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「デジモンアドベンチャー」はなぜ人を魅了するのか…彼らからの”告白”を直撃世代はどの様に受け取ったのか

2016年09月23日 17:52  アニメ!アニメ!

アニメ!アニメ!

「デジモンアドベンチャー」はなぜ人を魅了するのか…彼らからの”告白”を直撃世代はどの様に受け取ったのか
2016年9月24日(土)から『デジモンアドベンチャー tri.第3章「告白」』が2週間限定上映される。初代『デジモンアドベンチャー』の6年後を描く本作では、当時小学生だったキャラクター達は高校生へと成長を遂げている。
そんなシリーズの最新作『第3章「告白」』は、全6章で送られる本作にとって前半の大きな山場となる。波乱を予感させるPVは発表から物議をかもし、公開を心待ちにしているファンも多いのではないだろうか。
前編に続き、アニメ!アニメ!編集部のタカロク、インサイド編集部の栗本、ライターの半蔵門アラタ、キャプテン住谷の4人で座談会を敢行。本稿では、その座談会の模様を引き続きお届けする。
[聞き手:タカロク 取材・構成:キャプテン住谷]

『デジモンアドベンチャーtri.』
2016年9月24日(土)2週間限定上映
http://digimon-adventure.net/

■今だから分かる『デジモン』シリーズの取り組み

―ここまで『デジモンアドベンチャー』について話をして、今だから気付いたことってありますか? あの頃の子ども向けアニメって、“大人が作っている感”を見せなかったと思うんですよ。

栗本:
色んなものが詰まってますよね。家族愛や兄弟愛、さっき話題になったネットの話も。

―シリーズは今までに…

住谷:
『アドベンチャー』『02』『テイマーズ』『フロンティア』『セイバーズ』『クロスウォーズ』ですね。

栗本:
『クロスウォーズ』は3期までありましたよね。

―その流れを見ていて『デジモン』はどういう風に変わっていきましたか?

住谷:
『アドベンチャー』だと、人間のパートナーがデジモンを進化させた後って基本的に応援することしかできないんですよね。人間をどうバトルに関わらせるかっていうことは、かなり考えられてきたと思います。『テイマーズ』ではバトル中にカードを使ってデジモンをサポートしたり、究極体に進化する時には一体となったり。次の『フロンティア』だとデジモンに進化するのは人間だし、『セイバーズ』ではパートナーを進化させるために主人公が敵を殴りますよね(笑)。

栗本:
初代と『02』って、極端な話をすると人間側は気持ちの面でしかバトルに貢献できなかったんですよ(笑)。子どもたちが色んな課題に直面して、それを乗りこえるとデジモンがより進化できるんですけど。

―心がシンクロしてるんですね。皆さんがシリーズの中で一番好きな作品はどれですか?

半蔵門:
『テイマーズ』です。

住谷:
どれが好きかって言われると僕も『テイマーズ』ですね。僕自身が結構『デジモンカードゲーム』にハマってたからなんですけど。

栗本:
実は何だかんだ僕も『テイマーズ』なんですよね。ただこれって凄く甲乙付けづらいんですが、初代→02→テイマーズという順番で見たからこそ『テイマーズ』が一番だと感じるんだと思います。『テイマーズ』は初代と『02』で盛り上がった気持ちを昇華させてくれたんです。

―「自分も何かしたい!」みたいな気持ちを?

栗本:
それもあるし、初代と『02』が描いた良い部分をちゃんと引継ぎつつ、新たな要素を加えて面白く仕上げてくれたので。これもアツい作品ですよ。

住谷:
『テイマーズ』はそのタイミングがちょうど良かったんだと思いますね。カードを通して参加することで「僕も何かしたい」っていう欲求が満たされた、みたいな。

半蔵門:
ちゃんと下地があってこその『テイマーズ』ですよね。過去作のオマージュもあったりして。初代だとアグモンがスカルグレイモンになっちゃうじゃないですか。それと同じく、ギルモンがメギドラモンになっちゃって。

栗本:
そうですね。レオモンがレオモンだったりね(笑)。でも、レオモンが一番活躍した作品でもありましたかね。

半蔵門:
パートナーデジモンになりましたもんね。

栗本:
レオモンっていう、どの作品でも死んじゃうデジモンがいるんです。『テイマーズ』でも死んじゃうんですけど。

住谷:
『テイマーズ』だと、ラストまでレオモンの死が影響するんですよ。レオモンがパートナーだった女の子が、レオモンを殺されちゃったことで闇を抱えてしまって、ラスボスがその闇につけ込んで大変なことになるという……。


―その後の作品にも出てくるんですか?

住谷:
『セイバーズ』にはバンチョーレオモンというキャラが出て来ますね。でもレオモンの宿命からは逃れられなかった……。

―では、シリーズ作品の劇場版についてはどうですか?

半蔵門:
やっぱり細田守監督の『ぼくらのウォーゲーム!』は今見ても面白いですよね。

栗本:
何回見ても良い。TVシリーズだとインターネットが舞台であるものの、結局は異世界なので、あまり現実味がないんです。ヴァンデモンが現実世界に攻めてくる話も、宇宙人が地球を侵略するのと大差ない。ところがですね、『ぼくらのウォーゲーム!』は違うんですよ。デジモンが現実世界に与える影響がめちゃくちゃリアルに描かれているんです。いまだに見てますよ。

―初代だと、もうひとつ劇場版がありますよね。

住谷:
パロットモンと戦うやつですね。テレビシリーズの前日譚になっていて、実はデジタルワールドに行く前にデジモンに出会ってたという話です。

―個人的に、すごく衝撃的だったんですよ。「デジモンってこんな生々しい感じなの!?」って。

栗本:
ゴジラみたいなね。

―それを当時の子どもが見てたんだって。『ぼくらのウォーゲーム!』はデジモンについて何も知らなくても面白いですよね。

栗本:
さっき言ったようにリアルなんですよ。メールを敵に送りつけて動作を鈍らせるとか。

住谷:
光子郎がウーロン茶を飲みまくるんですけど、そんなウーロン茶好き設定が『tri.』にも活かされてたり。

半蔵門:
ちょっと強調し過ぎな気はしたけどね。「しつこいな!」って。

一同:
(笑)

■『デジモンアドベンチャー tri.』発表当時とその公開後

―そろそろ『tri.』の話題に移りましょうか。まず発表された時はファンとしてどんな気持ちでした?

住谷:
泣いた気がします。まさか続編が作られるとは。嘘だと思いました(笑)。デジモンネットワークってご存知ですか?

栗本:
聞いたことはあります。実際に見たことはないんですけど。

半蔵門:
全然分からない……。

住谷:
当時、バンダイが運営していた公式の掲示板で、アニメの感想とかオリジナルの小説とかを載せてファンが交流するサイトがあったんです。僕はそこに入り浸ってて……。

栗本:
ええー。いいですね。

住谷:
それで『tri.』が発表された頃に、何となくそこを思い出して検索してみたんですね。元のサイトはなくなっちゃったんですけど、同じことを思ったのか昔そこにいた人たちが新しく掲示板を立ち上げていて。当時交流していた人たちがメッセージを残していたので、僕もその時に使っていたハンドルネームで書き込むと「覚えてますよ」って返してくれたり。

3人:
へぇー。

住谷:
すごく懐かしかったですね。

半蔵門:
第1章「再会」……。

一同:
(笑)

住谷:
やっぱり、デジモンファンにとってはそういうネット上での交流というか、やりとりが根底にあるんですよね。

栗本:
デジモンっていっぱいシリーズがありますけど、やっぱ初代への思い入れってすごく強くて。新シリーズじゃなくて、『デジモンアドベンチャー』の続編ってところがすごく大きいですね。

―『02』の時は中学生で、『tri.』では高校生。

栗本:
発表の段階では「そうそう、求めていたのはこれだよ」と期待100%でした。

―当初は新作をやるって話だけで、テレビアニメかどうかとかは一切分からなかったんですよね。

栗本:
まさか劇場6作品とは思ってなかったですよね。

半蔵門:
僕は深夜アニメなのかなって思ってました。1クールくらいの。

―実際に第1章を見てどうでしたか?

住谷:
僕はキャストさんの発表を見た時に、キャラの成長した姿と声のイメージがすぐに結びつきました。すんごい上手いことキャスティングしたなと。

半蔵門:
1章を見て、本当にピッタリでしたもんね。

栗本:
実際に作品を見てイメージが変わった人は多いと思いますね。僕も結構半信半疑で見に行ったんですけど、ちゃんと『デジモンアドベンチャー』でした。発表当初は「こんなのデジモンじゃねぇ!」みたいな反応がすごかったですよね。

―特にキャラクターデザインに対する反響が大きかったですかね。

半蔵門:
そこは確かに不安でしたけど、見てみると全然気になりませんでしたね。

―ファンとして嬉しかったポイントはありましたか?

栗本:
いっぱいありますよ。まず、ナレーションが平田さん。第1章は過去作のオマージュというか、ファンが喜ぶ要素がたくさん入ってましたよね。導入部分で太一の部屋が写るんですけど、机の上に置かれている教科書の名前が……

住谷:
「One Vision」!

栗本:
そう、「One Vision」! 他には最初の敵がクワガーモンだったり。

半蔵門:
『デジモンアドベンチャー』第1話と同じですね。

―すごくリスペクトが込められた第1章でしたよね。主題歌も「Butter-Fly」で。

半蔵門:
和田さんが新しく歌われた「Butter-Fly」を聞いて感動しました。

栗本:
後は進化シーンもよかったですね。元からCGが使われていて、当時の水準から見るとクオリティが高かったんですけど、そこもパワーアップしていたな、と。あと演出が『02』の劇場作品である『黄金のデジメンタル』(※)っぽいなって思いました。あの丸っこくなる感じが好きですね。

※2000年に劇場公開された映画『デジモンアドベンチャー02 前編・デジモンハリケーン上陸!!/後編・超絶進化!!黄金のデジメンタル』のこと。ロイヤルナイツの一員であるマグナモンが初登場した。

栗本:
高校生になって選ばれし子どもたちのキャストさんは変わりましたけど、デジモン側が全く変わってなかったのも嬉しかったですよね。

―語り出せばキリがない……(笑)。

(次ページ:第2章「決意」で動き出した『tri.』の物語)

■第2章「決意」で動き出した『tri.』の物語

―第1章の感動と懐かしさがあってからの第2章って、結構ハードルが高かかったのではないでしょうか。

住谷:
やっぱり、第1章はシリーズファンをまずしっかりと掴むための作品だったんですよ。第2章からは『tri.』としての物語が動き出した感じはありましたよね。

栗本:
第2章は子どもたちの成長が大きかったですよね。そこを受け入れられるかどうかで意見が分かれてくる。

―受け入れられましたか?

栗本:
僕はまぁ、割とそんな感じかなって。ミミというキャラがいるんですけど、彼女の成長の方向に賛否がありそうだなって思いました。

住谷:
ミミって、悪く言えば自己中心的に描かれることが多いキャラなんです。今までは基本的に選ばれし子どもたちやパートナーデジモンとのやりとりしかなかったし、皆彼女の良いところをちゃんと知ってるから、そこが大きな問題になることってあまりなかったんですよね。でも、ミミを一般的な日本の高校のいち教室に置いた時、やっぱりこういうトラブルはあるよなぁと。そこにスポットを当てたのは面白かったですね。

半蔵門:
デジモンなのに学校の話があるのは新鮮でしたね。特に初代は基本デジタルワールドにいましたから。

―その他のキャラの変化についてはどうですか?

住谷:
僕はやっぱり太一が気になりました。太一って初代の時は皆をグイグイ引っ張るリーダー格だったんですけど、『tri.』だと成長して視野が広がったからこその迷いが生まれて。そこに人間味を感じましたね。

栗本:
ヤマトは厳しいこと言ってますが、「分かるわー太一、俺はお前の味方だからな」って思いながら見てました。

半蔵門:
逆に、太一がいたポジションにヤマトがいたりして。

住谷:
第1章はそういう意味で、太一の成長を感じた作品でもありましたね。

半蔵門:
その他だと、タケルはなんというか……チャラくなったよね(笑)。

一同:
(笑)

ー女の子にまつわるシーンが多かったですよね。そういった男女間の人間関係はどうですか?

住谷:
太一とヤマトと空って三角関係じゃないですか。でも、最終的に空はヤマトと結婚するんですよ(※)。そこに至るまでの空白の期間が『tri.』では描かれるんじゃないかと思っています。第1章でもお好み焼きを焼きながら女子会をするみたいなシーンがあって、ミミが「どっちにするの?」って問いかけたりとか。太一の試合とヤマトのライブが被っちゃってやきもきするシーンもありましたよね。

※『デジモンアドベンチャー02』の最終話では大人になり、家族を持った選ばれし子どもたちの姿が描かれた。

住谷:
空は太一とくっつくと予想していたファンも多いと思うので、ヤマトと結婚することになった経緯というか、そのきっかけが明らかにされると嬉しいですよね。個人的には、太一は『tri.』からの新キャラである望月芽心とくっつく気がしています(笑)。

栗本:
『02』のメンバーって今何をしてるんですかね。

―少し出て来たんでしたっけ。

栗本:
第1章の冒頭に彼ららしきシルエットが登場していますね。後は、第2章にデジモンカイザーがパッと出て来ただけ。

住谷:
これからどうなるか気になりますよね。カイザーについては皆を究極進化させるためにわざと悪役を演じている説とか、過去のデータが暴走している説とか色んな考察があったり……。

■第3章「告白」はどうなる!? それぞれの予想と期待

―それでは、話を第3章に移しましょう。キービジュアルを見てどうですか?

住谷:
パタモンは究極体に進化しないっぽいですよね。

栗本:
そう噂されてますよね。感染してるとかPVで言ってたし、またデジタマに戻るんじゃないかな……。


―キービジュアルと本編の関係はどういう印象ですか?

半蔵門:
その章でピックアップされるキャラクターと、そのパートナーデジモンの究極体って感じでしたよね。

住谷:
後はクライマックスのバトル相手が描かれてますね。

栗本:
PVを見る感じ、デジタルワールドにも行くっぽいですよね。異変が起こってるってレオモンが言ってましたし、向こうへ行く展開になるのかな。

半蔵門:
タイトルの「告白」も気になりますよね。何を告白するんだろう。

住谷:
パタモンが感染してるって言うのが告白だと思ってたんですけど、新しいPVでテントモンまで怪しくなってきましたからね。ここにきて分からなくなった……。

栗本:
個人的にはテントモンがいなくなるっていうイメージがないんですよね。光子郎がダメになってしまう(笑)。

―テントモンにも要注目ということですね。折り返しにもなる3章、何か大きな動きがありそうです。

住谷:
前半のクライマックスだと言われていますからね。

―ウイルスに感染すると反転しちゃうみたいなことってあるんですか?

栗本:
スカルグレイモンへ進化しちゃうようなパターンを除いて、暴走とかはあまりなかったですよね。そもそもデジモンの分類にウイルス種っていうのが居る世界ですから。

住谷:
そもそも、パタモンがどうやって感染するかですよね。

栗本:
見ている感じだと、急に感染してしまうパターンみたいですね。そこにアルファモンが現れる、みたいな。

住谷:
ハックモンも本編中にたびたび登場していますし、感染とロイヤルナイツの関係も気になるところです。

【参照記事】
「デジモンアドベンチャー tri.」謎の新キャラ・ハックモンのビジュアル公開 演じる武内駿輔のコメントも

―最後に、これからの「デジモンアドベンチャーtri.」について。

栗本:
『tri.』が発表されてから第1章が公開されるまで、『02』について一切触れられてこなかったので、個人的には「もしかして『02』が存在しないことになってるのかな」と思っていたんですが、第1章・第2章と来て、どうやらそうでもないらしい、と。妙に伏線が多い。そのうちの何かが3章で明かされると思うので、非常に楽しみですね。とりあえずテントモン、生きて!

半蔵門:
3章でどういう風に冒険が始まるのか、それとも始まらないのか。そういう部分も含めて気になります。

住谷:
『デジモンアドベンチャー』っていう完結した物語が動き出して、成長したキャラについての発見はもちろん、過去作についても『tri.』を見たからこその気付きもあったりして。これからも新しい発見があるのではないかとワクワクしています。

―本日はありがとうございました!