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the GazettE、“DOGMA”ツアー69本目の集大成 熱狂が渦巻いた幕張公演レポート

2016年10月06日 18:01  リアルサウンド

リアルサウンド

the GazettE『the GazettE STANDING LIVE TOUR 16 GRAND FINALE DOGMA-ANOTHER FATE-』の様子。(撮影=KEIKO TANABE)

 9月27日、千葉・幕張メッセ国際展示場ホール10にてthe GazettEによるフリーライブ『the GazettE STANDING LIVE TOUR 16 GRAND FINALE DOGMA-ANOTHER FATE-』が開催された。


 2015年3月のバンド結成13周年を記念する武道館公演の後「PROJECT:DARK AGE」というプロジェクトを発表。その核というべき新たな漆黒の教義、アルバム『DOGMA』を15年夏にリリースし、秋から年始にかけて行われた全国ホールツアー「DOGMATIC -UN-」と「DOGMATIC -DUE-」、春には世界10カ国15公演のワールドツアー『the GazettE WORLD TOUR16 DOGMATIC -TROIS-』、そして夏には国内のオールスタンディングツアー『STANDING LIVE TOUR 2016 DOGMATIC - ANOTHER FATE -』を敢行し、文字通り世界中に“DOGMA”を刻みつけてきたthe GazettE。


 本公演はフリーライブという体裁だが、参加には『DOGMA』の完全生産限定盤の箱の中に隠されていた「GOLDEN TICKET」が必要。このチケットは発売前には告知されておらず、今年1月に存在が明らかにされた。さすがthe GazettE 、やることにやたらと手が込んでいる。


 会場に到着すると、黒、黒、黒、漆黒の群衆でフロアが埋め尽くされていた。


 影アナがライブの注意事項を一通り説明し、最後に「the GazettE からのプレゼントを存分に楽しんで下さい!」と告げると、開演を待ちきれない様子のフロアから歓声と手拍子が響き渡る。BGMからSE「NIHIL」になると歓声は格段と大きくなり、ステージにメンバーのシルエットが現れるとそれは絶叫に変わる。


 そして流れるように1曲目の「DOGMA」へ。RUKI(Vo.)の咆哮と共に波を打つかのように身体を激しく揺らすファン。「思いっきり暴れていこうぜ!」という声を合図に「RAGE」が始まると、せきを切ったように数千人のヘッドバンギングが発生する光景は壮観だ。畳み掛けるように繰り出される「DAWN」。彼らの一挙手一投足に呼応するフロアはありがちな「一体感」を通り越してひとつの大きな生き物のように見える。徐々に激しさを増すフロア、もちろんバンドも負けてはいない。戒(Dr.)とREITA(Ba.)の繰り出す屈強なリズムの上に、麗(Gt.)と葵(Gt.)の漆黒のメロディ、そしてRUKIの声が乗り、the GazettEの世界観が広がっていく。


 「葵! 葵! 葵! 葵!」「戒! 戒! 戒! 戒!」など、メンバーを呼ぶ声がこだまするフロア(息継ぎをせずにひたすらメンバー名をデス声で連呼するコールは90年代V系からの伝統芸ではあるものの、近年は主流ではないので、個人的にこういうコールが巻き起こるのは嬉しくもある)。「野郎ども待たせたな!」とRUKI。その声にひときわ大きな歓声が巻き起こる。ちなみにこのフロアにいるファンの大半は女性なのだが、何故か「野郎ども」という表現がピッタリくる。


 続けて「GOLDEN TICKET ONLY(ライブ)ということで、ここにいる人たちは相当なイカレ者だと思います。今日は俺らも楽しんじゃうから、一緒に“大打ち上げ”ということで盛り上がろうぜ!」と更にフロアを煽るRUKI。「GABRIEL ON THE GALLOWS」「VENOMOUS SPIDER'S WEB」「CLEVER MONKEY」といった、アッパーチューンを叩き込む。


 暗転したのち、「BIZARRE」を皮切りに「DEUX」、「OMINOUS」といったミドルテンポのナンバーが続き、とくに「DEUX」サビの歌詞の<自我境界破れて 心が壊れてしまった>に合わせて膝から崩れ落ちるRUKIと、真っ赤な照明に照らされたバンドの姿は幻想的で、演劇のようだった。


 そしてダンサブルな「THE SUICIDE CIRCUS」を挟んで、二度目のMCタイムでは、フロアとステージの距離を今日はギリギリまで近づけたと説明するRUKI。「だからいつも以上に行きましょう!」とフロアを鼓舞し、『DOGMA』きってのハイスピードナンバー「LUCY」で盛り上げた。


 「まだまだ力あり余ってるんじゃないのか? ガンガン演っちゃっていいから、全力で来いよ! カオスになっちまえ!」とRUKI。「HEADACHE MAN」「UGLY」「BLEMISH」とラストスパートをかけていく。本編を締めくくる「UNDYING」ではさっきまでの狂騒が嘘のように静かになるフロア、そして闇に溶けるようにメンバーはステージから消え、それと同時にアンコールを求める声が湧き上がる。その声は十数分の間ずっと声は止まず、それどころかステージに照明がついてもメンバーが登場するまでアンコールの声は続き、ファンの貪欲さが伺えた。


 リーダーである戒がマイクを取り「まだまだ行くぞ幕張! かかってこい!」と絶叫し、彼のドラムから「INSIDE BEAST」へ。久々に披露された初期の代表曲「赤いワンピース」に狂喜し、曲の振り付けを楽しむファンたち。


 この幕張公演は『DOGMA』を冠したライブの通算69本目にあたり、これだけ回った結果として、自分たちが思う形にはできたと語るRUKI。「『DOGMA』はわかりづらいかもしれないけど、気持ちがつまっているアルバムです。いろんなことがあったけど、たくさんの人がついてきてくれたことを感謝しています。今日でツアーも終わりますが、また良い物を作って長いツアーを回れたらと思っています」と述べると、ファンは温かい拍手で受け止めた。


 そして「Filth in the beauty」、「COCKROACH」と畳み掛け、RUKIの「ラスト行こうぜ!」の言葉から、近年のアンコールラスト定番曲である「TOMORROW NEVER DIES」で1度目のアンコールを終え、ステージを後にした。


 ダブルアンコールの声に再度登場したメンバー。「69本ありがとう、最後は『関東』ーーーーー!」と、なだれ込むように初期からの人気曲「関東土下座組合」へ。「待ってました!」と言わんばかりに力の限り暴れるフロア。後方では文字通り座り込んで「土下座ヘドバン」も発生し、カオス状態に。


 そして最後に「バンドはどんどん突き進むのみですので、付いてきてください。今以上に最高の景色が待っていると思います」と宣言し、メンバーひとりひとりにコメントを求めるRUKI。「今日はアットホームな感じで楽しめました」(麗)、「また会えるのを楽しみにしています」(葵)、「俺達はいつもここにいるんで、ライブに来てください」(REITA)、「終わってみたらあっという間で、それは皆さんのおかげです」(戒)など、ツアーの感想やファンへの感謝が語られた。


 そして「(写真を)撮らせてもらっていいですか?」というRUKIの提案から、ステージとフロアの集合写真撮影という、この日ならではの微笑ましいやりとりも。最後に全員で手をつなぎジャンプ、大団円となった。スクリーンに本ツアーのエンドロールが投影され、ライブは終演した……かと思いきや、エンドロール映像に突如ノイズが入り、2017年3月10日に東京・国立代々木競技場第一体育館にて『十五周年記念公演 大日本異端芸者「暴動区 愚鈍の桜」』が開催されることが発表された。その瞬間地鳴りのような悲鳴がフロア中から巻き起こる。“大日本異端芸者”はこのバンドが初期に掲げていたコンセプト。あえての原点回帰、彼らは何を見せてくれるのだろうか。(藤谷千明)