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中村蒼が語る、『刑事ダンス』でコメディに挑戦した理由 「イメージを壊していくのも、俳優の仕事」

2016年10月06日 06:01  リアルサウンド

リアルサウンド

中村蒼

 中村蒼が主演を務める土曜ドラマ24『潜入捜査アイドル・刑事(デカ)ダンス』が、10月8日深夜0:20~よりテレビ東京系ほかで放送される。同ドラマは、テレビ東京のバラエティー班とドラマ班が、混成チームを結成して作った“刑事×アイドル”のコメディドラマ。熱くてまっすぐな男・辰屋すみれが、芸能界の表沙汰に出来ない事件を取り締まるため、潜入捜査アイドル“デカダンス”として個性的なメンバーとともに事件を解決していく模様を描く。リアルサウンド映画部では、同ドラマの主人公である辰屋すみれを演じる中村蒼にインタビューを行い、ドラマの撮影秘話や俳優としての新たな挑戦を語ってもらった。


参考:中村蒼、竹内涼真、竜星涼……夏ドラマ“報われない系男子”役で頭角を現した俳優たち


■「各方面から苦情が来ないか心配です(笑)」


ーー今回、本格的なコメディには初挑戦ということですが、役作りで何か心掛けたことはありますか?


中村蒼(以下、中村):初の本格コメディ作品なので、色々と慣れないこともあるだろうと最初は不安に思いました。でも、脚本を読んでみたらすごく面白くて、僕が演技で笑いを狙う必要はないと感じたので、普段の調子を崩さずに演技ができました。撮影する前は、お笑いの間(ま)やツッコミ、レスポンスが早い会話などに警戒していたのですが、実際に撮影が始まると意外とすんなりコメディの空気に馴染むことができました。監督からも「こっちで面白くするから、みんなはあんまり(笑いを)欲しがらずに真面目にやってもらえれば、きっとそれが面白くなるから」と言われていたので、自然体のまま作品の世界へ入っていけたと思います。あとは、僕の役は熱血刑事という設定なので、熱く真っ直ぐな人間を演じるようには心がけていました。


ーーお笑いには独特のノリやテンポが求められることもありますよね。本作は、バラエティー班とドラマ班の混成チームで作られたドラマですが、脚本を読んでみていかがでしたか?


中村:ドラマ班だけでは思いつかないような演出や、セリフ回しがたくさん散りばめられていて、演じ手が本当に笑ってしまうようなシーンもありました。それらが脚本に馴染んでいたので、バラエティ班はさすがだな、と。でも、その面白さをちゃんと自分が体現できるのか、面白いはずのやり取りが自分を通したことで半減してしまわないか、不安になる気持ちも生まれました。それに、“芸能界あるある”というか、アイドル業界やバラエティー番組などにありそうなことがふんだんに盛り込まれているので、業界の裏側のリアリティも追求しているのかなと感じました。芸能界で実際に起きた事件をパロディーにしている部分もあるので、各方面から苦情が来ないか心配です(笑)。


ーー心配になったのはどのようなシーンですか?


中村:辰屋がバラエティー番組に初出演して、ひな壇に座っているシーンです。明らかに実際にあった事件をオマージュしていたので、大丈夫かな? と心配になりました。けど、テレビ東京さんの深夜枠って、作風もそうですし、映画監督がテレビドラマを撮るなど、いろいろな意味で挑戦的ですよね。そういう意味では、すごくこの枠らしい内容になっていていいなと思いました。


ーー過激な演出も多い枠なので、中村さん自身にも挑戦はあったと思います。


中村:そうですね。振り切った演技が求められる役は楽しいのですが、あまり経験したことのないタイプの作品という意味では挑戦だったと思います。『せいせいするほど、愛してる』(TBS系)で演じた役柄ともまったく違うので、そこも気にいっていますね。前回のドラマで出来上がったイメージを壊していくことも、俳優がやるべき仕事のひとつだと思っているので。


ーー今回、ユーヤ役の大東駿介さんをはじめ、潜入捜査のために組むことになるアイドルグループのメンバー(共演者)の印象はいかがですか?


中村:大東さんはいいお兄ちゃん的な存在で、明るく面白いキャラでみんなを和ませてくれます。他のメンバーたちも、個性的な面々が揃っているので、割りと早い段階で打ち解けることができました。今回は、大東さんが一番年上で僕が二番目なので、メンバー内に年下が3人いるんですよ。今まで年下の方々としっかり共演する機会があまりなかったので、今回は後輩たちをいじって遊ぶこともありますね。


ーーそれぞれのキャラクターがドラマに滲み出てそうですね。


中村:みんな役そのものなんですよね。そのものだったらダメな部分もあるんですけど…(笑)。天然キャラのD役を演じる立花君は、素も天然で変わってるなって思うことがあったり、元子役という設定のテル役の森永君も、実際に子役出身だったりとか…重なる部分もけっこうあるので、その設定も面白いと思います。


ーー中村さんも辰屋すみれと重なる部分があるかもしれませんね。


中村:自分で言うのも恥ずかしいですけど、真面目なところは似てると思います。タツヤは、ダメなものには「ダメ」って言えるし、「これの何がいけないんだ?」って言えるような真っ直ぐな人間なので、憧れる部分もありますね。デリカシーのないところはダメだと思いますが(笑)。よくよく考えると、エキセントリックな人間しかいないかもしれないですね。


■「ひとつのターニングポイントにはなっているのかもしれません」


ーー今回、数多くのバラエティー番組を手がけている佐久間宣行さんがプロデューサーとして参加していますが、佐久間さんの印象はいかがですか?


中村:まだあまりお話したことはないですが、鋭い目線で少し尖った印象を受けました。バラエティーという“何が起こるかわからない現場”に関わってきた方なので、様々なところにアンテナを張っていて、隅々まで気をつけて見ているんだろうと感じました。最初は、ものすごい明るいバラエティーを体現しているような方なのかなと思っていたんですけど、全然違いましたね。クリエイティブですし、ふざけたこともするけどセンスがあって。演出で無茶振りは一切なかったのですが、「今、こうしたら面白いんだ」「これを付け加えたらきっと面白くなるだろうな」とか、そういうことを考えているようでした。ある意味、すべて見透かされているようで、ちょっと怖い感じがしますね(笑)。


ーー刑事かつアイドルを演じるにあたり、劇中では歌や踊りを披露するとか。


中村:歌もダンスもほぼ未経験なので、これはもう振り切ってやるしかないと思いました。最初は下手でいいっていう設定だったんですけど、逆に下手くそ具合のバランスを掴むのが難しかったです。それに、踊っていくうちに上手いと思われたいという変なプライドが芽生えてきて…ひとりで自主練習をするようになりました。でも、他のメンバーもしっかり練習していたみたいで、最終的にはみんなそこそこ踊れるようになりましたね。そのせいで、初日の撮影では逆に下手に踊るフリができなくなってしまい、どっち付かずの微妙な感じになって大変な思いをしましたが(笑)。


ーー作中で使用されている歌は全部オリジナルですよね。実際のアイドルを参考にされたのですか?


中村:今回のドラマは番組の裏側を見せるパートが多く、表立ってカメラの前でパフォーマンスするシーンは少なかったので、細かく研究することはしませんでした。僕がアイドルの方をテレビで観ていて惹かれるのは、やっぱりキラキラ輝いているところなんですよね。役者の場合は、自分のどうしようもない部分や弱い部分をさらけ出さないといけない場面がけっこうあって、それによって気分が落ち込んだり、上手く出しきれなくてヘコむことも多いのですが、そういう弱っている時にテレビでアイドルを観ると、パワーや元気をもらえることがあります。だからこそ、ステージに立つシーンのときは、実際のアイドルみたいなかっこよさを意識して、負の感情が出ないように心がけています。視聴者の方にも、僕のキラキラしている感じが伝わってほしいですね。


ーー話は少し変わりますが、11月11日から公演される舞台『さようならば、いざ』では2年ぶりに舞台へ出演しますね。


中村:舞台は、誤魔化しが効かないことが多いので、自分の良いところも悪いところも、すべてお客さんに見られる場所だと思っています。ドラマ以上に緊張はするのですが、今回は劇団“ONEOR8”さんの舞台に客演として初出演するので、同じくらい楽しみでもあります。昔は舞台がめちゃくちゃ不安で、怖いとしか思わなかったんですけど、今回はいい意味で少し余裕がありますね。


ーー余裕があったのですね。


中村:舞台のお話をいただいてから何日か経った後、よくよく考えたら今までに比べてあんまり不安要素がないなって思いました。それがどうしてなのかはハッキリとわからないのですが、おそらく2年前に出演した舞台から、これまでに経験してきた役の影響はあると思います。正統派の役だけでなく、個性的な役をたくさん経験できたので、心境にも変化があったのかなって。今回は、“ONEOR8”さんに支えていただく部分も大きいので、いつもより不安が少なかったのかもしれないです。


ーー『無痛~診える眼~』(フジテレビ系)で演じた特殊な役をはじめ、様々な役柄を通したことで自信がついたのでは?


中村:そうかもしれませんね。サイコパスのように異常性のあるキャラクターは、望んでできる役回りではないので、『無痛~診える眼~』は良い経験になりました。それで自分自身が変われたかどうかはわからないけど、間違いなく今までにやったことがない役に飛び込んだことで、自分でも知らない自分を見られたと思います。明らかな変化を感じることができたという意味では、ひとつのターニングポイントにはなっているのかもしれません。(戸塚安友奈)