スポーツを観るオモシロさは意外性や残酷性とか、次々に起きる悲喜こもごもの一瞬プレーの連続にあるだろう。マレーシアGPではレッドブルが2年半ぶり1-2、ルイス・ハミルトンのメルセデスPU(ICE)が初めてブロー、ニコ・ロズベルグはフェラーリ勢と絡まり3位、彼らのコンストラクターズV3を阻んだ。
コース全域で波乱ゲームが続き、ウイリアムズ対フォース・インディア対マクラーレンが5~9位バトルを展開。さらにはルノーがトロロッソに競り勝ちラスト入賞、濃厚ないいレースだった。
速くなった今年のセパン、ハミルトンは金曜から昨年の6~7秒アップで走り、コースレコードに迫るPPタイムを出しきった。PU時代になってから異次元の超速ゾーンに突入、当然それだけ全開率は高まる。(路面やタイヤ状態などよりもむしろこれが大いに気になった)。スムーズ路面でタイムが上昇、それだけPUはいままでより「つらい仕事をさせられる」わけだ。
結果論ではなく、これほどタイムアップするとその“ストレス”がPUに及ぶのではないかと個人的に想像していた。過去にもタイムが異常上昇したGPで、レース中に突然トラブルが起きた事例がある。ともあれメルセデスは首位ハミルトンに突如起きたトラブル原因を精査、鈴鹿までに原因追及することが急務。ハミルトンだけでなくロズベルグのPUも含めてだ。
F1マレーシアGP採点&短評
☆エステバン・オコン
FP2以外ではウェーレインより先行タイム、彼とのバトルがレースでも続けられた。度重なるピットレーン速度違反ペナルティー(設定ミス)によって16位もマノー4戦目のベストレース。
☆☆ジョリオン・パーマー
やっとスムーズなレースができ初入賞10位。セパン新路面でルノーはようやくメカ・グリップ最適値を見つけられたようだ。現在体制強化中のエンストンに朗報。
☆☆キミ・ライコネン
完璧主義者だから少しでも問題があるとそれにこだわるのがキミ。リア・ウイングにゴム付着、オーバーステア傾向が見てとれ、ロズベルグとの接触でフロアを痛めて終盤はアンダーステアも。また今季4度目の4位。
☆☆セルジオ・ペレス
ひたすら「ポイント重視」、1周目3位に上がっても無駄な抵抗はせず2ストップ作戦遂行。異戦略のニコ・ヒュルケンベルグと8度目ダブル入賞、今季チーム50%になる。
☆☆☆バルテリ・ボッタス
初日からセットアップに苦しみながら9戦ぶり“トップ5”へ。このところ戦略面で難があったがミディアムでスタート、1ストップを成功させた。僅差のランク4位攻防、目が離せないホットポイントだ。
☆☆☆ジェンソン・バトン
キャリア17年、300戦目をアグレッシブに。休養宣言後そんな走りが目立つ。予選Q2ラストアタック8位に20代前半のころの若々しさを感じた。
☆☆☆ルイス・ハミルトン
ICEブローアップ。彼自身レース中にしかも首位独走中に起きたのは初めて。残るPUは2基でもフレッシュ・スペアは一つ、もう一つは3レース使用済み。試練のとき、3冠王者のメンタルが問われる。
☆☆☆☆フェルナンド・アロンソ
運も実力のうち、22位から12位上昇は「匠の技」。1コーナーはアウトから、案の定インサイドは混乱。大きく左に避け、周囲を見ながら2コーナーではインヘ。出口ラインでトラクション重視、ここでも演じた「オープニングラップ・ワンマンショー」。自己ベストラップ6位、最速ロズベルグに1.867秒差を評価したい。
☆☆☆☆マックス・フェルスタッペン
セパンのセクター2にはコーナーが六つ。低速、高速S字、中速複合、ヘアピン、このエリアで予選2位タイム。リカルド、ロズベルグを上回った。レース中盤に競いあう極上の“チームメイト・バトル”、今ほかにあれができるチームは見あたらない。
☆☆☆☆ダニエル・リカルド
精神的にも肉体的にもすべてを出し切ったアスリートのようだった。表彰台では笑顔で“靴飲みシャンパン・プレー”をサービス、こういうことも今のF1シーンに必要なのではないか。フェルスタッペンとのバトルで感じたこと、ピレリ・タイヤ片のマーブルが少なかったから、二人とも思い切り並走できた。大量に散らばっていたらできまい。
☆☆☆☆☆ニコ・ロズベルグ
初日からきっぱりと勝負に臨む姿勢を感じた。予選Q3アタック中、2度ミスがあったが攻める意欲の表れ、2位にも気落ちせず、今までとやや違うポーカーフェイス的な表情。1コーナーで接触、即もうもうたる白煙のスピンターン、その後何度かロックアップしながらもはい上がっていく闘争心が伝わった。最終盤はPUをセーブ、10秒タイム・ペナルティーにも動揺せずまとめた価値ある3位。この15点、最後に大きな意味を持つことになるかも……。