2016年10月02日 09:51 弁護士ドットコム
妹の会社では、社内運動会で女性社員たちが「チアガール」の衣装で踊るらしいが、セクハラではないのかーー。そんな投稿がネット上の掲示板で話題になった。
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投稿者の妹が勤める会社では、社内運動会が毎年開かれる。徒競走や玉入れなどの種目の他に、女性社員がチアガールの衣装で踊るのが、昭和から続く伝統だという。ミニスカートにヘソ出しという露出の多い衣装だ。
あくまで、運動会もチアガールも自由参加とされているが、会社の伝統の催しということで、断りづらい雰囲気もあるという。定時の後に練習を行っているが、残業代は出ないという。
社内運動会への参加や、そのための練習時間について、残業代を請求できるのか。女性社員にチアガールの衣装で躍らせることは、セクハラにあたらないのか。岩城穣弁護士に聞いた。
「社内運動会や慰安旅行などの社内イベントへの参加は、参加が『業務』にあたると評価される場合には、残業代が請求でき、またその過程で事故があった場合には労災として補償が受けられることになります」
岩城弁護士はこのように述べる。「業務」にあたるかどうかは、どう判断するのか。
「主催者(会社か任意団体か)、費用負担(会社の出資の有無と程度)、参加の義務性(不参加者が欠勤扱いとされる、人事考課上不利に評価される)などを総合的に評価して、実質的に会社の指揮命令があったといえるかによります。
今回のケースでは、『自由参加』という建前だが実質的には断れないとのことですが、不参加者が一定割合で存在し、参加しなくても特に不利益扱いはされないのであれば、『業務』とはいえないとされる可能性が高いと考えられます。そのための練習時間は、いっそう業務性は認められにくいと思われます」
ミニスカなどの服装を着用させる点についてはどう考えればいいのか。
「女性の性的部分の露出については、本人の意思が尊重されなければならず、意に反して性的魅力をアピールするような服装やふるまいを事実上強要することは、セクシャルハラスメント(いわゆる環境型セクハラ)に該当します。
この点については、『業務性』の判断よりも広く認定される可能性があります。
たとえば、会社の主催でなく任意団体や有志の主催であっても、職場の上司や同僚が参加している中でセクハラが行われた場合には、事実上強要した上司や同僚、更には会社も使用者として責任が問われる可能性があります。
いずれについても、重要なことは、『私は参加しません』『私はそんな服装は着たくありません』とはっきり言うことです。その場合、一人だけよりも、何人もが一緒に意思表示をすることが効果的です」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
岩城 穣(いわき・ゆたか)弁護士
1988年弁護士登録、大阪弁護士会所属。過労死問題をはじめ、労働・市民事件など幅広く活躍する「護民派弁護士」。
事務所名:いわき総合法律事務所
事務所URL:http://www.iwakilaw.com