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BABYMETALが飛び越えた数々の“枠” アイドルとロックの関係性を改めて考える

2016年09月25日 16:31  リアルサウンド

リアルサウンド

BABYMETAL『BABYMETAL -来日記念限定盤-』

■レジーのチャート一刀両断!


【参考:2016年9月12日~2016年9月18日週間CDアルバムランキング(2016年9月26日付・ORICON STYLE)】(http://www.oricon.co.jp/rank/ja/w/2016-09-26/)


 Flower、ナオト・インティライミ、GReeeeNが上位に初登場する中で、映画の大ヒットという追い風に乗ってRADWIMPSが相変わらず好位をキープ。そんな今週のチャートで気になったのが、9月19日・20日に行われた東京ドーム公演に合わせて6位に『BABYMETAL』、7位に『METAL RESISTANCE』の来日記念限定盤をランクインさせたBABYMETAL(オリジナル盤のリリースはそれぞれ2014年2月と2016年4月)。日本のアーティストの作品に「来日記念」という冠をつけてしまうのもすごいが、確かに春先の『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)出演時には外タレが立ち寄ってくれたかのようなオーラがあったし、あっという間にいろいろな枠を飛び越える存在になってしまった。


(関連:BABYMETALの世界的“熱狂”はどこまで広がる? 新作『METAL RESISTANCE』までの歩みから読む


 彼女たちが飛び越えた「枠」の一つに、「国内のアイドルシーン」がある。BABYMETALの出自はさくら学院というグループアイドルにあるが、最近ではそれに関する言及もすっかり減った。また、2013年にROCK IN JAPAN FESTIVALがアイドル出演に大きく舵を切った際、複数のアイドルグループが立て続けに出演するコーナーにおけるアクトの一つとして出演していた彼女たちも、今年はついに同フェスのGRASS STAGEに進出。「アイドルはロックフェスといかに付き合うか、もしくはロックフェスはアイドルといかに付き合うか」というような一時的に旬になった話題とは全く関係のないところで「ロックフェスに自然に受け入れられるアクト」となった。


 「アイドルとロックフェス」というテーマは「需要のある人は呼ばれる、そうでない人は呼ばれない」という至極当たり前の結論に落ち着いた雰囲気があるが、音楽面における「アイドルと(広義の)ロック」というテーマは実は今でも検討する価値のあるものである。BABYMETALの爆発を経てメタル的な要素を採用するアイドルグループは増えた印象があるし、またアイドルシーン全体において「盛り上がること」の比重は相変わらず高く、そういったニーズに応える音楽ジャンルとして結局「ロック調」の楽曲が採用されていることが多い。


 ロック色の強い音楽がいまだ支配的なアイドルシーンだが、個人的にはその手の楽曲でわくわくすることが思いのほか少ない。せっかくたくさんの素晴らしいロックミュージシャンが日本にはいるのだから、どうせ「盛り上がり」を基調にした楽曲を作るのであればそういった人たちの知見がふんだんに投入された曲がもっと出てこないものか・・・そんな問題意識に刺さったのが、今週のチャートで初登場5位を獲得した04 Limited Sazabysの『eureka』。メロディックパンクとフェスにはまるロックの両方にポジションをとりながら人気を拡大し続ける彼らの真骨頂である甘いメロディと爽快感100%のバンドサウンドは、今のアイドルシーンのボリュームゾーンが求めているものとぴったりはまるのではないか? なんてことを思ったのは、2曲目「Feel」のサビのメロディにおけるアウフタクトの使い方や一つの単語の中で音程が跳躍する感じが非常にアイドルソングっぽい趣を醸し出していたからである(ボーカルを女の子の集団のユニゾン歌唱に脳内で置き換えながら聴いてみてほしい)。


 また、イントロや大サビの作り方に関しても振付の「キメ」がばしっとはまりそうな構成になっているのが興味深い。こんな感じのアイドルソングが出てきたら、「最近のアイドルの歌は盛り上げることばっかり気にしてるな」なんて斜に構えずに、自分も盛り上がりの輪に飛び込みたくなってしまう。楽曲提供者に名のあるミュージシャンを起用するのが当たり前になりつつあるアイドルシーンだが、まだまだそちらの世界に足を踏み入れてない作家は多数存在する。メロディックパンク寄りの人脈からのアイドルへの楽曲提供はHAWAIIAN6の安野勇太などの前例もあるが、シーンの活性化のためにフォーリミもぜひ続いてもらいたいところである。ちなみに、この『eureka』は直球のメロディックパンクで始まって「Letter」「eureka」の美しいメロディで幕を閉じるかなり素晴らしいアルバムなので、今後のチャートアクションを楽しみにしたい。(レジー)