昨年12月から50人以上を雇用する企業に年1回義務付けられた「ストレスチェック」。だが、大半の企業でまだ実施されていないようだ。
メンタルヘルスケア対策事業を手掛けるアドバンテッジリスクマネジメントが7月に600社を調査。千人以上の企業は約半数(49.5%)が既にストレスチェックを実施したのに対し、200人未満の企業で実施していたのはおよそ2割(20.6%)と企業規模によって差が開く結果となった。実施には費用や時間が必要で、そこまで労力を割けない中小企業が出遅れているのだ。(文:okei)
最初からあきらめか?「意味がない」という声も
ストレスチェックは自分で項目をチェクしていき、数値が悪ければ産業医の診断が必要とされる。2ちゃんねるなどのネットでは、施行当初から「無難に答えるから意味がない」と効果を疑問視する声があがっていた。制度開始から半年以上が経ち、実際にストレスチェックを行なった人たちの書き込みを見ていると、様々な実態が垣間見えた。こんな書き込みがある。
「ほぼ良好。でも、これ何が良くて何が悪いのか全然書いて書いてないし、第三者でなく『自分で記入』してるだけだから嘘の記入も出来るわけで…w」
「病気になるまでストレスを溜め込むような人間は、こういう質問には正直に答えないよ。回りに迷惑を掛けないように穏便な回答しかしない」
結果は本人の了承なしに企業側に伝えてはならないし、企業はこれを理由に従業員に不利益な人事を行ってはならないことになっている。しかし「周りに知られるリスクがあるよな」「すごい悲観的に書いておいたけど逆に目つけられのも嫌だな」と心配する人が多い。従業員としては、社内で実施する事を会社に秘密にするのは難しいと考えるのが普通だろう。さらに、企業側の認識不足もあるようだ。
「チェックの結果が要診断の場合は管理者に連絡します、みたいなこと書いてあってワロタわ。おまえがストレスの原因なんだが」
「高ストレスで相談したい場合は産業医に自分で連絡しろ。連絡した場合は上司に報告行きますって。上司がストレスの原因だったら、どうすんだっての。しかも上場企業でだよ…。人事がアホすぎる」
産業医に相談したら「昔は100時間以上残業なんて普通だったからねー」
正直に答えたら要面談になってしまい、無視しても催促のメールがきたという人もいた。しかし完全に会社に知られないようにしてしまえば改善もされないわけで、悩ましいところではある。実際、改善につながらず不幸な結果になった人もいた。
「結果は『重度の鬱状態』。 でも人事課からもアプローチなかったし、ほっといたら三ヶ月後見事に適応障害になって休職。 意外と当たるね」
かといって、産業医面談も医師の力量によっては残念な結果になるようだ。
「こんなの無駄。産業医と面談したことあるけど、昔は100時間以上残業なんて普通だったからねーって言われて返す言葉も出なかったわ」
また、チェック内容から、長時間労働の対策しか考えていないと分析する人もいて、「ストレスの原因って、対人関係が一番大きいと思うんだけどね」と指摘していた。
ほかにも「面倒くさくてやってない」「ストレスチェックがストレス!」と訴える声も多かった。ストレスチェック担当者による「規約作ったり色々面倒でストレス溜まって要面談になったわ」という証言もあった。
精神障害等による労災認定件数は、2005年度は127件だったのが2015年度には472件に増加している。せっかく労力を割いてストレスチェック制度ができたのだから、無駄とばかり言うのは残念だ。中小企業の2割という数字は企業側のやる気の低さを感じてしまう。なんとか本気になってもらいたい。(ライター:okei)
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