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ハロプロの真髄は“ハロプロ研修生”にあり? 彼女たちのオリジナルアルバムから考える

2016年09月22日 16:31  リアルサウンド

リアルサウンド

ハロプロ研修生『Let's say “Hello!”』

 アイドル界の老舗として、いまだ根強い存在感を放つハロー!プロジェクト。現在、他の陣営やグループでの活躍を見せるメンバーにおいても、ハロプロに憧れて「アイドルを目指した」という常套句は、よく聞かれるものでもある。


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 ひとたび現場へ足を運べば、歌やダンスといったパフォーマンス、ライブそのものが“エンターテインメント”であると納得させられるのがハロプロの強み。そして、その根幹にあるのは「ハロプロ研修生」という育成組織の存在だ。

 前身は、2004年4月から告知されたオーディションにより選ばれたメンバーによるハロプロエッグ。現役グループのメンバーとして、アンジュルムのリーダー・和田彩花、そして、ハロプロと同じくアップフロント系列のグループであるチャオ ベッラ チンクエッティやアップアップガールズ(仮)のメンバーらを輩出したことでも知られている。

 その後、ハロプロエッグは2010年に方針の変更に伴う各メンバーの相次ぐ研修課程終了と共に改組され、翌2011年11月にハロプロ研修生のオーディション開催を告知。同年末にエッグからの改名が発表された。

 2016年9月現在、通算で26期メンバーまでが所属するハロプロ研修生。今年7月には新たに「ハロプロ研修生北海道」もスタートしたが、今なぜ大きなステージへ憧れる“アイドルの卵”たちに注目すべきなのか。それは、現在のハロプロをけん引するメンバーのルーツであるからだ。

 とりわけ2014年後半から、ハロプロの変化は著しい。2014年9月には、モーニング娘。'14(当時)に12期メンバーが加入。11月には嗣永桃子をプレイングマネージャーに据えたカントリー・ガールズが結成された。また、直前の10月にはスマイレージに3名の新メンバーが加入し、同年12月にアンジュルムへ改名。さらに、2015年1月にはこぶしファクトリーが結成された。


 そして、今月4日に行われたハロプロ研修生による定期公演『Hello! Project 研修生発表会 2016 9月 ~SINGING!~』で、2015年4月に結成されたつばきファクトリーが、来年1月にメジャーデビューすることも発表された。

 じつは、これらの変化の背景ではとにかく「ハロプロ研修生からの昇格」が目立った。それならばメンバーの過去を知りたいというのは、アイドルファンなら自然と浮かび上がる感情であるが、その足がかりとなるのが、今なお定期公演などで歌い継がれる曲が詰まったハロプロ研修生のアルバム『Let's say “Hello!”』である。

 公式の発売日は2015年2月18日。そのジャケットを見るだけでも、当時の初々しさがただよう現役メンバーの存在が目立つ。以下、ジャケットに写る現役メンバーを列挙してみる。


◎モーニング娘。'16
12期メンバー/牧野真莉愛、羽賀朱音


◎アンジュルム
3期メンバー/室田瑞希、相川茉穂、佐々木莉佳子


◎カントリー・ガールズ
初期メンバー/山木梨沙、稲場愛香(2016年8月に卒業)
2期メンバー/船木結


◎こぶしファクトリー
藤井梨央、野村みな美、小川麗奈、浜浦彩乃、田口夏実、和田桜子


◎つばきファクトリー
山岸理子、新沼希空、岸本ゆめの

 また、上記メンバー以外にも、ハロプロ研修生による年に一度の恒例イベント『春の公開実力診断テスト』で、ファン投票によるベストパフォーマンス賞に輝いた段原瑠々、加賀楓ら25名の歴代メンバーが映るのも印象深い。


 さらに、曲中の歌声からも各メンバーのたどってきた“歩み“を感じ取れるが、本稿ではとくに秀逸だった5曲から、彼女たちについて改めて考えてみたい。

■1トラック目「Say! Hello!」


 いわば“出囃子”的な曲である。ここ最近の公演では「Hello!まっさらの自分」という曲に置き換わりつつある印象もあるが、アルバムの1トラック目としても、公演の1曲目としても幕開けにふさわしい。メンバー全員によるユニゾンが目立つ曲で、アイドルとしても人としても、未来に向け成長途中のハロプロ研修生たちが“人生”を軽快に語るという壮大なテーマには圧巻。曲中のフレーズにもあるが、地球に思いを馳せるというのも他のハロプロ楽曲でも時折みられる“つんく♂節”を彷彿とさせる。

■3トラック目「Crying」


 なぜか泣ける。タイトルに込められた通りの思惑にがっつりハマっている感じだが、思春期の淡い思い出をとにかくふんだんに盛り込んだ曲である。曲中のフレーズ「実力テスト」は、研修生が日頃の活動の集大成として年に1度、歌やダンス、衣装までも個人でプロデュースして挑む『春の実力診断テスト』を思わせることからニヤッとしてしまう。

■6トラック目「恋したい新党」


 現場では、千手観音を模した振り付けがいやがおうにも記憶に焼き付く。知人の女性ファンによれば「どうしてつんく♂さんは女の気持ちがこうも分かるんだろう」と、知らしめてくれる曲だという。少女というよりは現実の恋に悩む女性が主人公であるような曲だが、研修生の歌声を聴くと、色恋にわき目もふらず、アイドルに青春をかける彼女たちの努力と決意がにじみ出てくる。

■8トラック目「おへその国からこんにちは」


 のっけから「何じゃこりゃ!?」と目を引くタイトルは、もはや“つんく♂イズム”というほかない。音源やMVではこぶしファクトリーの浜浦彩乃が放つ第一声の“どなり”、「なあ、みんなへそんとこよろしく!」が忘れられなくなる。日頃から抱えるストレスや今日あった嫌なコトなどすべて吹き飛ばしてくれる曲だが、おへその国がどこにあるかは、推して知るべし。考えるのではなく、感じる以外にない。

■9トラック目「彼女になりたいっ!!!」


 ジャケットには映っていないものの、今年9月11日にメジャーデビューから3周年を迎えたJuice=Juiceの宮本佳林の歌声が目立つ。曲中で<東京はカワイ子 いっぱいですが>とあるが、モーニング娘。'16の「Tokyoという片隅」もしかりで、つんく♂はなぜ、時折“東京”へのジェラシーがにじみ出るのだろうという疑問もひしひしとわいてくる。なお、曲自体の歴史が最も古く、ハロプロ研修生初のオリジナル曲として2012年9月23日の『スマイレージ ライブツアー 2012秋 ~ちょいカワ番長~』の初日に初披露された。いわばハロプロ研修生の“真の”ルーツとなる1曲である。
 
 さて、かいつまんだ形とはなったが一部の楽曲を紹介してきた。音源はもちろん、何よりも実際の公演を通して、彼女たちの成長を追えるというのはハロプロ研修生ならではの魅力。加えて特筆すべきなのは、歌やダンス、MCといったパフォーマンスの向上のみならず、グループへの加入や昇格もあいまって、ファンもメンバー間にみられるある種の競争によりいっそう熱くなれるという部分である。

 ハロプロ各グループの合同コンサートである通称・ハロコンや先輩たちへの帯同、そして、目玉となる年に1度の『春の実力診断テスト』や定期公演など、その活躍にふれられる機会も比較的多い。ハロプロとは何か、ハロプロ研修生の公演はその真髄を感じさせてくれる。(カネコシュウヘイ)