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“食べる”とは?食を哲学する異色マンガ

2016年10月09日 00:02  オズモール

オズモール

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【毎週土曜10:00配信】
コミック、エッセイから、絵本、レシピ本まで、ページを読み進めると思わずグーーッとお腹が鳴ってしまう、食欲刺激系の本を、“食”にまつわる本棚プロデュースやイベントなどを通じて、いろんなおいしいを提案・表現する〈COOKCOOP〉のブックディレクター・鈴木めぐみさんがピックアップ!




◆COOKCOOP 鈴木めぐみさん選

『鬱ごはん1』

これは世にいう“グルメマンガ”とは、ちょっと違います。豪華なごはんや楽しそうな食事シーン、食にまつわるうんちくなどは皆無。就職浪人生の主人公・鬱野たけしは、自宅でも外出先でも、食事をするのは決まってひとり。豚焼肉定食や回転寿司、ドーナツやソフトクリーム。食べるという行為を自問自答しながら、日々の食事を繰り返します。

就職できない自分やパッとしない自らの人生を食事と重ねあわせて、「食事は排泄と同じくして、隠される行為なのではないか」「人はいつか必ず死ぬのに飯は食わねばならない」とか、小難しそうなことをボヤきながらごはんを食べる様子がなにしろ絶妙に描かれています。もちろんポジティブさはないけれど、完全なるネガティブでもない。「食に興味がない」と言ってるわりには、舌も肥えてそうだし、手が込んだ料理も作っているような…。そんな鬱野の姿勢は、ひねくれているんだけど、空回り感もあって、なんだか憎めないから不思議です。

じわじわくる面白さと、ミョーな読後感。独特な世界観にハマる人続出かもしれません!?




『鬱ごはん1』 施川ユウキ著 ヤングチャンピオン烈コミックス 秋田書店 606円









鈴木めぐみ

食を中心とした雑誌の編集者を経て、料理本専門書店〈COOKCOOP〉のブックディレクターに。現在、実店舗は持たず、ブックセレクトや食関係のイベントの企画運営に携わっている。