トップへ

関口雄飛 スーパーフォーミュラ第6戦SUGO レースレポート

2016年09月29日 12:51  AUTOSPORT web

AUTOSPORT web

スーパーフォーミュラ第6戦SUGO 関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)
関口雄飛プレスリリース
2016年9月27日

驚速、関口雄飛!スーパーフォーミュラ史上に残る興奮と感動。
絶望的な状況を諦めず、異次元の走りで今季2勝目を奪取!!

 今年、念願の国内最高峰レース、全日本スーパーフォーミュラ選手権に参戦が決定した関口雄飛は,伊藤忠エネクス株式会社様からメインスポンサードを受ける名門、「ITOCHU ENEX TEAM IMPUL」より、ゼッケン20番をまとってチャレンジしております。

 全日本スーパーフォーミュラ第6戦は、9月24~25日、宮城県・仙台市のスポーツランド菅生にて開催されました。

 チームメイトや、チーム首脳陣より1日早く仙台に入った関口雄飛は、現地の天気予報を何度も何度もチェックしながら、降雨確率が次第に下がっているのを気にしていました。

 スポーツランドランド菅生をスーパーフォーミュラで走ったことがない関口雄飛にとって、金曜日が雨、そして土曜日のフリー走行がセミ・ウェットで、予選がドライ路面という展開は最悪であり、なんとか金曜日に雨が降らないよう、祈るほかはなかったのです。

 その関口の強い願いが叶ったか、雨雲は低く垂れこめていましたが、なんとか金曜日午後1時40分から60分間のフリー走行はドライ路面での走行となりました。コースインした関口雄飛は、ゆっくりと各コーナーを確認するかのようにインラップを走り、いつものように着実に確認作業を続けていきます。

 5周目にアタックモードに入り、1分07秒284のトップタイムをマークすると、それをターゲットに各車が次々とタイムを上げてきます。しかし、周囲の喧騒をよそに、自分とエンジニアだけの世界に入っていく関口雄飛は、9周目に再びトップタイムを更新。チームメイトを含めたライバルたちと1分07秒台で凌ぎを削る状況になりました。



 残り時間32分頃になると、関口雄飛の本格的なアタックが開始され、一気に1分06秒台に突入し、連続して06秒台をマーク。ライバルたちの中で、チームメイトを含めた3人は06秒台に突入してきますが、関口雄飛はそれを突き放すかのように、1分06秒430を叩き出しました。

 その直後にセッション2度目の赤旗が出され、走行時間5分を残してフリー走行は終了。関口雄飛が2番手に0秒466の大差でトップタイムをマークしたまま、スーパーフォーミュラ初日フリー走行を終えました。



 金曜日の夜に雨が降り、土曜日の朝のフリー走行は一部、路面が濡れていた為、ウェット宣言が出されました。気温22℃、路面温度24℃という状況の中、完全に路面が乾くまで約20分はかかりそうでしたので、関口雄飛はウェットタイヤで周回を重ねるのではなく、エンジニアと相談してあえて4セットの新品タイヤをすべて皮むきし、予選、決勝への準備を整えました。

 フリー走行でトップタイムをマークしたのは、チームメイトのJ-P・デ・オリベイラ選手。昨夜遅くまで関口雄飛の走行データを研究し、関口が優れていた高速コーナーの部分を自分の走りの改善に取り入れたのは、さすが最強のベテランです。関口雄飛は6番手で朝のフリー走行を終えました。午後の予選までに、関口雄飛は逆に朝のオリベイラ選手の速さを分析し、予選での走りをイメージました。


 午後1時、まずは予選Q1です。1セット目でややアグレッシブに攻めすぎた関口雄飛は、冷静にコクピッットの中でイメージを高め、2度目のアタックで見事1分05秒586のトップタイムをマーク。参加19台中、首位で予選Q1を通過しました。

続くQ2では、早めのアタックで1分05秒617をマークし、無理せず2番手通過。最後のQ3に焦点を絞ります。

 そして迎えたQ3では、チームメイトのオリベイラ選手が早めのアタックに出て、各車がそれに続きます。セッション開始からじっくりとタイヤを温めていた関口雄飛は、ラスト32秒でアタック開始、コントロールタワーを通過すると、完璧ともいえる走りを見せて、1分05秒398でトップに躍り出ました。

 チェッカーフラッグが振られる中、誰も関口雄飛を上回るタイムをマークするものはなく、ルーキー関口雄飛が今季2度目の、価値あるポールポジションを獲得しました。



 そして迎えた決勝当日。スーパーフォーミュラのレースの中で、間違いなく歴史に残る素晴らしいレースが展開されました。主役はたったひとり、関口雄飛です。

 関口雄飛は日本のモータースポーツ界そのものを震撼させたといっても過言ではないでしょう。スポーツランド菅生に詰めかけた観衆は、その圧倒的な速さと、諦めない心、そして夢を実現しようとする強さに感動し、チェッカーフラッグが振り降ろされた時には、場内全体から惜しみない拍手が送られました。



 このレースはスタートが勝負。そう言い聞かせて自分を奮い立たせ、何度も練習を繰り返した関口雄飛は、スタートを巧みに決めてトップに立つと、すぐに大量リードを築き始めました。まさにぶっちぎり、その言葉以外には適切な表現が見つけられないほど、1周ごとに2番手を引き離しにかかりました。

 しかしレース中盤、スピンして停止したマシンを排除するためにセーフティーカーが突然、関口雄飛のマシンの行く手を阻みます。14秒近くあったリードが一瞬にして消えたばかりか、逆にセーフティーカーが入ったタイミングが最悪で、関口雄飛だけが規定のピットストップをこなせていない状況でした。騒然とするピット。トップに位置するものの、実質的には最後尾です。観衆の誰もが今回の関口雄飛の敗北を意識しました。

 関口雄飛は無線でピットに「このタイミングって、もしかして最悪じゃないですか?」と話しかけると、ピットからは「そう、最悪だよ」とかえってきました。一瞬、ヘルメットの中で悔しさと怒りの混ざった感情が沸き起こり、関口雄飛の頭の中で、パチンと何かのスイッチが入りました。

「諦めるな、まだ頑張ればいける」という無線がピットから入り、そこからさらに鬼神のようなプッシュが始まります。

 セーフティーカー解除と同時に、全開に次ぐ全開。毎周1秒以上、後続車より速く駆け抜けました。4輪が滑ろうと、マシンが暴れようと、決してアクセルを緩めることなくコントロールし、ファステストラップを連発しながらサーキットを突き進む関口雄飛。もはや勝機はないと考えるのではなく、攻めて、攻めて、攻めぬいてこそ不可能と思われることも実現すると信じて、チームと一丸となって戦いました。

 そして計算上、31秒以上のリードがあればトップのまま復帰できるかもしれない状況の中、54周目には34秒811までリードを広げ、不可能を可能にしてしまった関口雄飛とITOCHU ENEX TEAM IMPULのスタッフたちは、68周レースの55周目にピットインを敢行。計算どおりの8秒ピットストップで、そのミッションをやり遂げたのです。



 トップでレースに復帰した関口雄飛は、さらにライバルたちを突き放し、もはや誰もが言葉を失う速さを見せつけながらチェッカーを受けました。今季2勝目、再びポイントリーダーに返り咲いたのです。 拍手喝采、感動、興奮。まさにこれが星野イズムの真骨頂といったレースでした。優勝、関口雄飛。ポイントリーダーとして、初のルーキーチャンピオンがかかった最終戦に臨みます。



■関口雄飛のコメント
 「金曜日の走りだしからマシンはいい感触で、初日トップタイムをマークできました。でも、そのデータを勉強したオリベイラ選手が土曜日の朝にはトップタイムをマークしてきたので、さすがだなと思いました。

 逆に今度は僕が彼のデータから学び、予選ではポールポジションを獲得しました。僕たちのチームはすべてのデータをふたりのエンジニアが共有し、ドライバーはお互いのデータロガーを確認できるので、みんなで切磋琢磨して、よりよいマシン作りをし、目標は勝利だけです。勝つことしか考えていません。

 このスポーツランド菅生は、ツインリンクもてぎ同様、スタートと1周目でレースの8割から9割が決まるサーキットだと思います。フロントロウの中嶋一貴選手がペナルティで3番手になったにせよ、彼はいつもスタートが上手いので、たとえ中嶋選手が好スタートを切って横に並んでも、自分は普通のスタートが切れれば、横に並んで1コーナーに入り、アウト側から被せて抜くっていうレースシミュレーションを考えていました。



 スタートがうまくいったあとは、できるだけリードを広げておこうと思って攻めていたのですが、信じられないタイミングでセーフティーカーが出て、最悪でした。あのタイミングはあり得ないと思いましたが、そんなことを言っても仕方がないので、1ポイントでも多く獲得しようと思って頑張りました。

 チームからは無線で「頑張ればいいとこいけるよ、プッシュして、プッシュして」と5周おきくらいに飛んできましたが、すでに死ぬほどプッシュしていましたし、これでもかってほど限界ギリギリで、全開でした。

 みんなより1周1秒から1.5秒速く走れていたので、もしかしたらと思ったのはピットインの5周前くらいに無線で「もっとプッシュして。トップでいけるかも」と言われた時です。それまでは無我夢中で、自分のポジションなんか考えられない状況した。そしてピットも完璧な作業をしてくれて、本当に勝てました。嬉しいです。自分、今日は速かったです。

 チームも僕の走りに耐えるマシンを、速いマシンを作ってくれました。みんなで勝ち得た、本当に嬉しい2勝目です。頑張り抜いた結果ですから、星野監督も本当に喜んでくれましたし、最終戦もポイントのことなど考えず、勝つことだけを考えて、ガンガンいきます。応援してくれた皆さん、本当にありがとうございました」


■レースのダイジェスト映像はJRPのホームページ、下記リンクにてご覧いただけます。
http://superformula.net/sf/enjoy/video.shtml