思えば不自由な子ども時代を送ってきた。32年前、僕はシングルマザーの子として生を受けた。父は蒸発し、なぜか借金が残されていた。家は長屋のような市営住宅で、よく虫が入り込んでいた。
「ド貧乏」とは、まさに僕の子ども時代の生活水準のことを指していたのだろう。いまや何とか人並みの生活をしてはいるが、未だにブランド物や高級車に食指が動かないのは、骨の髄まで貧民根性が染み込んでいるからだろう。それはそれで堅実だし、何にも問題ないんだけど……。(文:松本ミゾレ)
高所得家庭の子もリスク1.3倍、やっぱり普通が一番?
日本医科大学 衛生学・公衆衛生学が、全国から抽出した9491人の12~18歳の子どもを対象に、親の社会経済状況と子どもの抑うつ・不安の関連を6年にわたって調査し、9月27日にその結果が発表された。
この長い年月をかけて導き出されたデータ、まずは世帯を等価可処分所得に基づいて均等に5群に分けている。真ん中に位置するのは中位の世帯。これはいってみれば中流家庭だろう。ここを基準とした場合、下位5分の1の世帯では、子どもが抑うつ・不安を有する割合は、オッズ比で1.6倍だったという。
それだけではない。調査結果によれば、上位5分の1の世帯の子どもも、抑うつ・不安を有する割合が比較的高く、中位世帯と比較して1.3倍だったことが分かったのだ。
貧乏は貧乏で苦労をするが、お金持ちの家の子どもというのも、それはそれで別口の悩みというものがあるということだろう。ああ、やっぱり何事も、程々が一番ということか。
また、世帯構造別に見ても、両親世帯を基準とすると、ひとり親世帯の子どもが抑うつ・不安を有する割合は1.3倍となっていた。
ネガティブな性格も結局は貧困のせいなのか……
前述のように、僕は貧困世帯、いや、赤貧世帯の出だ。僕は極度の神経質で、ネガティブな性格だ。そのような性格になったのは、やっぱり貧困が根底にある。
だって家の壁が薄いから、話すときの声だって近所に気を遣うし、食べるものも質素だから毎度食卓でため息をつく。貧乏だとゲームも買えないので、学校でも話題に混じることができない。栄養状態が悪いので体育ではろくに活躍できないし、そのせいで周囲に笑われる。
貧乏だから10代後半になってもデートで着ていく服もなく、そもそも服が買えないことで洋服を選ぶセンスも身につかなかった。高校に進学しても修学旅行に行くための積み立てができなかったので、みんながシンガポールに行っている間、ミスドでバイトに精を出していた。
気付けばストレスのせいでガリガリになり、頭も何箇所かの毛が抜け落ちていた。
「なんで俺ばっかり……うう、貧乏は辛い」
そんなことを思いながら大人になった。日本ではますます経済格差が広がっている。僕のような思いをする子どもも、ますます増えていくのだろうか。貧乏は、マジで辛い。
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