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Crossfaithがオーガナイズした“濃厚”イベント 『ACROSS THE FUTURE 2016』を観た

2016年09月22日 13:01  リアルサウンド

リアルサウンド

Photo by cazrowAoki

 Crossfaithがオーガナイズするライブイベント『ACROSS THE FUTURE 2016』が9月6日から10日にかけて、東名阪4会場にて実施された。2014年からスタートしたこのイベントは「未来の向こう側」をテーマに、ジャンルの壁や国境、国籍をも超越することを目指したもの。今年2月に続いての開催となる今回は日本からNOISEMAKER、アメリカからBeartooth、イギリスからEnter Shikariという強豪を迎え、9月6日に東京・TSUTAYA O-EAST、8日に大阪・BIG CAT、9日に愛知・名古屋BOTTOM LINE、そして追加公演として10日に東京・赤坂BLITZで行なわれ、全公演ソールドアウトとなった。


 私はツアーファイナルとなった追加公演の赤坂BLITZに足を運んだのだが、冒頭からエンディングまでとにかく濃厚で、血湧き肉躍る4時間を堪能することができた。


 トップバッターは北海道出身の4人組バンド、NOISEMAKER。オープニングナンバー「Heads and Tails」から観客のシンガロングが発生するほどの盛り上がりを見せ、会場の熱気を一気に高めていく。フロアをダンスホールへと一変させるグルーヴィーなリズム隊と、変幻自在のサウンドメイキングで楽曲を彩るギターが織りなすアンサンブルは絶妙の一言で、そこにAG(Vo)のボーカルが乗ることで唯一無二の個性が生まれていく。MCでは「ロック好きな人、全員まとめて面倒みるからかかってこいよ!」と観客を煽ると、フロアにはクラウドサーファーが続出。ラストには同期を多用したアップテンポの新曲「Something New」も飛び出し、一番手らしい盛り上げ方で観客を掌握してみせた。


 2番目に登場したのは、Crossfaithとも親交が深いBeartooth。今回の出演バンドの中ではもっとも日本のラウドロック的なノリに近いサウンドの持ち主で、昨年末から間を置かずの再来日ということもあって、序盤からカオティックな盛り上がりを見せる。フロアには早い段階から大きなサークルピットが発生し、気づけば上半身裸の外国人客の姿もちらほら。それもあって、どこか海外的なノリが強まったこのタームでは、バンドの熱演に比例するように観客の暴れっぷりも激しさを増していく。ケイリブ(Vo)は曲中こそ激しいヘッドバンギングを繰り返して存在感を誇示するも、MCでは非常にフレンドリーな接し方で好感度も高い。そうやって上手にコニュニケーションが取れるだけあり、観客からの信頼度も非常も熱いものではないだろうかとライブを観て感じた。ライブ終盤に入るとケイリブは「今まで見たことないぐらいにデカいサークルピットを作ってくれ!」と観客に懇願。そしてラストナンバーとして「One life, one decision」のコール&レスポンスが気持ちいい「Body Bag」を披露すると、途中からCrossfaithのKoieがステージに飛び入り。最新アルバム『Aggressive』のボーナストラックと同じく、ケイリブ&Koieのツインボーカルが楽しめる貴重な機会を前に、観客の盛り上がりは最高潮に達した。


 Beartoothの大熱演に続いてステージに現れたのは、今回の出演者の中ではもっともキャリアの長いEnter Shikari。ラウドロックというよりも、ヘヴィサウンドに懐かしのニューレイヴ感をミックスした独自のサウンドは、全4組中もっとも薄いものかもしれない。しかしEnter Shikariの4人がステージに立っただけで、会場の雰囲気は一変するのだから不思議なものだ。ダンサブルなビートが心地よいオープニングナンバー「Destabilise」では、演奏がブレイクに突入すると同時にメンバーの動きも止まってしまうなど、視覚的にも楽しませる要素が満載。中でもフロントマンのラウ(Vo, Synth)の一挙手一投足には目を見張るものがあり、彼の独特なダンスに釘付けになった人も多かったのではないだろうか。かと思えば、MCでは他のメンバーが日本語で挨拶をするなど、日本贔屓な面もアピール。最新作『The Mindsweep』からの楽曲のみならず、初期の代表曲「Sorry, You're Not A Winner」なども飛び出し、気づけばフロアにはいくつものサークルピットができているなど先輩格として確固たる存在感を見せつけた。


 3バンドの出番が終わると、会場内には20分後にCrossfaithのライブが始まることが英語でアナウンスされる。そう、このようにして自身の世界へと誘おうとするこのアナウンスの時点からCrossfaithのステージはすでに始まっているのだ。セッティング中に流れるDJ MIXにもバンドのこだわりが見え隠れし、ラウドなものからダンサブルな楽曲まで、彼らのルーツが垣間見られる選曲となっていた。


 カウントダウンが0まで到達すると、会場内にはSE「Prelude」が流れ始める。メンバーがひとり、またひとりとステージに現れ、最後にKoieがステージに立ったところでバンドは「We Are The Future」からライブをスタートさせた。Koieの「『ACROSS THE FUTURE』最終日、ぶっ壊していくぞ!」を合図に、フロアには大きなサークルピットが発生。「死ぬ気で来いよ!」の言葉どおり、観客はモッシュやクラウドサーフなど思い思いのアクションでバンドの熱演に応えていく。そしてダンサブルな「Devil's Party」では会場天井に設置されたミラーボールが回転し、フロアにはピョンピョン飛び跳ねるキッズたちの姿が多数見受けられた。


 「Ghost In The Mirror」ではスタジオテイク同様、Beartoothのケイリブを招き入れ、先の「BODY BAG」にも負けないほどの熱演を繰り広げる。続くMCではKoieが「今回の『ACROSS THE FUTURE』はお前らの熱量を間近で味わいたくて、あえて小さいライブハウスを選びました」と告白。その言葉どおり、以降もバンドは観客の熱量をすぐそばで感じながら、最新シングル曲「Rx Overdrive」などアグレッシヴな楽曲を連発していく。ライブ中盤ではTeru(Programming, Vision)とTatsuya(Dr)のプレイをフィーチャーした「DJ & DRUM SOLO」を挟み、THE PRODIGYのカバー「Omen」で最初のクライマックスを迎えた。


 「このイベント、最終的には月まで持っていきたいね!」と豪語するKoieは、ある曲の前に必ず見せる「合わせた両手を、空間をねじ開けるように左右に広げる」ジェスチャーをし始め、このアクションに次の曲を察知した観客たちは自らフロア中央に広い空間を作る。こうして始まった「Countdown To Hell」では観客はフロアのところどころに設置された鉄柵をモノともせず、いつも通りに“ウォール・オブ・デス”を繰り広げてみせた。


 アンコールではドラマチックなSE「System X」からそのまま、最新アルバムのタイトルトラック「Xeno」へと突入。1曲入魂と言わんばかりに、メンバーも観客もありったけの力をこの曲に込めて暴れ、最高の形で大団円を迎えた。


 Crossfaithのライブが終了すると、ステージ上にはこの日の出演バンド4組が勢ぞろい。来場者含め全員で記念撮影を始めるのだが、そのBGMが前日の移動バスで流れて盛り上がったというEARTH, WIND & FIRE「September」に切り替わると、一部メンバーのテンションが急変。笑顔の絶えないリラックスムードで『ACROSS THE FUTURE 2016』最終公演は終了した。


 このイベントの終盤、「来年、今までやってきたところより大きな会場でツアーをします!」と宣言したCrossfaith。後日、それが9月14日からスタートした全国ツアー『New Age Warriors Tour』のファイナルシリーズとして、来年2017年1~2月にワンマンライブツアーとして実施されることが明らかになった。ツアーファイナルとなる関東圏でのライブは、2月4日に千葉・幕張メッセイベントホールにて開催。間違いなく、これが彼らにとって日本での過去最大規模ワンマンライブとなる。海外ではすでに絶大な人気を誇るCrossfaithが、ここ日本でどこまで高い支持を集めることになるのか。それは『New Age Warriors Tour』を通じて明確な結果を出してくれることだろう。


 そしてKoieが「日本の良さと、俺たちが海外で見てきたものの良さをミックスし、マッシュアップした」と説明する『ACROSS THE FUTURE』も、今後さらにジャンルレス、ボーダレスなイベントになっていくことは間違いない。Crossfaithが国内外でさらにビッグになればなるほど、このイベントの内容もよりカオティックになるのではないか。そう考えると、本当にこの先が楽しみでならない。(文=西廣智一)