F.C.C. TSR Honda 決勝レースは、風が強く肌寒い中でのレースとなった。ル・マン式のスタートで始まった第80回ボルドール24時間耐久レース。渡辺一馬はマシンのスタートで出遅れてしまい、予選4番手ながら、中盤の集団に飲み込まれる形で20番手まで順位を落としてしまった。
しかし、オープニングラップから積極的に順位を上げ、一馬自身が自分の担当スティント(走行枠)の間に9番手まで順位を回復した。
今回のライダー交代順は、戦略的に一馬→ダミアン→伊藤の順で進むことになっていた。次のダミアン、そして伊藤も交代して走行を続け、順位を5位まで挽回した。ガス欠で順位を落としていた#7のYAMAHAにかわされて、6位までポジションを落としながらもライダーたちは周回をかさねていく。
フリー走行から多かった赤旗中断だが、決勝レースでも都合4度のセーフティカーが介入した。最初のSCはルーティンでダミアンが入ってきた直後に赤旗が提示、その間にライダーから不具合が訴えられていた「シフトセンサー」を交換、ライダー交代した伊藤がピットロードエンドで止められてしまい、再開後には10番手まで順位が落ちてしまった。その後のSCカーの介入も乗り切り、6位のまま周回を重ねていく。
レースは深夜帯に入り、なおも周回を重ねて行く、上位陣のいくつかにトラブルが襲い、順位を落として行く中で、出来るだけ短くしたいピット作業において、フロント・リアのブレーキキャリパー交換などを敢えて行い、着実に完走できる態勢を整えた。
その上で、最も高い年齢である伊藤の疲労度を考慮し、自ら志願した形で一馬が2スティントを連続して担当することもあった。これは初めて実施、経験することだった。しかし、一馬は400周頃の2スティント=50数周を無難どころか、2分01秒台に入れる着実な走りで務めて見せた。時間は13時間を経過する頃(午前3時から4時)だ。気温は12~13度くらいまで下がり、強い風で体感温度はさらに低く感じる。
その後は伊藤の疲労度を慮ったスティントが展開されていく。夜が明け、休息も十分なスティントでは、ダミアン自身が憧れのレジェンドと語り、エントラント、主催者、ファンからも注目度の高い伊藤もキレのある走りを見せ、上位陣の脱落で一つ上がった5位という順位をキープする。
残り時間が6時間ほどとなり、今一度ライダーの状況を公正に見て、チェッカーまでの担当ライダーを見直した。その結果、チェッカーライダーが一馬となり、チームはポジションを着実に守り切る戦略で、見事5.791kmのポールリカールサーキットを674周走り抜き、5位でチェッカーを受けた。
12時間以上のレースでは、中間結果でのボーナスポイントがもらえる。24時間耐久レースでは、8時間と16時間のそれぞれ経過毎の1位~10位までの順位でボーナスポイントがチームに加算されるのだ。
今回の場合は。F.C.C. TSR Hondaの8時間経過時点の順位6位の5ポイント、16時間経過時点の5位の6ポイントに加え、24時間の結果である5位の21ポイント、以上を加算して32ポイントの獲得となった。チームランキングは5位である。
今季の最大の目標は、昨年までよりも一層実現見を増した鈴鹿8耐の優勝、そしてそれを2016/2017FIM世界耐久選手権(EWC)シリーズの最終戦として臨み、世界タイトル決定の場所とすることだ。これによりF.C.C. TSR Hondaは新たな時代を切り拓くつもりだ。その意味において、今回の開幕戦の5位完走は、今後のシリーズ戦に向けて、非常に充実度を増したものとなった。