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「ネトゲ中毒」の専業主婦、家事をサボり夜通し熱中…離婚されても仕方ない?

2016年09月22日 09:32  弁護士ドットコム

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離婚するきっかけは様々です。「結婚して8年が経った頃、妻がネットゲームにハマったんです。それから僕たちの結婚生活はひどいものに変わった」。こう語るのは、神奈川県内のIT企業に勤めるサトシさん(37)です。それまで、小さな喧嘩はあったものの、専業主婦の妻マナさん(36)との結婚生活はいたって平和でした。


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しかし妻がネットゲーム中毒になってから、平和な家庭が一変したのです。「友達に勧められてネットゲームを始めたようですが、すぐさまゲームの虜になって、ヘッドホンを使って音声チャットをしながらプレイするほどのめり込んでいきました」。


それまでゲームにハマったことはなかったそうです。しかし、いつの頃からか「僕が寝る前もゲームをしていて、朝起きてもまだやっていた」といい、「不眠不休」で遊び続けるまでに…。


その結果、家事の手抜きも目につくようになりました。サトシさんが仕事から帰り、「今日の夕食は?」と尋ねても、「今いいところだからちょっと待ってて」と、ゲームから離れようとしません。やっと止めたかと思えば、惣菜やインスタント食品を面倒くさそうに食卓に並べ、目にもとまらぬ速さでゲームに戻っていく。休日、「どこか出かけようよ」と誘っても、「私が抜けちゃダメなの!」とゲームを最優先。次第に夫婦の会話もなくなっていきました。


そしてある朝、サトシさんは衝撃的な一言を耳にします。いつものように夜通しリビングでゲームをしていたマナさんが、「『やばい! 旦那が起きてくる』って、チャットに向かって言ったんですよ。チャット仲間が『寝たフリすればいいよ』と返すと、『そうだね』って妻も頷いて。それを聞いてしまった時、もうこの結婚生活に意味はないなと思ったんです」。


サトシさんが離婚を切り出すと、マナさんはあっさりと別居に同意し、半年後、もめることもなく離婚が成立。約9年間の結婚生活が終わりました。2人の間に子どもはいません。


実際にはすんなりと離婚が成立しましたが、サトシさんは「もし相手が離婚に同意してくれていなかったら、結構面倒なことになっていたと思う」と振り返ります。配偶者がオンラインゲームにハマり、夫婦関係が冷えきった場合に、離婚できるのでしょうか? 東山俊弁護士に聞きました。


 ●「夫婦関係が崩壊したといえるか」がポイント


夫婦間の話し合いや調停でも離婚の合意ができない場合は、裁判を起こすことになります。裁判で離婚が認められるためには、法律で定められた5つの離婚理由のどれかにあてはまらなければなりません(民法770条)。


今回のようなオンラインゲーム中毒は離婚理由になるのでしょうか。ポイントは、配偶者がゲームにはまっていることが、法律で定められた離婚理由の1つである「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)といえるかどうかです。


今回の場合は、妻がオンラインゲームばかりしていたようですが、同居していて、少ないといっても会話が全くないわけでもないようです。数年間別居していれば、離婚が認められる場合がありますが、今回は同居していますので、事情が大きく異なります。


妻がネットゲームにはまった期間もそれほど長くはないようですし、「婚姻を継続し難い重大な事由」にはあたらず、離婚が認められることはないでしょう。


過去の判例では、ギャンブル依存症の場合について、多額の借金を負ったことや生活費も十分に家に入れなくなったことなどを根拠に、離婚を認めたものもあります。このように、「依存症」になったかどうかではなく、それをきっかけに夫婦関係が崩壊したという事情が認められれば、離婚が認められることはありえます。


たとえば、オンラインゲームで課金をして多額の浪費をしたような場合や、ゲームに対する考え方の違いから喧嘩が絶えないような場合は、ゲームへの依存が原因で夫婦関係が崩壊したと考えられるでしょう。


また、子供がマネをするなどの悪影響がある場合や、ゲームに没頭してコミュニケーションを取ること自体を拒否しているような場合、さらに、家事の分担を完全に拒否しているような場合も、程度によっては、離婚が認められることもあるでしょう。




【取材協力弁護士】
東山 俊(ひがしやま・しゅん)弁護士
東山法律事務所所長。大阪弁護士会所属。家事事件はもちろん、一般民事事件や刑事事件も幅広く取り扱っている。
事務所名:東山法律事務所
事務所URL:http://www.higashiyama-law.com/