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【マクラーレン分析後編】ライバルと異なる独特の手法。ホンダに戻りつつある“レース屋魂”

2016年09月23日 12:51  AUTOSPORT web

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マクラーレン・ホンダ、この両者は常に世間からの批判を避けてきた。ちょうど昨シーズン、レッドブルとルノーに批判が降りかかったときのようにだ。 

 今は、隠すような軋轢は生じていない。しかし、マクラーレンがホンダに対し厳しい要求をし続けていることについては、疑いの余地はない。このチームが勝利を収めるまで、その要求は変わりそうにない。ただ、雰囲気は劇的に改善され、その多幸な環境が結果に結びついている。

 ホンダは依然としてエンジンマニュファクチャラーの序列の中では最下位であるが、その改善率は高い。はるか後方からの進歩はそれほど難くはなかったものの、今後はその成長曲線は緩やかになるだろう。ホンダの開発は正しい道に進んでおり、その身を競争力のあるところに置こうとしている。ホンダが失敗から学び、そしてトップに立とうとすることがカギなのだ。

 パドックのある上層部は、ホンダのアプローチがライバルとどのように異なっているか述べた。

「彼らはとてもいい仕事をしてるよ。エンジンの回転数を上げているようだし、デプロイの仕組みも少し違っているようだ」とその人物は語った。「彼らのPUは少し異なった手法をとっているので、かなり興味深いね」

 昨年、ERSのデプロイは大きな弱点だった。しかし今ではバトンが「ホンダのERSはF1で一番」と語るほどに進化した。冬の開発とカナダで投入したターボのアップデートにより、ホンダは回生エネルギー量を倍にするという目標を達成した。これは、ロングストレートで回生エネルギーを使い果たしにくいことを意味する。

 ERSの状態が良好なため、ホンダは内燃機関に目を向けることができるようになった。このエリアにおける最初のアップデートは燃費と出力の向上を目的としてシルバーストンで投入された。

 このアップデートは、改良版ターボが導入されたときに減少した排気の再利用を改善するものだ。スパで行われたアップデートではターボとV6エンジンにアップデートが施され、効率性が改善された一方で、排気をカナダよりも前の水準に戻した。

 さらには追加のアップデートも計画されている。日本GPでの投入が理想だが、純粋にエンジンの改善に焦点が当てられるだろう。励みになることだが、一連のアップデートはトラック上で予想通りに機能している。ドライバーたちはパワーユニットについてよい感触を抱いており、ラップタイムやポイント獲得といった結果が改善するのは明白だ。

 ホンダはトップに返り咲こうと躍起になっており、リスク承知でできることは全てやっている。ホンダのF1開発責任者である長谷川祐介は、ベルギーGPの予選でリスクがあることを知りながらも、アロンソをコースに出すように指示した。

 土曜日のFP3でアロンソは油圧の低下によりマシンを止めることを余儀なくされた。そして、油圧の調整を施した後に、さらにエンジンを失いかねないことを理解したうえで、ホンダはアロンソをコースへ送り出した。

 マクラーレンからの圧力はあったが、最終的にアロンソをコースに送り出したのはホンダだった。アロンソは1周もすることができず、長谷川はその責任を認め、エンジンを1基失った。しかし、そうでもしなければセッションは棒に振られることになったのだ。挑戦しない理由があるだろうか?

 長谷川はレース屋のスピリットを持っており、前任の新井康久から職務を受け継いでから、ホンダが劇的な改善がなされ続けてきたことに疑いの余地はない。

 今年初めになされた2017年に注力するという決断は懸命なものだった。来季からはトークンシステムが撤廃されることで、ホンダは自らのアイデアに戻るチャンスを得る。トークンシステムによる開発制限がなくなり、ホンダはライバルに追いつく好機を得ることになる。

 その一方では、ある意味、この技術規則の変更は悪い時代への突入とも考えられる。エンジンとエアロの両面でマクラーレン・ホンダはギャップを縮めてきた一方で、首位のメルセデスはその進歩の度合いが小さくなってきている。空力とエンジンの規則を変更するということは、それらの領域の可能性を拡げるということだ。

 しかしこれにより、リソースが豊富なチームはうまく適応することができる。言い換えれば、マクラーレン・ホンダにはその適応ができるのだ。来年のF1は大きな転換期ではあるが、このチームは元にいた場所へ戻ろうとしているようだ。常勝チームへなっていくための布石なのである。

 来年のチャンピオンシップは不確実だ。しかし、マクラーレン・ホンダの現在の軌道から判断するに、4つのエンジンマニュファクチャラー間の差が縮まるのは明らかだ。

 喫緊のライバルであるウイリアムズやフォース・インディアを打ち負かすであろうし、表彰台を狙える可能性も秘めている。

 ウイリアムズが享受した2014年シーズンを想像してみてほしい。この時だけは、豊富なリソースとワークスエンジンを持ち、上位に継続的にチャレンジできるチームだったのだ。

 そのことを念頭に入れると、もしかしたらマクラーレンの本拠地、マクラーレン・テクノロジー・センターのトロフィー棚を清掃する人は少しスペースを開けなくてはならないかもしれない。2017年は、さらなるトロフィーが手招きされているのだから。