スーパーGT第7戦タイ、予選ではWedsSport ADVAN RC Fの関口雄飛がGT500で初めてのポールポジションを獲得してパドックを賑わせたが、その関口と同じくらい予選を沸かせ、関口の記念すべき初ポールを0.04秒差で脅かしたのが、今回のタイがGT500クラスデビュー戦となるドラゴ モデューロNSX CONCEPT-GTの牧野任祐だった。
「正直、悔しいです。手応えも目標タイムも分からなかったので、とにかく自分のできることを全部やりきろうと思ってアタックしました」
予選後の牧野は多くの関係者から2番手を獲得した予選結果を称えられるも、牧野本人は満足している様子はない。
「自分のフィーリングの最大限でアタックしたつもりだったんですけど、それでも新品タイヤの使い方とかは、まだまだかなと思いますね。もうちょっと(グリップの)ピークを早くもってこれていたら、たぶん、ポールを獲れていたと思います。正直、新品タイヤのウォームアップは分からなかったです」
開発競争が激しいGT500で、使ったことがないニュータイヤのウォームアップをコントロールするのは、いくらシミュレーション技術が発達している現在といえどもルーキードライバーには厳しい。それでも、マシンのウエイトハンデが10kgと軽い状態だったとはいえ、初の予選で2番手は上出来だ。
「クルマの動きはすごく良かったです。コースはシミュレーターで事前に覚えていたので、それほど違和感はなかったですが、左ハンドルのクルマでレースをしたことがなかったので、自分的にはそっちの方が違和感がありましたね」
明日の決勝では、GTドライバーの新人が必ず鬼門となる、2クラス混走によるライン取り、オーバーテイクの難しさ、そしてタイヤマネジメントといった要素が立ちはだかる。それでも、F3デビューしたばかりのシーズン中に、大抜擢でGT500デビューを果たした牧野には、そのミスのない走りと、落ち着いたクレバーな言動から、決勝への期待が高まる。
今季のNSXはバージョンFと呼ばれるシーズン2つめのエンジンが好パフォーマンスを見せ、予選では上位を狙えるようになったものの、レースではエンジンだけでなく車体側にもトラブルやアクシデントが多く、さらにはタイヤのピックアップの問題でペースが上がらない問題を抱え、予選順位を下回るリザルトが続いている。
だが、今回のタイではレクサス陣営と同様に、ホンダ陣営はブリヂストンの新構造タイヤを導入し、そのピックアップ対策改善を狙っているという。この練習走行と予選では完全にピックアップがなくなったわけではないようだが、レースでの期待は高まる。
「GT500はやっぱりレベルが高いレースですし、GT300を抜くのもありますし、ドライバーもレベルが高くて揃っているので難しいですけど、自分のできることをしっかりやって、明日は優勝目指して頑張ります」
現在のGT500は『たとえフェルナンド・アロンソが乗っても、すぐには勝てない難しい混走レース』と言われて久しいが、果たしてGT500デビュー戦の牧野が2番グリッドからどのようなレースを見せるのか。明日はおそらくレース後半を担当することになるだろうが、これまでの定説を覆してくれそうな気配が牧野には漂っている。