2016年10月06日 10:21 弁護士ドットコム
いくつも部屋がある比較的ひろい物件に、数人が寄り集まって暮らす「シェアハウス」が近年、都心部を中心に人気だ。ただ、家賃を低くおさえたい若者のほかにも、いろんな価値観をもつ人が入居していることから、住民同士のトラブルはたえないようだ。
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あるシェアハウスを運営する男性はブログで、入居者を退去させたエピソードを紹介している。本音としては「嫌がらせを受けた」疑いによるものだったが、建前上、ゴミが多くて散らかしていることを理由に退去させたという。
ほかの住民に迷惑をかけたことを理由に出ていってもらうことは常識的によくあることだろうが、法的に問題ないのだろうか。不動産にくわしい瀬戸仲男弁護士に聞いた。
「シェアハウスは、多くの人が共同生活をする場所ですので、迷惑行為をおこなう人には出て行ってほしいと思うことは、理解できます」
シェアハウスの住民を退去させることはできるのだろうか。
「『シェアハウス』という新しい名称で呼ばれていますが、その契約形態は『賃貸借契約』という古くからあるものです。
賃貸借契約のような長く続く契約(継続的契約)では、賃借人(大家)と賃借人(住民)の『信頼関係』が、特に重要になります。つまり、信頼関係をこわすような賃借人では困るわけです。
この信頼関係を考える際に最も重要な点は、『賃料をきちんと支払っているかどうか?』です。賃貸人は賃料を受け取るから部屋を貸してあげる、逆にいえば、賃借人は賃料を支払うから部屋を借りることができるわけです。
したがって、賃借人が賃料を支払わない場合、賃貸借契約を解除して退去させることは難しいことでありません。
一般に、裁判所が退去を認める基準として『賃料の3カ月分以上の滞納』ということがいわれています。3カ月分以上の賃料を滞納すれば、滞納額は数十万円になっていますので、いっぺんには支払えないからです」
では、家賃を滞納してないけれども、迷惑行為をおこなっている住民の場合はどうだろうか。
「法的には容易なことでありません。たとえ、契約書に『ほかの住民に迷惑行為をおこなった場合は契約を解除する』と書かれていても、賃料がきちんと支払われていれば、裁判所はなかなか契約解除を認めません。
そこで、多くの場合、シェアハウスの契約として1年未満の『定期借家契約』が利用されています。
定期借家契約にしておけば、期限が来れば、契約は終了します。契約の更新ということはありません。入居する時には、迷惑行為をする人かどうかわかりませんので、契約期間を短くしておいて、退去要求しやすくしておくのです。
このように、定期借家契約は賃貸人に有利で、賃借人に不利な内容になることがありますので、厳しい要件が必要とされています。普通の賃貸借契約と同じように考えていてはいけません。
私は、以前に、表題だけを『定期建物賃貸借契約書』と書き換えたけれども、中身は一般的な『普通借家契約』と同じ契約書を見たことがあります。それでは、定期借家契約にはなりません。
定期借家契約にならずに普通借家契約になってしまうと、契約の更新(法定更新)もありますし、立退料を支払わなければならなくなることもありえます。定期借家契約でシェアハウスを始めようというオーナーは、専門家に相談して、間違いのないようにしましょう」
住民の間でトラブルが発生した場合、どのように対処すべきだろうか。
「当事者同士だと、感情的になりがちですので、誰かに間に入ってもらうのも良い方法です。裁判所に訴え出る方法には、民事調停や民事訴訟があります。自分で勉強しながらやってもかまいませんが、専門的な知識・経験が必要ですので、専門家(弁護士や司法書士など)に相談してみることを検討してみてもよいでしょう」
瀬戸弁護士はこのようにアドバイスしていた。
なお、瀬戸弁護士には以前にも、シェアハウスの「迷惑行為」についての記事でコメントしている。
・「シェアハウスの『同居人』が家を荒らして『行方不明』どう対処すべきか?」
https://c-1012.bengo4.com/10/n_456/
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
瀬戸 仲男(せと・なかお)弁護士
アルティ法律事務所代表弁護士。大学卒業後、不動産会社営業勤務。弁護士に転身後、不動産・建築・相続その他様々な案件に精力的に取り組む。我が日本国の歴史・伝統・文化をこよなく愛する下町生まれの江戸っ子。http://www.chintaikeiei.com/answer/b_arty/
事務所名:アルティ法律事務所
事務所URL:http://www.arty-law.com/