残り3戦となったFIA世界ラリークロス選手権の第10戦がラトビアの首都リガの中心部からほど近い、ホロコースト記念碑の立つビケルニエキ国際スポーツベースを舞台に開催され、今季からシリーズにフル参戦する“9タイムスWRCチャンピオン”のセバスチャン・ローブが、自身初となる世界ラリークロス選手権ファイナル勝利を挙げた。
10月1日に行われた予選ヒートでは、各車ともに初開催となる60パーセントのターマック、40パーセントグラベルのコースで路面ミューの低さに苦しみ、マシンのコントロールやポジショニングが最大の焦点に。
そんななか、Q2セッションで選手権ライバルでもあるマティアス・エクストロームとのサイド・バイ・サイドでコース外に弾かれ、ポジションを落としていた王者ペター・ソルベルグが、報復行為とばかりにエクストロームのアウディA1に追突。競技委員会から失格の裁定が下されるという波乱の展開となる。
翌日、豪雨となったQ3でもペターのDS3 RXはフロントガラスが曇るというまさかのトラブルでクラッシュ、そしてQ4でも8番手タイムに終わり、セミファイナルの進出を逃すという、3連覇への希望が遠のく状況に追い込まれてしまった。
迎えた決勝ヒートには、選手権リーダーのエクストロームを筆頭に、プジョー208RXのローブと、チームメイトのティミー・ハンセン、フォード・フォーカスRS RXのアンドレアス・バッケルド、フォルクスワーゲン・ポロRXのヨハン・クリストファーソン、そしてロシア人の欧州タイトル経験者、ティミー・ティミジヤノフの6名が進出。
ヘビーウエットのコンディションで始まったファイナル。スタートライン直後に迫る90度の1コーナーで、もっともアウト側に並んだティミジヤノフがバッケルドとのポジション争いに敗れ、マシンの右側面からタイヤバリアに激突。そのまま戦列を離れてしまい、レースは1周目から5台の争いに絞られた。
抜群のスタートを決めたローブが、エクストローム、バッケルドを従えて快走をみせると、1周目にはチームメイトのハンセンがジョーカーラップを消化。2周目にはS字で失速していたバッケルドに仕掛けたクリストファーソンが、低ミューのヘアピンで止まりきれずワイドに。そのままジョーカーからの逆転を狙うも届かず。
レースはそのまま、ローブ、エクストロームが後半5周目、4周目にそれぞれジョーカーを消化し、そのままチェッカー。滑りやすい路面にウエットという難しい条件が重なるなか、スピードを維持しながら、スライドを極力抑えるという往年のままの正確無比なドライビングで、ローブが世界ラリークロス選手権初勝利を挙げた。
「WRCでの78勝に続く、本当に本当に素晴らしい勝利だ。とくに今回のラトビアからチーフメカニックを務めてくれた彼(マーティン)のためにも良かった」とローブ。
「今年の開幕当初は、フル参戦初年度の目標を“優勝”に置いていたけど、それが初年度のドライバーにとってどれほど困難かも理解していた。タイヤもこのコンディションでよく機能していたし、残り2戦もこの結果に近づけるよう頑張りたいね」
これで選手権リーダーのエクストロームは228ポイントとなり、2位のクリストファーソンに27ポイント差。週末を17位のノーポイントで終えたペターは、194ポイントの3位に後退している。