2016年09月23日 10:51 弁護士ドットコム
自転車を盗まれたことをきっかけに、会社に内緒で「スケートボード」で通勤をはじめたーー。そんな告白がネットの掲示板で話題となった。
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投稿者は、「緩やかな下りとかマジ気持ち良い」とすっかりスケボー通勤を気に入ったようだが、「歩行者からすると迷惑だからやめて欲しい」という声もあった。投稿者自身、「会社にばれないように早い時間に行くか遅刻ギリギリで通勤している」と述べており、後ろめたい面もあるようだ。
スケボーで公道を走ることは法的に問題があるのだろうか。交通トラブルをめぐる法律問題にくわしい阿部泰典弁護士に聞いた。
「道路交通法(道交法)76条4項3号は、『交通のひんぱんな道路において、球戯をし、ローラー・スケートをし、又はこれらに類する行為をすること』を禁止しています。スケートボードは、『これらに類する行為』に含まれると考えられています」
阿部弁護士はこのように述べる。「交通のひんぱんな道路」とは、どのような道路なのか。
「『交通のひんぱんな道路』とは、道路の『属性』として交通がひんぱんであることをいうのではなく、道路の『状態』のことだと理解されています。厳密な基準があるわけではありませんが、要は『そのとき道路が混雑しているかどうか』ということです。
同じ道路であっても、閑散としている時もあれば、混雑している時もあるでしょう。閑散としている状態の時は『交通のひんぱんな道路』にあたらないけれど、混雑している時は『交通のひんぱんな道路』に該当するということです。
そして、この『交通』には歩行者も含まれるので、歩行者が多数歩いている状況の歩道をスケードボードで通勤することは、(道交法)76条4項3号に違反することになります。
今回のケースでも、朝の通勤時間ということは、それなりの交通量があることが予想されます。場合によっては『交通のひんぱんな道路』にあたる可能性があるでしょう」
もし、歩行者や自動車と接触事故などを起こした場合、責任はどうなるのか。
「参考になる裁判例があります。これは、信号機のある交差点において、青信号にしたがったタクシーと、赤信号を無視したスケートボードが衝突したというケースです。
判決では、『交通のひんぱんな道路』をスケートボードで走行することは道路交通法76条4項3号で禁止されているとしたうえで、赤信号無視に加えて、当該道路をスケートボードで走行すること自体が禁止されていることも考慮しました。
事故の原因は専らスケートボードで走行していた者にあるとして、スケードボードで走行していた者に100%の過失を認めています(東京地裁平成24年7月20日)」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
阿部 泰典(あべ・やすのり)弁護士
平成7年4月 弁護士登録。平成14年4月 横浜パーク法律事務所開設。平成21年度 横浜弁護士会副会長。平成24年、25年度 横浜弁護士会法律相談センター運営委員会委員長、横浜弁護士会野球部監督
事務所名:横浜パーク法律事務所
事務所URL:http://www.yokohama-park-law.com/