十勝スピードウェイで行われたTGR 86/BRZレース第7戦は、プロフェッショナルシリーズで3勝目を挙げた佐々木雅弘(asset・テクノ・BS 86)が、最終戦を待たずにチャンピオンを決定。そしてクラブマンシリーズでは、菱井將文(CUSCO BS 86)がレース初優勝を飾った。
十勝スピードウェイでは、初めての連戦となった86/BRZレース。そのプロフェッショナルシリーズの予選では、またしてもトップに不運が訪れた。開始早々にコースアウトした車両があり、赤旗が出されたのだが、その前に1分35秒033をマークしてトップに立っていたのは山田英二(CUSCO BS 86)。
再開後に井口卓人(CG ROBOT BRZ BS)が好タイムを記すも、1分35秒125であと一歩及ばず。井口は「ストレートでシフトミスしてしまったので、それがなければ。でも、フロントロウからのスタートなので、連勝も決して不可能じゃないと思います」と意気込む。
ところが、暫定結果が出ると、トップには山田の名がなく……。山田がタイムをマークした時には黄旗が振られており、減速義務違反により、そのタイムが抹消。計測再開後は走行していなかったこともあり、ノータイムの扱いになっていたのだ。
これにより、井口が繰り上がって2戦連続でポールポジションを獲得。そして2番手を前日まで走りに悩み続けていたという佐々木雅弘(asset・テクノ・BS 86)が「開き直って、自分本来の走りに切り替えて」獲得し、3番手にはチャンピオンを争う阪口良平(AREA86倉敷)が続いた。
もし、佐々木の優勝を許せば、最終戦を待たず逃げ切られてチャンピオンを獲得されるだけに、なんとしてもスタートで前に出たいところだ。4番手は近藤翼(神奈川トヨタ☆DTEC86R)が、5番手は織戸学(サミー☆k-one☆MAX86)が、そして6番手は久保凛太郎(CG ROBOT BRZ BS)が獲得した。
第5戦が行われた土曜日に比べれば、やや雲も出て気温も下がってはいたが、引き続き“十勝晴れ”となった決勝レース。スタートを決めたのは佐々木で、1コーナーにインから飛び込み、井口をもかわそうとするが、ここでの逆転は許されず。逆にスタートで出遅れてしまったのは、誰あろう阪口だった。織戸と近藤、久保に先行されて、6番手に後退する。
オープニングラップを終えると、早くも井口は佐々木に対して1秒2のリードを確保。2周目になると、3番手を争う集団から織戸が抜け出すことに。その一方で4番手争いはしばらくの間激しく続いて、3周目には阪口がようやく前に出ることとなった。
やがて、トップ3の井口、佐々木、織戸はそれぞれ単独走行となり、そのまま淡々と周回が重ねられていくかと思われた。ところが、そんな予想とは裏腹に、中盤になると佐々木のペースが井口を上回るようになり、徐々に差が詰まってくる。井口に追いつきテール・トゥ・ノーズ状態になると、合わせて織戸も急接近。8周目には3台が縦一列で並ぶこととなる。
この好機を逃さなかったのが、佐々木だった。9周目の1コーナーで井口のインを刺し、いったんは4コーナーで再逆転を許したものの、7コーナーで再々逆転に成功。「昨日の感じなら、最後まで行けると思ったんですが、コンディションが変わったせいか、リヤが後半になって苦しくなって」と井口。
トップに立った佐々木は、織戸と激しくやりあう井口を尻目に、その後は差を広げていくことともなった。一方、タイトルを争い合っていた阪口は6周目に、青木孝行(ケーエムエスADVAN86R)の先行を許し、5番手に後退して万事休す。
今季3回目のトップチェッカーを受けた佐々木は、これで悲願のタイトルを獲得。「昨日までは本当に苦しんでいたんですが、もう守っても仕方ないと、強気の走りに切り替えたのが良かったんだと思います。本当に嬉しい!」と語る。
「相手がタクティー(井口卓人)なので、ぶつけられることはないと、安心して抜かせてもらいました(笑)。来年まで気持ちよくいられるように、最後の一戦も気を抜かずに戦います」
織戸は3位に入って、今季初の表彰台を獲得するも、「あのトップ争いの時に、少々強引でも抜いちゃえば良かった」と、嬉しさと悔しさが混じったような表情で語っていた。4位は青木が、そして5位は阪口が獲得。6位は最後まで続いた久保とのバトルを制した、山野直也(CABANA P.MU 86)の掌中におさまった。
クラブマンシリーズでは、チャンピオンを決めたばかりの松原怜史(asset・テクノ・BS 86)が欠場。「最終戦はプロシリーズに出場することになりました。その下準備もしなくてはいけないし、リスクも回避するため」というのが、その理由だ。
まさに鬼の居ぬ間となった予選では、橋本洋平(カーウォッチ86BSポテンザED)が長らくトップにつけるも、土壇場で全日本ジムカーナチャンピオンとしても知られる、菱井將文(CUSCO BS 86)が初めてのポールポジションを獲得する。「やった~! もう1コーナーで蹴られてもいい(笑)。ただ、横にいるのは橋本選手なので、昨日の感じならストレートで離されるような気しかしない」と語っていたのだが、決勝レースでは裏腹の展開に。
橋本は好スタートを切って菱井にも迫るが、1コーナーでのトップ浮上は果たせず。それが唯一の逆転のチャンスとなってしまう。じわじわと菱井が差を広げていくなか、手塚祐弥の徹底マークを受けることとなったからだ。
しかし、手塚も「実は昨日のレースで、左リヤの足回りにダメージを負って、右コーナーだけひどいオーバーステアになって」と逆転の決め手は欠いていた。なんとかしのぎ抜いた橋本だったが、その間により菱井は逃げていた。
レースでの初優勝を飾った菱井は「本当に嬉しいです。ジムカーナで勝つより嬉しい(笑)。序盤のうちに離せたのが良かったんでしょう、スタートからかなりプッシュしました。正直言って、レースをなめていました。もっと早く勝てるかと思っていましたから」と本音をポツリ。
2位は橋本で、3位は手塚。クラブマンシリーズ最終戦はこのふたりによるランキング2位争いが最大の焦点になりそうだ。
86/BRZレースの第8戦は10月29~30日、鈴鹿サーキットで開催される。