いよいよ9月24~25日、宮城県のスポーツランドSUGOで全日本F3の最終ラウンドが開催される。今シーズンの全日本F3もいよいよ大詰めだが、チャンピオン争いの候補はヤン・マーデンボロー(B-MAX NDDP F3)、山下健太(ZENT TOM'S F312)、坪井翔(ZENT TOM'S F314)の3人に絞られている。
■中盤戦でポイントを積み重ねたマーデンボローに山下が迫る
2016年の全日本F3は、B-Max Racing team with NDDPがフォルクスワーゲンA41エンジンを全日本に初投入。TEAM TOM'Sとの戦いが展開されてきた。
4月の開幕ラウンド・鈴鹿では山下が2連勝を飾り、順調なスタートを切ったかに見えた。しかし、続く富士ラウンドでは開幕2ラウンドのみ参戦していた佐々木大樹(B-MAX NDDP F3)が連勝。フォルクスワーゲンエンジンが高速コースの富士でその威力を発揮する。
山下は岡山での第5戦を制するものの、その後は大量ポイントを重ねることができないレースが続いてしまう。特に富士、もてぎといったサーキットではエンジンパフォーマンスが影響し、苦戦を強いられてしまった。また、TEAM TOM'Sが得意としていた鈴鹿でマーデンボローと接触したことも痛手となった。
一方、ドライビングシミュレーター『グランツーリスモ』出身で話題となっていたマーデンボローは、開幕ラウンドの鈴鹿からポイントを積み重ね、時折取りこぼしもあったものの、第6戦岡山で優勝を飾るとパワーの優位を活かし富士、もてぎで合計3勝。山下を逆転しランキング首位に躍り出た。
ただ、マーデンボローは第7ラウンドの岡山では金曜専有走行でクラッシュした後リズムを失い、2レースでわずか3ポイントしか獲得できず。一方の山下は第13戦で8戦ぶりの勝利を飾り、一気にマーデンボローとの差を詰めた。
迎えるSUGOラウンドは、マーデンボローが88ポイント、山下が80ポイント。ふたりの差は8ポイントしかない。このラウンドは第15戦/第16戦/第17戦と3レースが開催される予定で、その差を一気に縮めることも、広げることも可能だ。
そして、タイトルの可能性があるのがもうひとり。2015年のFIA-F4チャンピオンで、今季全日本F3デビューの坪井翔(ZENT TOM'S F314)だ。坪井は第1戦で3位表彰台を獲得すると、スタート直前にトラブルに見舞われた第8戦鈴鹿、そして4位となった第14戦岡山をのぞきすべて表彰台を獲得しており、抜群の安定感を誇る。最終ラウンドを迎える段階で、坪井のポイントは71。マーデンボローとの差は17ポイントだ。
■晴れか、雨か。天候がタイトル争いを左右!?
迎えるSUGOラウンドは、コース特性としてはTEAM TOM'Sに向いているとも言われている。ただ、その差は非常に小さいはずで、予選から激しい戦いが展開されることになりそうだ。
このラウンドは木曜から専有走行があったが、22日午後2時からの走行はあいにくのウエット。しかも雨量が増えていく展開で、序盤に出たタイムがそのままリザルトに結びついたような形。首位は坪井(1分30秒067)、マーデンボローは4番手(1分30秒810)、山下は6番手(1分31秒270)だった。しかも、開始から1時間50分というところで牧野任祐(TODA FIGHTEX)が最終コーナーでクラッシュした段階で出た赤旗のタイミングで、荒天により早めにセッションが終了している。
「今日はいろいろなことを試してきたけど、ちょっと雨量が多すぎたね。いくつかパーツを試したので、金曜を楽しみにしているよ」というのはマーデンボローだ。ウエットを得意とするドライバーだが、この日はさすがに「攻め過ぎないようにした」という。
「SUGOは大好きだよ。スーパーGTでも走っているし、小さなサーキットだけどGTでも楽しめるくらいだから、F3では思いきりサーキットをエンジョイできる。今回F3は最終戦だけど、セッションごとに進歩を積み重ねて、ベストを尽くすつもりだよ」
「最後にどんな結果になるのか、楽しみだね」
一方、山下は「自力で3連勝して、フルポイントを獲得してカッコ良くタイトルを獲りたいですけどね(笑)」と語りつつも、天候は「晴れないとダメです」という。山下はもともとウエットは得意だったが、F3に乗るようになってから、なぜかフィーリングが良くないのだとか。
「天気によって今後の人生が変わると言ってもいいかもしれません。天気が悪いと就職活動しないといけないかも(苦笑)。今のところ晴れだと思うので、3連勝したいです」
そして、ランキング3位の坪井はタイトル争いよりも「まずは1勝したいです」と今季まだ掴めていない勝利を願う。
「タイトル争いはそこまで意識していないです。まずは勝つことで、3連勝すれば何かが起きるかもしれないという気持ちでいます」
■チームメイトも重要なファクター。千代が復帰
また、タイトル争いに重要なファクターとなりそうなのが、それぞれのチームメイトだ。山下にとっては坪井がチームメイトとなるが、坪井は「今のところそういうことは言われていないです。どうなるかは分かりませんが、(チームメイトをサポートするような)指示を言われるほどポイント差をつけられないようにしたいです」という。
一方、マーデンボローのチームメイトは、今回が復帰戦となる千代勝正(B-MAX NDDP F3)だ。走行後、千代に話を聞くと「1カ月半ぶりですが、今回木曜に走行があったのは助かりましたね。雨でしたし、いい具合にリハビリできました」という。
「チームからはヤンのことをなるべくサポートして欲しいとは言われていますが、自分のレースもありますし、何より自分が勝ちたいと思います。チームが2台そろって上位に入れば、相手にポイントを獲らせないことができますからね」
「レースなので何が起きるかは分かりませんが、チームメイトのサポートもしつつ、自分のレースをしっかり戦いたいと思います」
今回のSUGOラウンドは、9月24日(土)に第15戦が、そして25日(日)に第16戦と第17戦が開催される。F3-Nでも、今回からオートバックスカラーをまとう片山義章(Petit LM Racing)がタイトルにリーチをかけている。
週末どんなドラマが展開されるのか。そして日曜の午後、笑顔でトロフィーを掲げるのは誰になるだろうか……!?