英AUTOSPORTによると、ジョナサン・パーマーが経営するモータースポーツ・ビジョン(MSV)社が、シルバーストン・サーキットの買収に向けて正式なオファーを行ったようだ。
現在MSVは、イギリス国内でブランズハッチ、オウルトンパーク、キャドウェルパーク、スネッタートン、ベッドフォード・オートドロームの5つのサーキットを所有し、運営している。
イギリスレーシングドライバーズクラブ(BRDC)のジョン・グラント会長は、ジャガー・ランドローバー(JLR)への売却交渉が暗礁に乗り上げた後、8月に入ってからパーマーと接触したようだ。JLRの独占的交渉期間(別の候補者からオファーを受け、交渉を行うことを禁じた期間)は、7月に期限切れとなっていた。
今年4月には、スポーツカーメーカーのジネッタのオーナー、ローレンス・トムリンソンが、JLRへの売却に関するBRDCメンバーの投票が行われる直前に、また別のオファーを行った。その時点では、まだJLRとの独占的交渉期間内だったため、BRDCがトムリンソンと交渉を行うことはできなかったが、トムリンソンのオファーはJLRの出した条件よりもずっとシルバーストン側に有利だったと言われ、投票でJLRへの売却を支持したメンバーは全体の54%にすぎなかった。
しかし、消息筋によると、BRDCとしてはトムリンソンへの売却にはあまり積極的ではないという。
そうした経緯もあって、サーキット経営については十分な経験がある元F1ドライバー、パーマーの正式なオファーに対し、BRDCは前向きに話し合いを始めたものと見られている。パーマーは、息子で現役F1ドライバーのジョリオン、その弟のウィルと共にBRDCの会員でもあるが、いわゆる利益相反はないようだ。
英AUTOSPORTの取材に対し、パーマーは入札を行ったかどうかについて、肯定も否定もしなかった。
「ずっと前から、イギリスGPの開催を含めたシルバーストンの運営には、MSVのサーキット経営に関する知識と組織の安定性が役立つかもしれないと考えていた。したがって、私たちが(買収に)乗り気であることは間違いない」と、パーマーは述べた。
「だが、私たちが参画するのは、そうするのが妥当と思われる場合、つまり商業的に成り立つ場合だけだ。MSVの事業とサーキット運営に関する経験、それも巧みに運営しながら、顧客に高いクオリティを提供していく能力は、多くの人に知られている。公平を期して言えば、シルバーストンは今年のグランプリをとても上手に運営した。多くの努力が払われ、細部まで注意が行き届いた、すばらしいイベントだった」
「ただ、解決すべき問題、つまり現時点で大きな懸念材料となっている部分は、今後そうした高い水準を維持し、さらに改善しながら、現在と同様の採算性を保つにはどうすればよいかだ。MSVであれば、その役目を担うのに適しているとは思う」
BRDCのメンバーは、シルバーストンの売却計画の進展について、今週水曜日に行われる年次総会で説明を受けることになる。
今月初めにシルバーストンは、昨年のグランプリを10年ぶりの黒字とすることに貢献したマネージングディレクター、パトリック・アレンの辞職を発表し、新たに常任マネージメントチームを設けることを明らかにしている。