シーズン5となる2018/19シーズンのフォーミュラEでのバッテリーサプライヤーについて、FIA世界モータースポーツ評議会(WMSC)はマクラーレンF1やマクラーレン・オートモーティブのグループ企業である『マクラーレン・アプライド・テクノロジーズ社(MAT)』が権利を勝ち取ったと発表した。契約期間は2年間だ。
開催初年度はシャシー、ギヤボックス、モーター(MGU)、インバーターなどの主要コンポーネントをワンメイクとして、昨シーズンからはパワートレインの一部(MGU/インバーター/ギヤボックス)の独自開発が許されたフォーミュラE。
現在も1台につきMGUに供給できる最大エネルギー量は28kWhに制限されており、レース中盤にドライバーがマシンを乗り換える必要がある。つまり、1名のドライバーにつき2台のマシンを必要としていたのだが、これをバッテリー重量や最大セル数の拡充で“完全なシングルカー”レースへ移行させるという計画がある。
シングルカーレースへの移行は18/19年のシーズン5からとされており、MATはマシンの乗り換えが不要となる性能を備えたバッテリーを提供する使命を担うこととなる。
WMSCの決定では「バッテリー蓄電技術の急速かつ、継続的な進化と発展を狙って」、このMATとの2年間の契約締結を決めた、としている。
これまで、フォーミュラEの初年度から製造を担当し、昨年も全車にバッテリーを供給してきた『ウイリアムズ・アドバンスド・テクノロジー社』も、このFIAの入札に参加。さらには、ポルシェやルノー/レッドブル・テクノロジーズ連合なども競合入札に名乗りを上げていたという。
MATはシリーズ創設時のワンメイク・パワートレインの供給に続き、バッテリーの分野でも供給権を獲得したが、シーズン5での最大エネルギー量を現在の28kWhから54kWhまで増大させる必要がある、という点以外はFIAから詳細なバッテリー仕様のアナウンスはされていない。
さらにFIAとフォーミュラEは、何度か計画の修正を実施しつつも、モーター力行の出力を今後シーズンを追うごとに現在の200kWから拡大させていきたい方針を示しており、その性能要求にも対応する必要が出てくるだろう。予想では、シーズン5時点で最大出力を250kW、最大回生エネルギー量も、現在の150kWから250kWに増大させる計画のようだ。
また、シーズン5以降はバッテリーも含めた「フルオリジナル」のマシン開発が許容される可能性も出ているため、ワンメイク・バッテリーとしての競争力確保も視野に入れる必要がある。
MATは今後、供給初年度を前に2017年6月1日までにFIAのクラッシュテストを通過し、車載されるテストバッテリーを同年11月1日までにチームに提供することが義務付けられる。