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AimerとワンオクTakaの出会いが“必然”である理由ーーコラボアルバム『daydream』を紐解く

2016年09月29日 13:01  リアルサウンド

リアルサウンド

Aimer『daydream』

 Aimerが9月21日、ニューアルバム『daydream』をリリースした。


(関連:『Mステ』初登場、Aimerの歌声はより大きなフィールドへ RADWIMPS野田プロデュース曲「蝶々結び」への期待


 同作には、Taka(ONE OK ROCK)、野田洋次郎(RADWIMPS)、TK(凛として時雨)、内澤崇仁(androp)、スキマスイッチ、澤野弘之など、日本のロック/ポップシーンを代表するアーティストが楽曲提供およびプロデュースとして参加。「ninelie」「insane dream」「us」「蝶々結び」の4曲はすでにシングル曲としてリリースされているが、さらに新曲が加わり、全13曲収録のコラボレーション・アルバムとなっている。


 『daydream』=“白日夢”と名付けられた同アルバム。Aimerとそれぞれの参加アーティストが、互いにリスペクトを感じながらも刺激を与え合うことで、どんなコラボレーションが生まれたのか。音楽ジャーナリスト・柴那典氏に話を訊いた。


「『daydream』を聴いてまず感じたのは、これだけ多くのミュージシャンが曲を提供していながら、あくまでもAimerのアルバムとしての軸が通っていること。それは彼女の声の個性の強さゆえでしょう。作家陣は、“Aimerに寄せる”ということはしておらず、曲調はバラエティ豊かですが、彼女の歌の特性によって、統一感ある1枚のアルバムになっているんです」


 そのAimerの歌の特性とは、“他の人と溶け合わない”声質にあると、柴氏は続ける。


「今のJPOP全般の傾向でもあると思うんですが、チャートを見ていても、シーン全体を見渡しても、たくさんの人がいっぺんに歌うーーつまり、ユニゾンで歌う形態の曲が多くの割合を占めています。特に女性でいえば、アイドルや女性グループものがとても多い。しかし、Aimerの声は、他の人と溶け合わない、圧倒的な“個”であると感じます。息遣いや間の取り方も含めて、声自体に、空気を変えてしまう力があり、歌い始めのすっと息を吸う一瞬だけで引き込む力がある。ただ歌が上手い、音程がとれている、いい声というだけじゃない、歌い手としての才能を持っていると思います」


 そして今作の中で特に注目したい作家が、全5曲の楽曲提供またはプロデュースを手がけているTakaだ。ONE OK ROCKは、2015年にアメリカのプロデューサーと共に現地でレコーディングしたアルバム『35xxxv』をリリースし、その後も北米、ヨーロッパ、アジアでツアーを敢行。昨年から今年にかけて、世界を舞台に活動を続けてきた。ユニバーサルな音楽を志向するTakaの挑戦は、今回書き下ろした楽曲にも表れているという。


「この5曲と、TakaがONE OK ROCKでやろうとしていることは地続きになっていると思います。というのも、Takaは、今のアメリカのラウド・ロックのシーンにそのまま通用する、つまり基準が日本ではなく、世界にある楽曲を作っています。ONE OK ROCKは基本的にはTakaが歌うバンドなので、彼のボーカリストとしての力強さ、ストイックさを活かす曲になる。一方でAimerは、ある種の悲劇性や繊細さを歌で表現できるシンガーです。そういったAimerの表現力と、ラウド・ロックやエモが組み合わさった音楽は、たとえば、パラモアのように、ここ十数年のアメリカのひとつのメインストリームとなっています。今回、Takaはその系譜に位置付けられる音楽を作ろうとしたのではないでしょうか」


 今回のコラボレーションは、Aimer、そしてTaka双方にとって、今後さらに活動のフィールドを広げるきっかけになるだろうと、柴氏は語る。


「『daydream』を制作したことで、間違いなくAimerの表現力は磨かれたと思います。もともと、素材として素晴らしい歌声を持っていましたが、今回の作家性の強いアーティストたちのプロデュースによって、それをどう表現するか、どう使うか、その可能性が多様になった。また、Takaに関しては、今回が初のプロデュースワークとなり、またAimerと野田洋次郎を引き合わせたのも彼だそうです。ONE OK ROCKはこれまで国内のアーティストと共に楽曲を制作することはほとんどありませんでしたが、このように他のアーティストと関わったことで、Takaの今後のプロデュースワークの道も、大きく広がったと思います」


 Aimerのシンガーとしての新たな魅力が引き出され、また、各アーティストの作家性も色濃く表れることで、互いを新境地へと導いてみせた『daydream』。今回のコラボレーションを経て、これまでのファン層に加え、多くのロックファンが彼女の歌に魅了されただろう。今後もジャンルの枠を越えて、多くの人の心を震わすシンガーとして、その歌声を響かせてほしい。(文=若田悠希)