トップへ

FUKIが歌う恋模様はなぜ10代に人気? リスナーに寄り添う歌詞と歌声を読む

2016年09月24日 15:01  リアルサウンド

リアルサウンド

FUKI

 2015年10月にメジャー・デビューを果たしたシンガーソングライターFUKIが、9月21日にフルアルバム『LOVE DIARY』をリリースした。デビューシングルの『キミじゃなきゃ』は、シェネルや平井大を手掛けてきたEIGOをトータルプロデュースに迎え、オリコンミュージックストア初登場1位を記録。2016年2月リリースの”ラブストーリー”をコンセプトにしたアルバム『キミへ ~LOVE SONG COLLECTION~』は、iTunes Store J-POPランキング初登場2位となるなど、デビューから1年経たずして10代を中心に彼女の恋愛ソングが注目を集めている。


(参考:FUKIがラブストーリーに込めた、ありのままの感情「自分の中にあるものしか歌えない」


 デビューシングル『キミじゃなきゃ』のリリース直後には、Twitter上で〈誰より愛しくて恋しくてそばにいてほしくて〉という同曲の歌詞をつぶやくリスナーが続出。恋する若者の純粋な思いを端的に、しかしみずみずしく表現した歌詞は共感を呼び、瞬く間に支持を広げた。FUKIの楽曲はカップルからの支持が厚く、10代に人気の動画共有コミュニティ『MixChannel』で、カップル動画のBGMとして使用されて話題を呼ぶと、カップル専用アプリ『Couples』とのコラボ企画として、アルバム『キミへ~LOVE SONG COLLECTION~』の収録曲「LOVE SONG」のリリックビデオを制作。写真を募集して映像と組み合わせ、参加したカップルにとって思い出に残るMVが完成した。また、2月14日に開催した初のタワーレコードインストアライブでも、カップルを中心に150人が集まり、バレンタインデーをさらに特別なものにしている。


 恋する人やカップルの共感を呼ぶ要素は、歌詞だけではない。FUKIの歌声には聴き手に寄り添う柔らかな魅力がある。切ない歌詞や曲調と、恋心の機微を伝える歌声が見事に融合し、現代の若者に響く楽曲に仕上がっている。幼少時代にダンスから音楽の道をスタートしたFUKIだが、高校生の頃からライブハウスのステージに立ち、歌唱面でのトレーニングの積み重ねてきた。安室奈美恵や加藤ミリヤなどの和製R&Bのカバーをよく歌っていたというルーツを持ち、スイング感のあるリズムとビートに乗せて、感情を表現する技術にも長けている。「うたスキマーケティングオンライン capio統計データ」によるカラオケデータ分析では、10代から20代の多くの女性が歌唱していることが明らかになった。これは、リスナーが歌詞にだけではなく、彼女の歌う姿にまで共感し、楽曲に親しんでいることを証明するデータだと言えるだろう。


 新アルバム『LOVE DIARY』は、“365日 のラブソング”をテーマとして制作され、これまでリリースしてきた楽曲も別バージョンで収録するなど、さまざまな恋模様を描いた楽曲が収録されている。


 収録曲「LOVE DIARY」の〈慣れ合いもすれ違いも多くなって わかってくれると過信したり〉〈この想いはキミに届いてるかな? それだけがいまは不安だし だからこんな大切に思っていること 今日はしつこいぐらい伝えるよ〉という歌詞には、いつも側にいる大切な存在を当たり前に感じてしまい、優しさや愛に感謝するのを忘れてしまうわないようにと、FUKIから恋する人々へ向けたメッセージが歌詞に綴られている。また、「泣きたいんでしょ」は、〈もっと頼ってくれたらいいよ 久々で嬉しいけど ごめんね、何も知らなくて 辛かったこと全部〉〈いつだってそばにいる 何があっても味方だよ〉と距離ができてしまった2人に、改めてお互いの大切さを気付かせる楽曲だ。FUKIはあくまで等身大の悩みを歌うが、それは悲しい失恋ソングではなく、もう一度恋に前向きに進めるよう、リスナーの背中を押す楽曲が目立つ。これも、恋に悩む多くのリスナーの心を捉えている大きな理由だろう。


 これまでFUKIは、自身や友人の実体験を元に楽曲を制作してきた。しかし、今作では西野カナなどの作曲を手掛ける佐伯ユウスケと初タッグを組むことで、より客観的に恋愛をめぐる風景を捉え、”色”という抽象的なモチーフを使いながら、細やかに表現することに成功している。歌詞に散りばめられた言葉から、”2人”が見てきた風景の色、ともに過ごしてきた互いの表情が、彼女の歌声によって鮮明に描写されている。


 これまでリリースしたさまざまな恋愛ソングで若者の心を掴んできたFUKI。『LOVE DIARY』のリードトラック「365」について、本人が「自分の中で表現しきれなかった“FUKI”で表したい世界観が、はじめてカタチになったような気がした曲です」とコメントを寄せてるように、本作にはさらに広さと深さを増した「恋」をめぐる楽曲が収められている。恋する人たちに、改めて大切なことに気付かせる彼女のニューアルバムは、さらに多くの人々の愛を育んでいくことになるだろう。(文=大和田茉椰)