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会社のサークルでツーリングしたら「熱中症」にかかり欠勤…「補償」はどうなる?

2016年09月24日 09:21  弁護士ドットコム

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都内のベンチャー企業でエンジニアとして勤務するCさん(23歳・男性)は、会社の自転車同好会のイベントに参加したことで業務に支障がでる事態になった。


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Cさんの会社では、自転車を愛好する従業員10人ほどが自主的に自転車同好会を結成し、月に一度ほど、休日に遠出してツーリングをおこなっている。Cさんは自転車を特に愛好しているわけではなかったが、同好会に所属している仲の良い同僚に誘われ、試しに参加してみることにした。


ところが、その自転車部のツーリングは想像していたよりはるかにハードなものだった。他の参加者はヘルメットやサイクルジャージに身をつつみ、愛車はフルカーボンの本格的なロードバイク。一方、Cさんの自転車は同僚が用意してくれた古びたマウンテンバイクだった。


その上、その日の行程は、炎天下の中、急勾配の峠を延々と登り続けるというもの。初心者のCさんがついていけるわけはなかった。他のメンバーからだいぶ遅れてゴール地点までようやくたどりついたものの、熱中症の症状がでて、頭痛や吐き気が止まらなくなった。


翌日になってもCさんの体調は回復せず、結局3日間会社を休むことになってしまった。会社の従業員の自主的なイベントが原因で、業務を休むことになり、業務に支障をきたした場合、法的な責任はどうなるのか。労働問題に詳しい戸田哲弁護士に聞いた。


●「会社の業務と全く無関係では労災と認められない」


「今回のようなケースで、会社に、労働者の身体等の安全を配慮するべき『安全配慮義務』の違反があれば、会社に対して直接補償を求めていくことが可能です。


しかし、安全配慮義務違反を証明するのは簡単ではありません。まず考えるべきは労災給付でしょう。労働者が業務上の病気やケガになった場合は、労災給付の対象になりますので、かかった治療費や、休業補償が保険で給付されます」


戸田弁護士はこのように述べる。会社の従業員が自主的に行っている活動で起きた事故でも、労災に当たる可能性はあるのか。


「労災認定されるためには、『業務遂行性』が必要です。会社の業務の支配が及んでいるような状況の下での病気やケガでなければ、労災とは認定されません。会社の業務と全く無関係では業務遂行性が否定されます。


今回のような従業員の自主的なイベントの場合、参加も従業員個人の自由に委ねられるのが通常です。Cさんも、仲の良い同僚に誘われて自主的に参加しただけですから、ツーリングが会社の支配下にはないと考えられます。


そのため、労災給付は難しいでしょう。残念ながらCさんは補償を求めることができない可能性が高いです」


仮に、ツーリングが会社のイベントとして実施されていたとしたら、結論に影響はあるのか。


「その場合は別です。個別の事情によりますが、会社がイベントの必要費用を出していて、ツーリングに参加することが、会社の出勤等と扱われるようなケースであれば、労災給付が認められる可能性があります。


さらに、こうした場合であれば、会社としてはイベント運営を適切に行う義務を負います。事情次第では炎天下の中で初心者にツーリングをさせることに関して、会社が労働者の身体の安全の配慮を怠った可能性が出てきます。場合によっては、安全配慮義務違反による損害賠償請求の検討も必要でしょう。


いずれも微妙な判断になりますので、困った際は専門家への相談をお勧めします」


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
戸田 哲(とだ・さとし)弁護士
千葉県弁護士会労働問題対策委員会副委員長。労働者側・使用者側の双方の事件を数多く取り扱い、「労働」分野の総合対応を強みとする。弁護士会主催研修、社会保険労務士会主催研修、裁判所労働集中部主催の労働審判員対象研修等、労働問題専門講師経験も多数。
事務所名:西船橋法律事務所
事務所URL:http://nishifuna-law.com