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Arnage Racing スーパーGT第6戦鈴鹿 レースレポート

2016年09月23日 22:11  AUTOSPORT web

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ODYSSEY SLS
SUPER GT Rd.6 SUZUKA 1000km
2016/8/27~8/28

TEAM RELEASE

Arnage Racing

「忘れ物を取りに行こう」を合言葉に、チーム一丸で1000㎞レースの完走を勝ち取る!

「真夏の三連戦」と呼ばれるシーズン中盤の連戦の最後を飾るのは、今年で45回目を迎える「International SUZUKA 1000km」。走行時間が6時間に及ぶ伝統の耐久レースは、Arnage Racingの地元で行われる唯一のレースで、シーズン最大の山場ともいえる。しかし、Arnage Racingはチームが発足した2013年に入賞して以来完走に恵まれておらず、特に昨年は大きなクラッシュでレースを終えている。苦い思い出がつきまとう鈴鹿1000㎞を、今年は何としても無事に完走させて胸のつかえを払拭したい。

 ガレージでは、3週間のインターバルの間に1000㎞の長丁場を走り切れるように、細かい箇所までメンテナンスを行った。特に第5戦の富士ラウンド前に投入した左側のドライブシャフトに加え、右側も新しいドライブシャフトに交換するなどして、マイレージの蓄積からくる不安を取り除いた。前戦富士スピードウェイで、よい流れを取り戻して意気の高まるArnage Racingは、第3ドライバーに5月の富士ラウンド以来3戦ぶりとなる加納選手を迎え、「忘れ物を取りに行こう」を合言葉にレースウィークを迎えた。

August 27th Qualifying Day 
曇り/ドライ  気温:33℃→32℃ / 路面温度:44℃→41℃
入場者;26,500人

 レースウィークは台風10号の接近で曇りと雨のマークが並ぶ天気予報。予選日も、朝のうちは暑い雲に覆われ、時折小雨がぱらついたが、コースコンディションはどうにかドライのまま。Arnage Racingもドライタイヤで9時20分からの公式練習をスタートさせ、安岡選手、加納選手、凜太郎選手が順にコースに出て、時間いっぱいを使ってマシンの感触を確かめた。ODYSSEY SLSは終始順調で、7月に公式テストに参加した成果もあり、よい方向で決勝に向けてのセッティングが決まった。午後になると空模様は予想外に好転し、夏の青空が広がる陽気となった。

 14時30分から行われた予選は、安岡選手がQ2進出をかけてマシンをコースに進めた。ところが、ODYSSEY SLSはここでまさかの変調を見せる。安岡選手がアタックを開始しようとしたとき、燃圧系のアラームが点灯、メカニックが懸命に原因究明を図ったが短時間のうちには解決せず、ODYSSEY SLSはまったくアタックできないままにQ1の時間を終えてしまった。

 予選終了後のチェックの結果、原因は燃圧ポンプの故障と判明した。燃圧ポンプは今大会終了後に交換の予定で、既に本国ドイツから空輸中であった。しかしこのタイミングのトラブル発生では間に合わない。チームに一瞬緊張が走った。幸い四日市市内に同じくガレージを構えるARN Racingさんが、保有している新品パーツをわざわざ四日市から届けてくださり、決勝を無事に戦うお膳立てができた。

 予選を戦えなかったために、決勝グリッドは最後列となったが、1000㎞レースの間にはチャンスもあるはず。特に、5度のピットインが義務付けられている今シーズンの鈴鹿1000㎞では、迅速で確実なピットワークを行うことが良いポジションを得るための重要なカギとなる。予選後、Arnage Racingはピットストップの練習を入念に行い、丁寧なメンテナンスを施して決勝に備えた。

 なお、予選の結果は以下の通り。

P1 #18 UPGARAGE BANDOH 86  中山友貴 / 山田真之亮 (1'57.876)
P2 #31  TOYOTA PRIUS apr GT 嵯峨宏紀 / 中山雄一 (1'58.092)
P3 #2  シンティアム・アップル・ロータス 高橋一穂 / 加藤寛規 / 牧野任祐 (1'58.127)
P28 #50 ODYSSEY SLS  安岡秀徒 / 久保凜太郎 / 加納政樹(3'30.950)

August 28th Race Day 
曇り時々雨/ウェット→ドライ 気温:27℃→28℃ / 路面温度:28℃→30℃ 
入場者:34,000人

 決勝の朝、鈴鹿サーキットは雨。午前中に行われたサポートレースの時には強い雨脚に、一時赤旗が提示される場面も見られたが、雨雲レーダーでは午後から雨が降る気配が見られない。決勝に向けてのタイヤチョイスが悩ましいところである。鈴鹿大会は朝のフリー走行がなく、11時8分からウォームアップ走行が20分間行われた。この頃になると雨は止み、コース上は一部乾き始めていた。ODYSSEY SLSはウェットタイヤでウォームアップ走行を行ったが、このまま晴れていく方向に賭けたチームは、グリッド上でウェットタイヤからスリックタイヤに交換。ドライコンディションでレースをスタートすることになった。

 上空にはまだ雲が多いものの、大きな雨雲は見当たらない。34000人の観衆が見守る中、12時30分、いよいよ2016年International SUZUKA 1000kmの幕が切って落とされた。ここ鈴鹿でもスタートドライバーを任された凜太郎選手は、最後列の28位から1000㎞先のゴールを目指してレースを開始。スタートを得意とする凜太郎選手は、いきなり最初のラップで22位までポジションアップ、さらに次の周回で20位までポジションを上げて走行を始めた。凜太郎選手は、2分4秒台から5秒台の落ち着いたペースでポジションをキープしながら淡々と第1スティントを走った。

 30Lap目、1回目のピットインで凜太郎選手から安岡選手へとドライバーチェンジ。給油と前後4輪のタイヤ交換を行った。燃費のよくないMercedes Benz SLS GT3は、他のマシンと比べると給油時間に20秒近いロスが出てしまう。見かけ上4位でピットインしたODYSSEY SLSは、コースに戻ると24位までポジションを落としていた。しかし、第2スティント担当の安岡選手は、自ら100点満点という好調なドライビングで、再びポジションを19位まで上げて快走を続けた。

 スティントの後半、50Lapを過ぎた頃に空模様が怪しくなって雨が降り始めた。マシンをピットインさせるチームが出てくる中、Arnage Racingも雲行きをみてピットインのタイミングを計っていたが、安岡選手をもう少しコース上にとどまらせ様子を見ることにした。雨は暫くコースを濡らしていたが、間もなく雨雲が通り過ぎ、すぐにまたドライコンディションになった。安岡選手は63Lap目まで走行し、14位でピットに戻ってきた。

 当初チームは、4輪交換の次のピットストップではタイヤ無交換でピット作業時間を稼ぐ予定だった。しかし、最初のピットストップ後のタイヤの状況から無交換作戦が不可能だと判断していた。2回目のピット作業では後輪2輪を交換して給油を終え、第3スティント担当の加納選手が22位でコースに復帰する。レースは中盤に差し掛かり、マシントラブルやアクシデントで脱落するマシンが出てくる中、ODYSSEY SLSは好調なコンディションをキープしていた。加納選手も終始落ち着いたペースで悠々と走行を続け、ポジションを18位にまで上げていた。82Lap目、S字コーナー付近で300クラスのマシンがクラッシュ、セーフティーカーが導入されるアクシデントが発生。予定周回数より多い28周を走行した加納選手は90Lap目に17位でピットインした。

 3回目のピットインで、ODYSSEY SLSは再びタイヤを4輪交換。第4スティント担当の凜太郎選手にステアリングが渡された。このピットストップでも給油に時間はかかったが、ピットインのタイミングがよかったためか、凜太郎選手は順位を落とすことなく18位でコースに復帰した。第4スティント終盤、114Lapを過ぎた頃に、再び空が暗くなって雨粒が落ちてきた。雨はコースを濡らして、多くのマシンがワイパーを動かして走行し始める。再びピットインのタイミングが迫っていたArnage Racingもレインタイヤを準備したが、凜太郎選手のスティントを引っ張ってコースの状況を見極めていた監督は、117Lap目、ドライ続行を確信したところでマシンを呼び戻し、4回目のピット作業を行った。

 Arnage Racingは、この4回目のピットインでも後輪2輪だけタイヤを交換、第5スティント担当の加納選手にドライバーチェンジして、マシンは19位でコースに復帰した。すでにレース開始から4時間以上が過ぎ、暗雲立ち込める空模様も手伝ってあたりは薄暗い。加納選手は落ち着いた走行で14周の短いスティントを走り、いよいよ最終スティントとなる安岡選手にステアリングを委ねるため132Lap目にピットに戻ってきた。

 最後のピットイン。Arnage Racingはタイヤを前後4輪とも交換、メカニックは最後まで正確で迅速なピット作業で給油を行い、ODYSSEY SLSをコースに送り出した。安岡選手はコースに復帰直後から良いペースで、チェッカーに向けてひた走った。残り5Lapというところで、再び雨が降ってきたが気迫の走りは衰えない。背後から500クラストップの38号車が迫っていたが、安岡選手は強い雨の中踏ん張りを見せてオーバーテイクを許さず、3Lap遅れのマージンを死守して、16位で1000㎞のチェッカーを受けた。

 Arnage Racingは、予選日のトラブルを乗り越え、ようやく鈴鹿1000㎞レースを完走することができた。終わってみれば、多くのマシンが2分1秒台から2秒台のベストラップを出す中、ODYSSEY SLSは淡々と地道なタイムを積み上げ、ノートラブル、ノーアクシデント、チーム一丸で掴んだ16位完走であった。

P1 #61  SUBARU BRZ R&D SPORT 井口卓人 / 山内英輝   
P2 #31  TOYOTA PRIUS apr GT 嵯峨宏紀 / 中山 雄一
P3 #0 GAINER TANAX GT-R アンドレ・クート/ 富田竜一郎
P16 #50   ODYSSEY SLS 安岡秀徒 / 久保凜太郎 / 加納政樹

<ドライバー 安岡秀徒>
 1000km、2013年以来完走できました!もう、うれしいの一言です。第2スティントでは、自分でも9割5分以上のすごくいい走りができました、第2スティントであることとか、順位とか考えたら、それ以上の走りと状況判断はない!というくらい濃密なスティントが走れたと思います。そのあと、加納さん凜ちゃん加納さんとつないですごいいい状態で走れたので、最後はしっかり締めなきゃいけないと思って最終スティントに臨みました。かなりトリッキーなコンディションだったんですけど、ここはペースを上げて終わりたいと、かなり集中して、最後まで走れてよかったと思います。

 最後の「後ろのZENTから逃げろ」というムチャぶりには焦りましたけど…(笑)。でも、終わってみると気持ちは早くも来年の1000キロに飛んでて、「攻めの最終スティントをやってみたい!」と思っている自分には驚きです。残り3戦、特にタイは、僕も凜ちゃんも初めてで、キーを握るレースだと思いますので、そこに向けて、気持ち切り替えてやっていきたいと思います。応援ありがとうございます。

<ドライバー 久保凜太郎>
 初めての1000㎞で、話ではいろいろ聞いてたんですけど、鈴鹿公式テストで乗ったときにあんまり得意な感じじゃなかったし、1000㎞でのタイヤ温存となると果たして富士みたいに走れるのかなっていうのも結構不安だったし、雨スリックみたいな感じになったのも不安でした。でも、実際スタートしてみたら、スタートでジャンプアップできて、我ながらいい流れを作れたかなって思ってます。ミスとか難しいところもいろいろあったんですけど、2スティント乗って、自分自身の中で、トレーニング不足も感じたし、ドライビングとか自分の悪い部分をいっぱい気付けたんですよ。それが今後、自分にとって、特に、次のタイに向けてはすごく糧になるんじゃないかと思ってます。何より完走できて、みんなが喜んでるのが、僕は一番うれしいです。ありがとうございました。

<ドライバー 加納政樹>
 ここ2年間、トラブルとか去年はクラッシュやったりとか悔しい思いをしてて、今年は何としてでもきっちり完走して、最後のチェッカー受けるのが目標で、やっすー筆頭に、凜ちゃんも僕も、各々がシミュレーターでトレーニングしたり、チームとしてもテストに参加したり、ほんとにここをメインとしてやってきました。今日は、レースの内容とか、周りのラップタイムとかいろんなもの見てても、みんながそれぞれ自分の持ち場できっちりやれた。

 何より、ここ最近あったペナルティーやとかイージーなミスもなく、みんなが気持ちひとつできちっとまとめて、完走っていう結果を勝ち取れたっていうのは、ぐっとくるものがありました。このあと、タイと、もてぎの2戦が残ってるんですが、まずはこの鈴鹿1000㎞で借りを返すというミッションがクリアできて、そういった意味で弾みになるようなレースだったんじゃないでしょうか。残り3戦もやっすーと凜ちゃんをしっかりサポートして頑張りたいと思っていますので、応援宜しくお願いします。

次戦は10月8日、9日にタイ、チャーンインターナショナルサーキットで開催予定の第7戦タイラウンドとなります。引き続き、応援のほど宜しくお願いいたします。