インディカー・シリーズは今年も9月という早い時期にシーズン閉幕を迎えた。ファイナル開催地は昨年までと同様にカリフォルニアワインの産地としても知られるサンフランシスコ郊外のソノマだ。
インディカー参戦7シーズン目の佐藤琢磨(AJフォイト)は、予選ベストが第14戦ポコノでの3位、決勝でのトップリザルトは第3戦ロングビーチと第12戦トロントでの5位というパフォーマンスにより、ポイントランキング18番手につけて最終戦ゴープロ・グランプリ・オブ・ソノマを迎えた。
■順調なスタートを切るも……
レースの1週間前にはライバル勢と同様に1日間だけだがテストを行い、琢磨とフォイト陣営は体制を整えてソノマ入りした。今年も最終戦では通常の倍のポイントが与えられるルールとなっていることから、表彰台フィニッシュ、そしてランキングでの大ジャンプを目指してレースウィークエンドを迎えた。サンフランシスコ湾沿いのエリアだけに朝方に霧が出ることもあったが、週末を通して日中はカリフォルニアならではの快適な天候に恵まれた。
金曜日のプラクティス1、ABCサプライ/ホンダを駆る琢磨はスムーズなスタートを切った。テストでベースラインが出ていたマシンは、新たなセッティングも試みながら8番につけるラップをマーク、好感触を得た。
しかし、このコースはタイヤにかかる負担が大きく、昨年までのデータから考えると、レースでソフトコンパウンドのレッドタイヤが使えるのは1スティントのみ。安全を見ればブラックタイヤを5セット残しておきたいところだが、ファイアストンから供給されるのは8セットと少ない。これでも昨年までより1セット多くされているのだが、タイヤのマネジメントがとても難しい週末となっていた。
プラクティス2でのセッティング向上は思うように果たせず17番手。土曜のプラクティス3は12番手だった。プラクティス2よりはマシンは良くなっていたが、予選で上位に進出するにはあともう一段のジャンプが必要な状況に置かれていた。
予選は2グループに分かれてのセグメント1(Q1)、両グループの上位6名=12名で争われるセグメント2(Q2)、そして最速6人=ファイアストンファスト6によるファイナル・セグメント(Q3)というシステムだったが、1グループ目で走った琢磨は8番手だったためにQ2進出を果たせず。スターティンググリッドは15番手と決まった。5戦連続のQ1敗退。そして、今シーズンはとうとう一度もQ3を戦うことができなかった。
■作戦は失敗に……
カリフォルニアの強い日差しが照りつけ、週末の3日間でもっとも暑いコンディションとなったレースデイ、琢磨はファイナルプラクティスでレッドとブラックの両タイヤで走行。新品のレッド装着で決勝に臨むことを決めた。短いスティントでブラックに切り替え、安定した速いラップを積み重ねて上位との差を縮め、さらにはフルコースコーションなどのレース展開を味方につけようという作戦だ。
14番グリッドからのスタート、琢磨はトラブルに巻き込まれることなく、ポジションを上げて1周目を終えた。レースは85周で、ピットウィンドウは20~22周目。琢磨はレース前の予定では早いタイミングで最初のピットストップを行う予定だったが、それは11周目へと遅らせられた。そして、この作戦が結果から見ると正解ではなかった。
今回のレースで出されたフルコース・コーションはウィル・パワー(チーム・ペンスキー)のギヤボックストラブルによるもの1回だけ。彼がスロー走行をしている間に上位陣全員がピットストップを行い、その直後にイエローが出された。ここでピットに入らなかったことで琢磨のポジションは6番手まで大きくジャンプアップしたが、それは見せかけだけのもの。トップグループよりも一度多いピットストップをこなしてゴールを目指さざるを得なくなり、14位でのゴールとなった。
琢磨はレースを終えると、「レース展開を味方につけることができなかった」と悔しがった。
「でも、そういうレースを今年は何度か戦えた。今回またそうなることを期待したけれど、そうはならなかった。マシンは自分たちの持っているものの中では高いレベルに仕上げることができていたと思う。でも、ライバルをオーバーテイクするために重要なコーナーでのスピードが不足していたのと、前のマシンに近づくとハンドリングがオーバーステアになる症状に悩まされ、なかなかパスをすることができなかった」
「ピットストップは本当に素晴らしく速く、その点ではクルーたちが本当に頑張ってくれていたが、目指していた上位、あるいはシングルフィニッシュはできなかった」と語った。
■苦しいシーズンとなった2016年
2016年シーズンを振り返っては、「今年は苦しいシーズンになった。シーズンの序盤戦は良く、ホンダ勢を引っ張っていくことさえできていたが、何度も不運に見舞われた。シーズン後半戦の伸びが少ない点も自分たちの課題。それでも、マシンを向上させるという点では、シーズンを通してたくさんのトライを重ね、本当に多くのことを学ぶことができた。成績に現れている以上の進歩を僕らのチームは果たしたと感じている」と琢磨は話した。
シーズン全戦が終了し、琢磨のランキングは最終戦前よりひとつ上がった17位となった。ベストフィニッシュはロングビーチとトロントでの5位。トップ10フィニッシュはそれらも含めて5回。予選の成績は、ポコノでの3位が最上位で、テキサスでも4位に食い込んだ。決勝は相変わらずストリートで強く、予選は高速タイプのオーバルにおけるスピードアップが達成されたシーズンとなっていた。