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欅坂46・渡邉理佐グループが高める、物語の緊張感ーー『徳山大五郎』佳境に向けて

2016年09月24日 06:01  リアルサウンド

リアルサウンド

土曜ドラマ24『徳山大五郎を誰が殺したか?』(c)「徳山大五郎を誰が殺したか?」製作委員会

 物語が佳境に向かうにつれて、あまりフィーチャーされてこなかったメンバーが目立ち始める。まさに、欅坂46の現メンバー全員を把握するにはもってこいの構成だ。主要キャラである平手友梨奈、長濱ねる、渡辺梨加の3人と、守屋茜のグループは全話通して満遍なく目立ち、菅井友香のグループは第8話。渡邉理佐のグループは第6話で大きく取り上げられた。となると、残りは中立派グループの5人だが、今回はまたしても渡邉グループに主役を譲っているようだ。


参考:欅坂46・平手友梨奈&長濱ねる、演技上達の鍵を握るのは嶋田久作? 『徳山大五郎』での成長を見る


 『徳山大五郎を誰が殺したか?』第10話では、用務員の橋部が盗撮の黒幕であったということが判り、前話で犯人に疑われた平手は事件解決に一歩前進する。文化祭の準備に取り掛かるクラスに、OGが訪ねてきて、そこで見せられた卒業アルバムで何かに気がつく平手。そんな矢先、石森虹花が長濱を刺そうとして、それを庇った渡邉に怪我を負わせてしまう事件が起こるのだ。


 第5話で長濱ねるが学校に現れてからぎくしゃくしていた渡邉グループの関係が、ようやく修復するまでがメインプロットとなったわけだ。そして今回も、長濱の演技ポテンシャルが炸裂する。冷静さと感情的な側面が交互に表出し、クラスのメンバーだけでなく視聴者までも手玉に取る。前回の記事で紹介した平手と長濱の演技合戦は、今回は長濱に軍配が上がったと見ていいだろう。


 そんな長濱と、教室の中央で真っ向から対決する石森の演技も冴え渡る。抑えられない嫉妬心で顔が疲弊しきって、髪の毛はボサボサになっているという作り込み。渡邉に、自分の思いを伝えようとして口ごもる時の表情。長濱・渡邉・石森の三人によるガールズラブ的なサブエピソードが、物語全体に幅を持たせている。


 そして同じグループの齋藤冬優花も、涙もろいキャラクターが活かされてこのサブエピソードの三角関係に巧く入り込む。それだけではなく、守屋グループと菅井グループの仲裁に入る場面がなかなか面白い。原田葵と鈴本美愉の恒例の言い争いに、どっちもどっちだから、と上から目線で仲裁するあたりは渡邉グループに属している自信の表れにも見えるし、その時の動きが実に滑らかである。もっとも、そんな齋藤を叩く菅井や、終盤渡邉に食ってかかる守屋など、それぞれのグループが一連の事件を受けて主張が高まっている様子も見受けられるのだ。


 一方で、じわじわと存在感を発揮し始める中立派グループは、残りのエピソードの大きな鍵となるようだ。クライマックスとなる文化祭を主導する役割を担っただけに、ここから一気に中立派グループの物語が始まるだろう。重要な謎のひとつであった、「徳山の携帯からLINEを送ってきたのは誰?」ということについて、第10話のラストで米谷奈々未に嫌疑が向けられる。それについては第11話で詳しく明らかになるのであるが、どうやら以前紹介したような、単なる調整役というわけではなかったようだ。


 また、お化け屋敷の造形を任され一人黙々と何かの絵を書き続ける美術担当の佐藤詩織。実際に美大生である彼女が、第4話で徳山と言い争っていた男(第6話で登場する)の似顔絵を書いて以来となるその腕前を披露。OGたちとともに卒業アルバムにはしゃいでいるメンバーを、無言の圧力で制するなど、ここに来てようやく目立ち始めたのは嬉しいところだ。


 ところで、この場面で買い出しに出かけている渡邉と長濱以外の19人のうち、18人が教室にいることを確認できた。文化祭準備の総監督をしている長沢菜々香だけが映っていないように思えたが、彼女は教室にいなかったのか、それとも単純に映っていなかっただけなのか。インサートされる、副担任の神崎とのやり取りで、内通者と思しき生徒の足元だけで映っている。この脚の感じとスカートの丈を考えると長沢にも見えるが、第8話のラストで神崎と話している女子生徒は黒のソックスだったから佐藤の可能性も強い。(久保田和馬)