やる気、負けん気を金曜のニコ・ロズベルグに見た。2セッションともトップタイムだったからではない。スローなマシンをかわすときもいままでよりスパッと抜いていった。130RでもS字入り口でも一瞬の迷いもためらいがなかった。
FP1をセクター1で定点観測中、コース内に白っぽい“ゴミ?”のようなモノが。それを踏む者もいたがだいぶ手前から避けるラインに転じるなど、こんなリアクションにもまわりがよく見え、集中しているのが感じとれたロズベルグ。
鈴鹿ではS字から旧ダンロップ・コーナーまでが“長い複合カーブ”ととらえられる。その入り口3コーナーから左~右~左~右と切り返して上り詰めた先が7コーナー。ロズベルグはS字入口からその旧ダンロップまで強すぎず弱すぎない一定リズムを刻み、まるで路面に張り付いているよう。走り出しはややアンダーステア気味でもそれをしっかりチェック、FP2ではほぼセッティングをまとめていた。
しかしFP2ではルイス・ハミルトンが0.072秒差、ライバルも午後になると仕上げて迫った。『セパンの悲劇(PUブロー)』から彼自身は立ち直り、陣営内に一抹の不安はあっても本人に後遺症はないと見た。いまどちらにもメンタルの強さがある。タイトルを争う者同士にはこうあってほしい――。
もう一つのタイトル、コンストラクターズに王手をかけているメルセデスに対しレッドブルも金曜から堂々と挑んだ。FP2を4位マックス・フェルスタッペン、12位ダニエル・リカルドで終えて、一見かすんで見えるがそれはソフト・ショートランの時に“VSC状態”になったから。アウトラップでそうなったフェルスタッペンの“被害”は小さく4番手、アタックラップだったリカルドは減速せざるを得なかっただけだ。
これを差っ引けば二人とも1分32秒台ペース、メルセデス勢に限りなく近い。フェラーリのキミ・ライコネンが3位につけたものの金曜時点では“劣勢”、実際マシン挙動もまだまだやるべきことが多いように見てとれた。
ロングランペースをチェックするとメルセデス対レッドブルは激しく拮抗。注目すべきはハードを得意とする彼らにリカルドがまさるとも劣っていないことだ。『セパン1-2』の勢いと自信、実力が、途切れることなく鈴鹿でも透けて見える。
これを書いている金曜夜半から小雨がパラパラと落ち始めている。土曜の空は泣き模様、FP3から予選にかけて昨年金曜みたいなウェット・コンディションが予想される。さらにそれが日曜まで続くか、午後2時スタートまでに濡れ乾きコンディションに変化するかどうか。ひょっとすると今年初めて『レッドブルVSメルセデス?』、雨の鈴鹿伝説を思い出さずにはいられない……。
繰り返し言ってきたフォース・インディア対ウイリアムズ対マクラーレンの中間バトル戦線も過熱。1年半かかりホンダは鈴鹿を迎えてここまできた。夜7時ごろ移動中に、パドック地下空間にある連絡トンネル内で長谷川氏とばったり出会った。周りには誰もいない。
「どうですか、順調ですよね?」
「ええまあ。PUはふたりともこのままで……(笑)。明日はFP3でもう少し、クルマを決めるためになんとかできればなと」短い雑談に彼の本音がこもった。
フェルナンド・アロンソがスプーンでスピンしたのはとても珍しい、ジェンソン・バトンがブレーキングでロックアップしたのもそう。でも謙虚な長谷川リーダーは、自分たちも何とかしてふたりのセットアップ構築を手助けしたい、という意味でおっしゃった。
「今年最高のチーム結束力を鈴鹿でファンの前でぜひ」――結果など恐れることなくいいレースをとことんやりつくしていただきたく。戦い終えてきれいな夕日が見られたならそれでいい、今年の鈴鹿はきっと来年への架け橋になるだろう。