現在のF1マシンに対して最も批判的なドライバーのひとり、ルイス・ハミルトンが、来年の新規定車両に「良い意味で驚かされる」ことになってほしいと希望を語った。
空力パッケージの変更、ワイドな前後タイヤなどを含めたテクニカルレギュレーションの大幅な見直しにより、2017年のF1カーは今季のクルマよりずっと速いものになる。
トロロッソの風洞実験用モデルを見たカルロス・サインツJr.は、これまでとは違う新たなルックスをまとった来年のF1マシンは、「別のカテゴリーのクルマ」のように見えるだろうと語っている。そして、ハミルトンも同様にメルセデスの風洞モデルを見る機会を得た後、レギュレーション変更が本当にF1のためになるかどうか疑わしいという、これまでの彼の見解が的外れであればいいと考え直したようだ。
「風洞用のモデルを見た印象から言えば、新しいクルマは体力を要求されるものになりそうだ。今年のクルマを発展させて、1周あたり3秒速く走らせるわけだからね。僕が望んでいるのは、特にそれでレースのあり方が大きく変わって、良い意味で驚かされることだ」
これまでハミルトンは、現行のマシンでは常にクルマとの「相談」を強いられ、オーバーテイクや本気でプッシュする機会も制限されているという事実を嘆いていた。オーストラリアで、マックス・フェルスタッペンをなかなか抜けずに苦しんだことに関して、ハミルトンはこう語っている。
「どうしても彼のトロロッソを抜けなかったわけじゃない。たとえばの話、いまのF1では100ドルの手持ち資金を、40周にわたってうまく使うことを考えなければならない。目の前のクルマを抜くために90ドルを使ったら、もうそのレースを走りきれなくなってしまうんだ」
「だけど、ファンにはそんなことは関係ない。彼らは僕が最後まで全力でレースをするのを見たいんだ。ファンは僕があらゆる手を尽くして、最高のオーバーテイクを決めることを期待している」
「ところが、残念なことに、いまのF1はそういう風にはできていないんだ。たった1台を抜こうとしただけで、使えるエネルギーを全部使い切ってしまうなんて、あまりエキサイティングじゃないよね」
彼のマクラーレン時代の元チームメイト、フェルナンド・アロンソも現在のF1に対しては批判的で、ドライブしても以前のように楽しくないと発言したことがある。当時、これについて質問されたハミルトンは、次のように述べた。
「昔の方が、限界を極めることを目指した本当のスプリントレースに近かった。最近のF1は、もうそういうレースではなくなっている。タイヤ、バッテリーのパワー、ターボ、とにかくあらゆるものを労り、温存しながら走らなければならない。ファンがチャンネルを合わせて見たいと思うのは、そんなものではないだろう」
また、来季はマクラーレンのリザーブを務めることが決まっているジェンソン・バトンも、新規定は正しい方向への一歩であると考えている。
「(レギュレーション変更には)いつもプラス面とマイナス面が伴うものだが、来年のハイダウンフォースのクルマとワイドなタイヤは、現状よりもずっとバランスがいいと思う」
「来年のクルマは、ドライブするのにもっと体力が要るようになるだろう。それは間違いなく良いことだ。いまのF1は、身体的な能力が要求されるスポーツではなくなっている。トレーニングなんて必要ないと思うくらいだ」