VivaC team TSUCHIYA レースレポート
2016 SUPER GT
Rd.5 富士スピードウェイ
Rd.6 鈴鹿サーキット
■日時 2016年8月6-7日
■場所 富士スピードウェイ
■チーム VivaC team TSUCHIYA
■ゼッケン 25
■監督 土屋春雄
■車両名 VivaC 86 MC
■ドライバー 土屋武士/松井孝允
■リザルト 予選9位/決勝13位
■日時 2016年8月27-28日
■場所 鈴鹿サーキット
■ドライバー 土屋武士/松井孝允/山下健太
■リザルト 予選5位/決勝22位
第5戦富士ラウンド
シリーズランキングトップから始まる。
第4戦菅生ラウンドを2位という結果で終え、シリーズランキング1位という理想的な形で第5戦富士ラウンドを迎えました。菅生は優勝こそできなかったものの、テストで得た良い手応え通りのパフォーマンスを確認することができ、ここから最終戦までレースを戦ううえでポジティブな感触を得ることができました。
とはいえ、この富士スピードウェイはロングストレートがあることで、我々の非力なマザーシャシーにとっては劣勢な場所です。そしてランキング1位の代償で66キロのハンディウエイトを搭載しているため、更に厳しい戦いが予想されました。
しかしこのことも織り込み済み。この富士では、少しでもポイントを取り、次戦マザーシャシーが得意な鈴鹿で大量ポイントを獲得するというプランに変更はありません。目標のチャンピオンを獲得するためにも”想定外“がないように、しっかりと準備をしてスケジュールを進めていきました。
しかし第5戦富士のフリー走行が開始されると、いきなりマシントラブルが発生。シフトチェンジができたりできなかったり、機械系ではなく電装系のトラブルです。
何度もピットインを繰り返し、考えられる場所を交換したり経路を変えてみたりして、ようやく原因を掴むことができたときには残り時間はわずか10分。セットアップはできずに1回のアウティングでフリー走行を終了。タカミツはサファリの時間に少し走ることはできましたが、予選に向けては何も準備できずに挑むことになりました。
そしてQ1は私、土屋武士が走行。走行不足は否めないものの、セットアップに関しては持ち込みの状況でそれほど悪くなかったので、何も変更せずにスタート。100Rが少しU/Sだったものの、アタックも無難に決まり1‘38“767のタイムでその時点の11番手。そしてこのタイミングで赤旗がでました。まだアタックを終えていないマシンがいて、この赤旗の影響でタイムアップできなかったマシンがあり、運も味方してくれて12番手でQ1を突破することができました。
Q2はタカミツが走行。ほぼ練習なしの中、私と同タイムの1‘38“770で9番手のグリッドを得ることができました。ただ練習なしとはいえ、私とのタイム差は3/1000秒で私の勝ち。どんな状況でもプロで生きていくならタイムを出してこなければなりません。「こいつには敵わない」というようにならないと500のシートに乗り続けることはできないと思います。前戦菅生のタカミツをいつでも出せるようにならないと。もうみんなの期待は私をぶっちぎることなんですから。
ハンディを抱えた中で良いリズムで戦えた決勝
そして迎えた決勝です。実は今回の富士戦からバランスオブパフォーマンス(BOP)によって、マザーシャシー(MC)勢とJAF-GT勢の最大地上高+5mmと、給油リストリクターの径が小さく(給油の際の流速を遅くして給油時間を長くするため)なることが決定。FIA GT3勢との性能の均衡をはかる措置が取られました。
MCは非力の為、燃費がいいマシンなので給油時間が短くできるというメリットを取れます。そして軽量であるのでタイヤの摩耗にもメリットがあり、FIA GT3とはピット時間が大幅に少ないのです。
キャラクターの違いで1周のタイムは近いところにいるのですが、速い部分がまるで違います。簡単に言えば、コーナーが速いMC&JAF GT、ストレート加速がいいFIA GT3という感じです。
面白いデータとして、このマシンで1年半くらいレースをしてきていますが、ここまでコース上で抜いたマシンは私がゼロ。タカミツは5台。抜かれたマシンはタカミツと合わせると述べ60台以上です(2016 RD5富士終わりの時点)。ですので、予選で前からスタートして上位を走るか、ピット時間を短縮して前に出るかという勝負になります。今回、MCの武器の部分に性能調整が入ったことによりさらに速さに磨きをかけることが必要になりました。
我々の作戦は、給油に時間がかかるためにタイヤ無交換ということをスタンダードプランとして、私がスタートドライバーでいきました。スタートはポジションキープでいけたものの、ストレートで1台、また1台という感じで抜かれていき、12周を過ぎるころには18番手までポジションダウン(泣)それでもマシンバランスは良かったので、集団に離されることはなく無交換のタイヤを労わりながら着いていきました。
そうこうしていた19周目にセーフティーカー(SC)が入ることになり、我々にとってはチャンス到来。前とのギャップが縮まることで、ポジションアップが可能になります。
そこでSCが解除になる23周目に合わせてピットインを選択。予定通りタイヤ無交換で給油のみのピットアウト。ここで数台を抜いて……のはずでしたが、ここで今回のBOPがしっかり機能します。2本のタイヤ交換をしたFIA GT3の車両と同じピットストップタイムだったことでポジションアップならず。残念……。
その後の展開はタイヤ無交換の中、タカミツが最後までコンスタントなペースで走ったものの、13位でチェッカーを受けるに留まりました。
今回66キロのハンディウエイトを背負いながらQ1と突破できて、レースでもミスなくプラン通りに戦えたことは良かったと思います。この富士でのレースで戦闘力がなかったのはMCのキャラクターを考えたら仕方がないところで、BOPによってピットでの武器がなくなってしまったことが、入賞のチャンスが潰えた要因になったと思います。
ただ苦手な富士でのパフォーマンスとしては絶望的ではなかったし、次戦の鈴鹿1000kmレースはMCが得意な中高速コーナーがたくさんあり、またピット回数が多い分、戦略を考えれば前にいけるはず。今回で分かった通り、ウエイトを積んだMCはトラック上では抜かれるだけのマシンなので、予選上位が絶対に必要。
シリーズを考えると次戦の鈴鹿が非常に重要なレースになることは間違いなく、さらに速さに磨きをかけなければなりません。ただ、この富士でいいリズムで戦えたことは次戦に向けては良かったと思います。
【松井孝允 RD5 富士コメント】
第5戦の富士ラウンドではウエイトも重くかなり厳しい戦いになると思いサーキットに入りました。フリー走行ではテストメニューがいくつかあったのですが、トラブルにより消化できずにトラブルシューティングで終わることになってしまいました。
その中、サーキットサファリで出番が回ってきて、テストを引き続き行っていきました。そこで予選に向けては武士さんがQ1を行くことになり自分のパートQ2で速く走ることに集中しました。
Q1を無事に通過してくれたので、Q2はいつも通りタイヤの100%を引き出すことだけを考えて走りました。タイムで武士さんに負けたので次の鈴鹿では負けないようにします!
決勝はプラン通りタイヤ無交換で最後まで走り切ることができたのですが、もう少しプッシュしても良かったことが分かりタイヤを使い切るという部分ではまだ足りないと感じました。次の鈴鹿では車、タイヤのすべてを使い切って結果を出していこうと思います。
今回もたくさんの応援有難うございました。次の鈴鹿が今年のチャンピオンシップを争う上で重要な1戦になりますのでしっかりと準備して挑みますので応援よろしくお願いいたします。
チャンピオンシップに向けて
要となる1000km
土屋武士の作戦とは?
そして迎えた大事な大事な鈴鹿1000kmレース。このレースには第3ドライバーに山下健太選手を起用しました。これは長いレースの中で、できるだけ私がエンジニアの時間を多くとって戦略を考えられるようにという意図ですが、我々のチームに「次代の若者を育てる」というテーマがあり、また健太はフォーミュラトヨタ・レーシングスクール時代から見ていても間違いなくプロになれる才能を持っているドライバーだという確信もあったので、プロとしてオファーをして乗ってもらいました。
これで500経験のある私に、これから500に乗るであろう2人の才能溢れる若手というラインナップに。なんだかこれだけでもイケる気がしてきました(笑)1000キロという長丁場で集中を切らさないようにミスなく戦うためには、やはりしっかりとした戦う準備が必要です。とにかくできるだけの準備をしてサーキット入りしました。
フリー走行はタカミツから。ところが走り出すとすぐにエンジンがバラつき始めます。どうやらエンジンの補機類にトラブルが発生し、交換しなくては走れません。
コイル、プラグ、インジェクターを交換するために40分ほどロスしました。仕方がないのでまたもやセットアップはなしで、レースでたくさん走ってもらう健太に残りの時間を乗ってもらい、私は2周、タカミツは最初に乗った5周だけで予選を迎えることになりました。
ここ数戦おきているトラブルは、マシンが2年目に入って色々なところに負担がかかってきている部分が順番に出てきている状況です。もちろんレースの度にトラブルが出そうなところは新品に順次交換をしているのですが、いっぺんにすべてのパーツを交換することはプライベーターにはできません。
特に昨年は振動に悩まされていたので、その後遺症がどこかに残っているのか……。まぁ、やるべきことはやっているし、運よくフリー走行で出てくれているのでラッキーなんですけどね。
ドライバーのコメントが正しければ
マシンの精度は高くなっていく。
では、ドライバーの精度はどう高めていくのか?
そしてまたもやセットアップできずに予選を迎えますが、バランスは特に問題ありません。第4戦菅生以降、テストで煮詰めたベースセットに、サーキット毎の微調整と、気温など気候の影響の微調整を施して持ち込んでいるセットアップの完成度の賜物です。
この部分は私のエンジニアとしてのチャレンジですが、テストで得た根拠が正しければ、必ずマシンは速くなるはずという論理に沿って作りこんでいます。これは言い換えると、ドライバーのコメント(センサー)が正しければ、必ずマシンは速くなるという論理です。
ですので、タカミツはその精度を求められるので大変なはず(笑)でもそれは直接結果につながるので譲れません!そうやってドライバーというものは鍛えられていくんですね。
Q1は私が乗り込みます。MCにとって鈴鹿は得意なので、まずは確実にQ2に進めることを意識してアタック。無難に走り1’59”069で5番手のタイムをマークしてタイヤ温存ために1周のアタックのみでピットに戻りました。
Q2はタカミツ。ここで、フリーで少ししか走行できなかったことが響いてしまいます。タイヤが一番いいところでのアタックラップのセクター2でミス。仕切り直して次の周に再度アタックしますが、まとめたもののタイヤのピークはすでに落ちていました。結果は1‘58“608で5番手。悪くはないタイムですが、ベストのパフォーマンスを引き出すという部分においては足りませんでした。
ここ鈴鹿は高速コーナーが多く、攻めれば攻めるほどタイムゲインがありますが、その分リスクも高い。今回もデグナーでちょっとミスをしているので、フリー走行ができていない影響が大きく出たと思います。タカミツには難易度の高い予選が続いていますが、これも経験。できるだけ高いハードルを設定して、どんどん越えていってもらいたいと思います!
作戦も順調、ドライバーは期待通りの活躍
しかし、運任せのSCのタイミングに恵まれず
決勝日は天候が不安定で、朝から路面はウェット。レース中も雨が絡む予報で、ますます私は乗らないで戦略を考えることが必要な状況になってきました。そしてグリッドにつく頃はまだ路面はウェット。でも雨はしばらく降らなそうな予報だったので、グリッドへはスリックタイヤで向かいました。
スタートドライバーはタカミツ。どうやら少し濡れている路面の中、スリックタイヤでスタートが濃厚になってきました。ドライバーにとっては不安な状況ですが、タカミツはニュルブルクリンク24時間レースを経験している分、こんな状況は慣れっこです。不安はあっても経験値は他のドライバーよりもあるっていうだけで、安心して送り出せます。
その期待通り、スタートを無事にこなし、1台に交わされて6番手に落ちたものの、序盤を順調に走行します。トップからの差は12秒ほどで止まりペースは引けを取りません。
これならプラン通りに進められるなという感触も得られ、まずは用意していたスタンダードなプランでいくことを決定。 後半の4スティントは2回のタイヤ無交換でピットタイムの短縮をする戦略です。
給油スピードが遅くなっているので、燃費がいい部分のメリットはなくなっていますが、タイヤのライフがいい分のメリットを存分に活かす作戦です。その為にも第1と第2のスティントはロングでしっかり走ることが大事ですが、心配事としては他車がピットに入った後にSCが入ってしまうことです。
今回のレースは義務ピット回数が5回と決まっていたので、ピット義務消化回数とSCのタイミングが重要になってきます。まぁ、SCの部分は考えていてもどうしようもない部分なので、どうなっても動揺せずに受け入れる心の準備だけをしておきました。
第2スティントは健太です。初めての仕事ぶりは期待通りでした!ペースは安定して速いし、途中雨が降ってきたのですが、相対的に周りよりも速いタイムを危なげなく刻んで、まったく心配ない感じです。
ますます私が乗る必要がなくなってきました(笑)しっかり34周のロングスティントを走り、無事に初仕事をこなしてくれました。
そして次からはタイヤ無交換を挿みながらの走行です。第3スティントは私が行きました。まずはタイヤを労わりながら、そしてちょうどトップグループの場所にピットアウトできたので、この集団が見えるところをキープしながらペースを作っていきました。
しかし恐れていたことが……。このタイミングでSCが入ってしましました。この時すでに3回のピットを消化していたのが#61BRZ、#0GTR、#31プリウスです。この3台のマシンはピットのロスをグッと縮めることに成功しました。
まぁ、これは完全に運。正直、前半から中盤にSCが入る想定のプランもオプションであったのですが、少々博打的な要素もあったので見送りました。ですので、また仕切り直しです。この3台はターゲットから外して、同じ状況で上位を争う#18MC、#4AMGが直接的な争う相手になりました。
当初のプラン通り、第4スティントはタカミツでタイヤは無交換です。この後、第5ステイント・健太、第6スティント・タカミツと順調に進んで、SC中にピットに入った3台以外では#18MCに次いで実質5位を走行していました。
予期せぬトラブル発生で入賞を逃す
可能性がある限り、チャレンジあるのみ
しかし最終スティントで4番手を争おうかという残り25分ほどのところで、タカミツから「シフトができない!」という無線が入りました。3速から上のギヤに上がらなくなってしまい、走行を続けることができずピットに……。
ミッションの中の何かが壊れた様子でしたので、修復ができないと判断してここで走行を終えることを決断しました(ごく小さなパーツが欠けて、その欠片がひっかかりシフトアップができなくなりました)。
この鈴鹿が今シーズンの一番大事なレースと位置付けて準備をしてきたので、正直この結果はショックです。でもまだシリーズが終わったわけではなくチャンスは残されているので、可能性がある限り諦めずにチャレンジしていこうと、すぐに切り替えました。
今年のルマン24時間のトヨタチームに比べたら……全然まだまだチャンスはあります!次戦のタイ・ブリーラムは昨年ポールを獲ったサーキットなので相性は悪くありません。
ハンディウエイトを考えると厳しい戦いが予想されますが、運を引き寄せられるようにしっかりと準備していきたいと思います。次戦も応援のほど、よろしくお願いいたします!!
【松井孝允 RD6 鈴鹿コメント】
鈴鹿へ向けて準備はしっかりと行って、チャンピオンシップを争う意味でも今回の鈴鹿が大切だと思い気合の入る1戦でした。フリー走行では前回のテストからの延長線上で走り始めることができたので、すぐにいい感触で走ることができました。しかしトラブルが出てしまい思うように走れず少し不安が残ったフリー走行でした。
予選では、Q1は武士さんが走行し危なげなく通過してくれたので、Q2ではポールは難しいにしても2列目までには行きたいと思っていました。しかしアタックラップでは攻めすぎてコースオフしてしまい再度仕切り直しでアタックしましたが満足のいくアタックができませんでした。
通常ならスプリントでのレースだと取り返しがつかない予選順位ですが、1000㎞と長いので戦略面でも武士さんが考えてくれていたので決勝に向けては何も心配はしていませんでした。
そして決勝のグリッドへ向かう際、かなり路面が濡れていたのでウェットかスリックか悩みましたが、スリックでいったことによってのマージンはかなりあり、そのおかげでスタートではもっと順位を落とすかもしれないと思っていましたが最小限のダメージで抑えることができました。
ピットインの関係やセーフティーカーも不運に働いてしまいアンラッキーな部分がありましたが、終始上位を走れていたので、結果としては残念な感じにはなってしまいましたが次戦のタイは相性の良いサーキットなので表彰台を目指します。
今回も、応援してくださった皆様ありがとうございました。次戦は遠い中での開催ですが応援よろしくお願いいたします。
【山下健太 RD6 鈴鹿コメント】
今回のレースは何よりもチームに迷惑をかけないように…と考えていました。合同テストの際にドライブする機会を多く頂いたので、既に車には慣れていましたが、本番となると何が起こるか分からないので少し緊張もしながらの2スティントでした。個人的には500との絡みでロスをしたり、300の周回遅れに引っかかったり、もう少し「こうしておけば良かったな」という所がありますが、なんとか最低限のことは出来たかと思っております。
結果は残念でしたが、このチーム、レースから学んだこと、今後のレースに活かしていきたいと考えています。残り2レース、チームがチャンピオンを取れるようにテレビの前で応援しています。