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石井杏奈が映画・ドラマに引っ張りだこの理由ーー『四月は君の嘘』など出演作から探る

2016年09月21日 10:21  リアルサウンド

リアルサウンド

(c)2016映画「四月は君の嘘」製作委員会 (c)新川直司/講談社

 女優・石井杏奈の存在感が増している——。先日最終回を迎えた連続ドラマ『仰げば尊し』では弱小吹奏楽部を引っ張る部長・有馬渚を、現在公開中の映画『四月は君の嘘』では、広瀬すず演じる主人公・宮園かをりの親友ながら、同じ男性を好きになってしまう高校生・澤部椿に扮するなど、映画・ドラマで引っ張りだこだ。


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 近年、女優としての活動が目立つ石井だが、小学5年生の時に出場したダンス大会でスカウトされ、2011年に“E-girls”のパフォーマーとしてデビューを果たす。子供の頃から芸能界に興味があったという石井だが、当時は“芸能人=女優”だと思っていたとインタビューで語っているように、元々芝居という仕事への憧れが強かった。


 2012年にドラマ『私立バカレア高校』で女優デビューを果たすと、2015年に公開された映画『ソロモンの偽証』で物語の重要な鍵を握る高校生・三宅樹理を演じ注目を集めた。この役はいじめに対して二面性を持つ非常に繊細な役柄だったが、目線や表情、動作で内に秘める闇を表現。成島出監督いわく「頭で考えた芝居ではない」と石井を評したが、本人も「繰り返される稽古で樹理という人物をつかんだ」と発言していた。


 続いて初主演を果たした映画『ガールズ・ステップ』では、クラスで地味な存在で“ジミーズ”と揶揄されていたメンバーたちと共にダンス選手権に出場しようと奮闘する女子高生を好演。こちらは『ソロモンの偽証』とは一転、得意のダンスで躍動感溢れる演技をみせたが、『ソロモンの偽証』と共通するのが「メンバーたちとのダンスレッスンによって役柄をつかんだ」ということ。石井は『ソロモンの偽証』と『ガールズ・ステップ』により第58回ブルーリボン賞新人賞を受賞している。


 役柄理解のための準備はしっかりしているが、頭でがんじがらめに考えるのではなく、その場の雰囲気や相手との距離感で役に入っていく姿勢。自身も「私の芝居によって、受ける相手のお芝居にも影響が出てくる」という自覚があり、臨機応変に柔軟性を持って臨むことの大切さを理解している。『ガールズ・ステップ』や『仰げば尊し』、『四月は君の嘘』など、しっかりと相手に向きあったときに見せる表情や視線、感情が爆発する時の存在感にはハッとさせられることが多い。


 また、現在の石井の魅力は「画面に映った時の存在感と、どんな色にでも染まれる順応性。それと何より動きのあるシーンでの表情がいい」と映画プロデューサーは語っていた。セリフ回しや「どう魅せるか」というテクニックは、経験を積んでいくことにより大きく変化していくのだろうが、こうした特徴は自身の持つ潜在能力によるものが大きい。さらに動きのあるシーンが魅力的という部分では、元々石井は“E-girls”のパフォーマーとして、動きで感情を表現することは得意としており彼女の大きな特徴なのかもしれない。


 今後も、昨年の東京国際映画祭・日本映画スプラッシュで上映された映画『スプリング、ハズ、カム』(2017年公開予定)で人気落語家・柳家喬太郎の娘役を演じるほか、『たたら侍』(2017年公開予定)では時代劇に挑戦するなど、出演作が続く。「もっとお芝居を追及していきたい」と志を高く女優業に挑む石井。今後の更なる飛躍が期待される若手注目女優だ。(磯部正和)