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秦 基博、笑顔で迎えた10周年 プロデューサーを務めた『Augusta Camp 2016』レポート

2016年10月04日 15:03  リアルサウンド

リアルサウンド

『Augusta Camp 2016~produced by秦 基博』(写真=杉田真)

 富士急ハイランド コニファーフォレストにて9月17日、『Augusta Camp 2016~produced by秦 基博』が開催された。『Augusta Camp』は毎年、オフィスオーガスタ所属のアーティストが一堂に会するイベントで、今年は秦 基博のデビュー10周年を祝し、秦がプロデューサーも務める形となった。今回は第1部ではアコースティックで秦の楽曲を出演アーティストとコラボレーション、第2部ではバンド編成で出演アーティストの楽曲を秦とコラボレーション、そして第3部は秦によるワンマンライブ、という3部構成。そして幕間で、2016年オフィスオーガスタの注目アーティストともいうべき、NakamuraEmi、元ちとせ with UQiYOのステージが繰り広げられた。


(関連:『Augusta Camp 2016~produced by秦 基博』写真はこちら


 秦の近年のライブ映像から遡り、デビュー3、4カ月前のオーガスタキャンプ出演時の映像を映し出すと、今日の主役である秦がステージに登場。デビュー曲であり、10年前に同会場で開催された『Augusta Camp』でも披露した「シンクロ」を弾き語りで歌いあげ、イベントが幕を開けた。そのままステージにさかいゆうを呼び込むと、さかいが「自転車という歌詞が入ってる曲の中で1番好き」だという「青い蝶」を歌唱。さかいの淀みない声が、爽やかな歌詞と曲調によくマッチしていた。


 続いて秦が「唯一先輩風を吹かすことができる」と話した、秦の後輩にあたる松室政哉と浜端ヨウヘイが登場。2人と共に、「虹が消えた日」を披露した。次に、上下ジャージ姿で登場したのは竹原ピストル。ブルージーな歌声で、明日への希望を描いた「Dear Mr.Tomorrow」を秦とデュエットした。「絶対チャンピオンになっから!」と言い残し、ステージを降りた竹原に続いて、元ちとせとともに、海を表現した歌詞が印象的な「ディープブルー」を歌唱。そして、スキマスイッチとは、かつて大橋卓弥(Vo.)がその歌詞に言及したというエピソードから、秦が選曲した「僕らをつなぐもの」を伸びやかに歌いあげた。


 そのまま常田真太郎(Key)を残し、COIL・岡本定義と共に、ゆったりとした雰囲気で「休日」をセッションした。続いて杏子がステージに現れると、第1部で1番ビートがある、という「Fast Life」。杏子が「で、どうしたいの?秦 基博」と歌詞を変えて歌うと、「お客さんと盛り上がりたい!」と秦が返すなど、それまでのゆるい雰囲気とは一変し、会場を盛り上げた。さらに、杏子と大橋がコーラスを務め、山崎まさよしと「風景」を披露。最後に残ったのは、同じくデビュー10周年を迎えた長澤知之。長澤は10年前の『Augusta Camp』で、秦とともにジェットコースターに乗った思い出を語ると、バラード曲「アイ」を真っ直ぐに歌いあげた。そして、「夏も終わりなんですが」と秦が前置きしながら、岡本定義が作詞作曲を務めた福耳の「夏はこれからだ!」を全員で歌唱し、第1部は終了した。


 続いてステージに現れたのは、NakamuraEmi。小柄な容姿からは想像できないほどパワフルな歌声で「YAMABIKO」「使命」を披露し、会場を圧倒していく。さらに、メジャーデビューできたことへの感謝の思いを伝え、「めしあがれ」「メジャーデビュー」を歌い上げると、客席の空気をガラリと変えていった。


 「第2部は上げていこうかと思います」と、秦が第2部ではバンドセットで行うことを宣言すると、再び長澤をステージに呼び込んだ。先ほどのバラード曲「アイ」とは一転して、長澤によるアッパーなロックチューン「あんまり素敵じゃない世界」を披露。続けて浜端とは彼のデビュー曲である「結-yui-」、さかいとは連弾も披露しながら、CD音源でコラボした「ピエロチック」を歌い、安定した歌唱力を見せつけた。そして、COIL 岡本とは秦が“ブラックな曲”と評した「ミサイル・カウンシル」、松室とは彼の代表曲「オレンジ」、元とは「千の夜と千の昼」と立て続けに豪華なコラボレーションを披露。


 そして、「この日のために、と新曲を書いてきた人がいます」と、秦が竹原をステージに呼びこむと、竹原によるヒップホップ調の新曲「ちゅちゅちゅI want you」をダンスやラップも交えて初パフォーマンス。他では見ることのできない秦の姿に、会場は一層の盛り上がりを見せた。さらに、秦がサックスの描かれたユニフォームを羽織り、杏子とともにBARBEE BOYSの「女ぎつねon the run」を歌唱。優しくもセクシーな秦のハスキーな歌声が、次々と観客を魅了していく。


 そして、スキマスイッチが登場し、「僕にとって、このイベントの原風景です」と秦が楽曲への思いを語ると、10年前にも同会場でスキマスイッチが歌った「ボクノート」をデュエットした。さらに、コーラスに松室を加え、「ガラナ」を披露。曲の途中では、スキマスイッチのライブ定番曲「Ah Yeah!!」も歌唱し、会場の熱気が一気に高まった。最後のコラボレーションは山崎まさよし。浜端を迎えて、秦がCM出演したことで思い出に残っているという「春も嵐も」を熱唱した。第2部の最後には、再び全員がステージに集合し、「セロリ」を披露。定番の山崎によるラップで大いに盛り上がりを見せ、バンドセットでのコラボレーションは幕を閉じた。


 日が沈みかけ、幻想的な雰囲気の中、元とUQiYOによるスペシャルパフォーマンスがスタート。「ワダツミの木」を新たなアレンジで伸びやかに歌い上げ、夜の気配を感じる中で、最後は新曲「君の名前を呼ぶ」を披露した。


 そして、俳優・松山ケンイチ、イベントで“ハタリズム”を結成したバカリズム&マギー、秦が楽曲提供したV6の井ノ原快彦、ジョイマン高木晋哉、スターダスト☆レビュー、横浜DeNAベイスターズ筒香嘉智、KAN、SPITZといった秦とゆかりのある各界の著名人からの10周年を祝うビデオメッセージが放映され、第3部が開始した。日も沈み、すっかり暗くなっているが、秦は「まだまだいけますかー?」と客席に呼びかけるなど、長時間のステージへの疲れを感じさせない。「グッバイ・アイザック」、「花咲きポプラ」、「SEA」と、爽やかでアップテンポな秦の魅力が詰まった楽曲を、バンド編成で続けて披露していく。「ようやくここまで来れました」と、感慨深げに10年間を振り返り、10周年を迎えて初の新曲「70億のピース」を優しく歌いあげた。


 「遊園地の中なので」と、「パレードパレード」を歌うと、そのまま「キミ、メグル、ボク」を軽やかに歌唱し、風船が飛び出す演出で会場を盛り上げる。さらに、ライブではすっかり定番となった“スミレちゃんダンサーズ”とともに「スミレ」を披露した。そして、「このオーガスタキャンプをやると決まった時から、絶対にやろうと決めていた曲です」と、インディーズ時代からの楽曲「朝が来る前に」を力強く歌い上げ、秦の代表曲の1つとも言える「鱗(うろこ)」で第3部を締めくくった。


 鳴り止まぬ拍手の中、“もう1人の10周年”である長澤とともに、秦がアンコールに応える。長澤がたどたどしくも真っ直ぐな言葉で、10周年を迎えられたことへの感謝を伝えると、デビュー曲「僕らの輝き」を秦とアコースティックでパフォーマンス。全くタイプの異なるシンガーである、秦とのハモリパートを通じて、長澤が2015年ごろからバンド・ALとしての活動を本格化したことで、表現力に深みが増したのを感じさせた。


 そして、スキマスイッチ 常田が秦のコスプレをして登場し、その声をさかいがモノマネであてるといった遊びで会場を沸かせると、秦にとって大きな転機となった楽曲「ひまわりの約束」を全員揃って歌唱。そのまま、「これを歌わなきゃ、終われない!」と秦が呼びかけると、このイベントでは恒例の「星のかけらを探しに行こう Again」を歌い上げ、約6時間に及ぶ公演を完遂。同楽曲では例年、年長者である山崎や杏子が観客を盛り上げているが、今年はその役目を長澤と秦が務める様子も見られるなど、10周年を迎えて成長した姿が見られた。


 ギター1本で弾き語る自身の原点を見せながらも、バンド編成でダンサーを交えたステージも披露し、新たなフェーズへ踏み出していく秦の姿に、10周年を迎えたこれからへの期待を感じずにはいられない。大橋がMCで「ちゃんと秦の色になってるなぁ」と触れていたように、ポップス、ロック、ヒップホップなど、どんなジャンルの楽曲にも馴染める歌声と歌唱力の高さはもちろん、「ひまわりの約束」で見せた“ポップスの作り手”としての魅力を、今後さらに発揮していくことが予想できる。


 他の大型フェスでは目にできないコラボレーションや、同じ事務所であるからこそのMCでの親しげなやりとりを通じて、目当てのアーティストだけでなく、他のアーティストの魅力にも気づくことができるのは『Augusta Camp』ならでは。特に今回の公演は、プロデューサーである秦が、短い時間の中で、1人1人の魅力をきちんと引き出しており、V6への楽曲提供や松本隆との共作も記憶に新しい中、作曲家やアレンジャーとしての活躍も期待させる公演内容となっていた。秦の今後の活動、そして来年からの『Augusta Camp』の公演内容に注目していきたい。(村上夏菜)