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星野源が新曲「恋」で打ち出した“新たな恋愛観” 10月5日発売の注目新譜5選

2016年10月04日 13:11  リアルサウンド

リアルサウンド

星野源『恋』通常盤

 その週のリリース作品の中から、押さえておきたい新譜をご紹介する連載「本日、フラゲ日!」。10月5日リリースからは、 星野源、清水翔太、AAA、KANA-BOON、忘れらんねえよをピックアップ。ライターの森朋之氏が、それぞれの特徴とともに、楽曲の聴きどころを解説します。(編集部)


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■星野源『恋』(SG)


 ブラックミュージックと日本の抒情的なポップスをナチュラルに融合させた傑作アルバム『YELLOW DANCER』(2015年12月)以来となるニューシングル。星野自身が出演するドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)の主題歌、そしてタイトルはずばり「恋」。ヒットの予感がムンムン漂っているわけだが、特筆すべきはその音楽的精度の高さだろう。ソウルミュージック、ファンクの日本人的解釈というコンセプトが完全に血肉化されたリズム・アンサンブル、ストリングスと二胡が絡み合うオリエンタルなサウンドメイク、キャッチーな大衆性を帯びたメロディライン、人は孤独であるという大前提を踏まえながら“夫婦を超えてゆけ”“一人を超えてゆけ”という新たな結婚観・恋愛観を打ち出した歌詞。音楽マニアから一般的なJ-POPユーザーまで幅広いリスナーにアピールし、年齢と性別を超えたラブソングとして成立させる。星野源はこのシングルで、そんなハードルを見事にクリアしてみせた。国民的歌手への第一歩となる作品だと思う、ホントに。


■清水翔太『My Boo』(SG)


 9月に日本武道館(2days)、大阪城ホールを成功させ、現在はアルバム『PROUD』を軸にした全国ツアーの真っ最中。圧倒的なボーカルスキルを持つライブ・パフォーマーとしても高い評価を得ている清水翔太のニューシングル『My Boo』は、<帰ったらハグして/君がいるなら 俺、頑張るから>というあまりにも真っ直ぐな思いを描いたラブソング。現代的なヒップホップ・マナーに則したトラックメイク、繊細かつドラマティックなピアノのリフレイン、率直な感情表現と美しいフロウを共存させたリリックがゆったりと広がり、新鮮さと普遍性を併せ持ったナンバーへと導いている。清水翔太流のヒップホップ・サウンドを志向した『PROUD』の方向性を押し進めたこの楽曲は、彼の新しいスタイルをさらに明確に示すことになりそうだ。「どんなに辛くても側にいたいよ」というベタすぎるフレーズを洗練されたメロディとともにサラリと聴かせてしまう歌の上手さにも注目してほしい。


■AAA『涙のない世界』(SG)


 AAAの52枚目のシングルは、失ってしまった恋人を思い、<もう一度あの日の君に/微笑んでほしい>というメランコリックなフレーズを持つミディアムバラード。作詞は森月キャス(AAA「逢いたい理由」、SMAP「Call Your Number」など)、作曲を日比野裕史(AAA「777~We can sing a song!~」、関ジャニ∞「道標」など)が手がけたJ-POPど真ん中の楽曲を、まるでドラマのキャストのような表現力で見事に演じている。前作「NEW」はネオ・ソウル、トロピカル・ハウスのテイストを感じさせるダンスチューンだったので、そのギャップの大きさに驚かされてしまうが、このふり幅の大きさこそがAAAのおもしろさ。最新鋭の洋楽を取り入れたナンバーから王道のJ-POPを自由に行き来することで彼らは、幅広い層のリスナーの支持を得てきたのだと思う。11月には京セラドーム(2days)、東京ドーム(2days)公演も決定。デビュー11年目の真価を問われるライブで彼らがどんなステージを見せてくれるか、楽しみでしょうがない。


■KANA-BOON『Wake up』(SG)


ダイナミックなロックサウンドを追求したアルバム『Origin』のリリース、約5万人を動員し、キャリア史上最大級の規模となった全国ツアー(『Origin』の音像をライブで体現するため、メンバーはかなり試行錯誤を強いられたという)を経て、ロックバンドとしてのスケールを確実に上げてきたKANA-BOONのシングル曲「Wake up」は、飯田祐馬(Ba)、小泉貴裕(Dr)による骨太のリズムセクションと古賀隼斗(G)華やかなギターフレーズを軸にしたアッパーチューン。“停滞した状態から脱したい”という意志を反映させた谷口鮪(V&G)の歌からも、新しい表現を欲している彼らの現在のモードが強く感じられる。C/Wには谷口が最近、興味を持ち始めたというラップの要素を取り入れた「LOSER」を収録。高速の4つ打ちビートを軸にした楽曲でバンドシーンを席巻したKANA-BOONはアルバム『Origin』とシングル『Wake up』によって、まったく新しいフェーズへと突入しつつあるようだ。


■忘れらんねえよ『俺よ届け』(ミニAL)


 感情剥き出しのライブパフォーマンス、他のバンドへの嫉妬を隠さないぶっちゃけたキャラクターがどうしても目立ってしまう忘れらんねえよだが、じつは1stシングル『CからはじまるABC』(2011年)のときから一貫しているのは優れたメロディセンスを軸にした楽曲自体の良さであり、本作『俺よ届け』(ミニアルバム)のタイトル曲「俺よ届け」で彼らはようやく“曲の魅力をしっかり届けよう”という意思を前面に押し出してきたように思う。特筆すべきは柴田隆浩(V&G)のボーカリゼーションの変化。エモーショナル過多の歌いっぷりを抑え、メロディラインを正確に描き出すことによって、このバンドの本来の曲の良さを際立たせているのだ。その結果、忘れらんねえよのもうひとつの特徴である“こじらせまくった恋愛感情をそのまま描いた歌詞”が以前より増して真っ直ぐに伝わってくるという効果も。「眠れない夜は君の名をググるよ」というキャッチー過ぎるタイトルを持つロックバラードも素晴らしい。(森朋之)