SF第6戦SUGOの予選Q1、最後のアタック向かうピットローで接触してしまった小林可夢偉と山本尚貴。 スーパーフォーミュラ第5戦SUGO。予選Q1の残り7分を切って、まさかのアクシデントがピットロードで起きた。SUNOCO Team LeMansの小林可夢偉とTEAM 無限の山本尚貴がピットロードで接触し、ファストレーンで2台が立ち往生。後続マシンが通せんぼ状態になり、後続はファストレーンの2台を避けてコースイン。接触した山本は結局アタックを止め、可夢偉はノーズが破損した状態でアタックしたものの2台はQ1落ちという結果になってしまった。
現在のスーパーフォーミュラの予選はかつてないほど熾烈だ。予選Q1ではトップから1秒以内に19台中17台が入る、超僅差のバトル。わずかの差で順位が大きく変わってしまうため、アタック自体だけでなく、その前段階のタイヤのウォームアップ、そしてコースインのタイミングや前後マシンとのギャップで勝負が決まると言っても過言ではない。
自分のパフォーマンスを最大限発揮するためには、クリーンラップでアタックができることが前提になる。そのため前後マシンとのギャップをきっちりと取らねばならず、そのアタックのタイミングを調整するためにも、他のマシンの後ろで押さえられる前に、いち早くコースインしてポジションを確保したい。そのため、現在ではコースインの5分前からピットロードに各車が並び、セッション開始の青信号を待つ。
また、セッション最後の路面にラバーが乗ったグリップが一番得られるタイミングを狙い、Q1では残り7分を切ったところで各車一斉にコースインするのは、今年のスーパーフォーミュラ予選の定番パターンとなっている。
そのQ1残り7分を切って、今回の接触ハプニングは起きたが、実は可夢偉はVANTELIN TEAM TOM'Sの中嶋一貴からも、Q1セッション開始直前のピットロードで接触を受けていた。こちらの被害は大きくはなかったが、可夢偉にとっては2度、接触を受けたことになる。
「なんで僕だけ!? っていう感想ですね。なかなかないですよね。1日で2度もピットロードで接触を受けるのは」と、ユーモアを交えて振り返る可夢偉。
「僕としてはもう、どうしようもなかったです。逆に、どうすれば良かったか聞きたいくらいです。もうね、ピットロードで当たった瞬間、今年の僕のスーパーフォーミュラは、ポイントを取ってはいけないのかなと。僕の今シーズンは開幕してはいけないのかなと思いましたよ(苦笑)。ハプニングがどんどん大きくなるので、このまま次の最終戦の鈴鹿では何が起きるんだろうと。エキサイティングですよね。ここまで僕ばっかり悪いことが起きると、僕は悪くないはずなんですけど、僕が悪いのかなと思ってしまう(笑)」
ピットロードでウイングの左フラップを破損したまま、可夢偉はアタックに入り、15位でひとつ順位が足りずにQ1脱落したものの、タイムはわずかにコンマ1秒差だった。
「あのタイムにはびっくりした。ウイングが壊れて前のグリップがなくなっていたし、直線も速度が落ちていた。それでもあとコンマ1秒でQ2に行けた。普通に走れていたらトップと同じ1分5秒台には入っていたと思うので、Q3で戦えていた。ダメなときは、何してもダメですね」
可夢偉らしい言葉で予選を振り返ってもらったが、今回はセットアップの方向性を変えて手応えを感じ、気心の知れた脇阪寿一が実質監督としてチームに加わったことで、「僕もエンジニアも助かっています。経験ある立場から、走っている時でも無線で僕にアドバイスをくれる」と、チームとしても新体制での船出の一戦だっただけに、落胆も大きい。
一方、接触してしまった山本尚貴は5グリッド降格を受ける最後尾スタート。タイトルを争っている立場としては厳しい状況に追い込まれた。チーム側としては、ガレージからのゴーサインをメカニックが出した後、メカニックがすぐに可夢偉に気づいて手でストップの合図を出したが、ガレージを出た山本の目には入らなかった。山本も、その時の状況を振り返る。
「最終的には確認をしないで僕がファストレーンに出たので、僕に責任があります。エンジンを掛けて無線で指示を出してもらって、メカニックがゴーサインを出して、そこまではいつもどおりの流れで焦っていたわけではないですけど、最後にメカニックがクルマを止めようとはしてくれましたが、その時にはメカニックは僕の視界から消えたところにいたので、見えなくて進んでしまいました」と、山本は一方的に自分の非を認める。
接触後は、「残り3分でアタックができたとしてもタイヤを温める時間が少なく、上位に進出することがかなり難しい状況ですし、僕はピットロードで可夢偉選手だけでなく、その後ろでコースインを控えていたドライバーにも迷惑を掛けてしまった。その状況でまた僕だけみんなと違うタイミングでコース上でアタックすることは、また他のドライバーに迷惑を掛けてしまうことになる」との判断で、山本は最後のアタックに入らず、最終コーナーを立ち上がった後、ピットロードにマシンを戻した。
山本らしい責任感ではあるが、前回の岡山でも予選のピットロードで接触が起きており、視界の限られているドライバー側だけで防止できる問題ではないことは明らか。今後、再発防止に向けてどのような取り組みができるのか、接触後のペナルティの内容を含め、現在のシビアなスーパーフォーミュラの予選に、チーム、サーキット、JRP、それぞれの立場で新しいガイドラインが求められている。