストップ作戦で18位でフィニッシュするのがやっとだった。