トップへ

関ジャニ∞、冠番組好調で充実期へ 『クロニクル』と『関ジャム』から“強み”を探る

2016年09月21日 07:01  リアルサウンド

リアルサウンド

(C)タナカケンイチ

 最近、冠番組の充実ぶりが個人的に目を引くのが関ジャニ∞だ。


 現在、彼らには東京キー局が制作するレギュラーの冠番組が二つある。ともに2015年5月にスタートしたので、1年3カ月余りが経ったことになる。


 まず『関ジャニ∞クロニクル』(フジテレビ系)(以下『クロニクル』と表記)は、まさにバラエティらしいバラエティ番組である。


 例えば、ゲストを交えて関ジャニ∞のメンバーが室内セットのなかでドッジボールをする「いきなりドッチ」、またメンバーがロケに出てその街のギャップのある人を探す「なのにさんを探せ」、また各自があらかじめ選んだ昔話の役柄が他のメンバーと被ってもストーリーを成立させなければならない「なんとか成立させろ記者会見」など企画内容も実に多彩だ。


 こうしてみると、「いきなりドッチ」では心理戦とリアクション、「なのにさんを探せ」では一般の素人との絡み、また「なんとか成立させろ記者会見」ではアドリブと、それぞれ要求される面白さは違う。だが、それを関ジャニ∞のメンバーは当たり前のようにこなしていく。要するに、バラエティ能力が高いのだ。


 そこにはやはり、デビュー前から培ってきた経験値が物を言っているだろう。


 その点、「関西」出身であることが、いまの彼らにとってはプラスに働いているはずだ。吉本や松竹の例を挙げるまでもなく、関西には昔から東京と異なる独自のバラエティ文化、お笑い文化がある。現在も『関ジャニ∞のジャニ勉』(関西テレビ制作)が長寿番組として続いているところは、彼らの原点がそうした文化にあることを再確認させてくれる。


 実際、それぞれのキャラクターを踏まえた呼吸ぴったりのフリートークなどに、そうした経験は確実に生かされている。


 横山裕や村上信五などは、ソロとしてもバラエティ出演が多く、番組を仕切るMCとしての経験も豊富。そこに渋谷すばる、丸山隆平、安田章大というそれぞれ独特の個性を持ち、そこがまたツッコミどころでもあるメンバーが絡んでいく。また、錦戸亮や大倉忠義は、ソロとしては俳優としての活動が多いが、こうしたグループの番組では「ボケとツッコミ」的なコミュニケーションを時には天然っぽく、時にはクールに見せてくれて違和感がない。しかもこうしたやりとりを7人という多人数で無理なくスムーズに成立させているところに、グループとしての関ジャニ∞の底力と成熟が感じられる。


 一方、『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)(以下『関ジャム』と表記)では、関ジャニ∞の持つ音楽的部分を見ることができる。


 番組は、毎回一組のミュージシャンを招いて、その人やグループの音楽を掘り下げていくのが基本だ。1970年代、80年代から活躍しているベテランから次代を担うと目される新進ミュージシャンまで、ゲストの幅は広い。また、「ミュージカル」のようにある分野がテーマになることもあれば、「J-POP検定」のようなクイズ形式の回もある。


 トーク部分の関ジャニ∞は、MCあるいはひな壇の立場として番組を進行し、盛り上げていく。これも彼らのバラエティ能力が発揮されて楽しいのだが、この番組ならではという意味では、やはり彼らとゲストのジャムセッションに注目したい。


 ゲストミュージシャンの代表曲や名曲を番組用にアレンジし、関ジャニ∞メンバーがゲストとともに楽器を演奏して歌うこのコーナー、ポップスやロックからフォーク、ときには演歌まであらゆるジャンルをカバーする。


 とは言え、美空ひばりの『お祭りマンボ』をリメイクした『お祭り忍者』(1990)でデビューした忍者の例もあるように、最新の音楽トレンドを取り込むだけでなく、歌謡曲や演歌へのリスペクトもジャニーズの音楽をかたちづくっている一面だ。関ジャニ∞自体、デビュー曲が『浪花いろは節』(2004)という歌謡曲テイストにあふれるものであったことを覚えている方も多いだろう。ジャニーズの伝統を正当に受け継いでいる関ジャニ∞は、こうした音楽番組に実は適役なのである。


 『関ジャム』という番組そのものに関して言えば、KinKi Kidsがかつてやっていた『LOVE LOVE あいしてる』『堂本兄弟』『新堂本兄弟』(フジテレビ系)のラインを継承しているという見方ができるだろう。やはりこうした音楽中心の冠番組の歴史は途切れさせてほしくないものだ。またジャニーズということを離れても、近年テレビの音楽番組全般が苦戦を強いられている現状を考えれば、貴重な番組のひとつであることは間違いない。


 さて、こうしてそれぞれの番組にふれてみて改めて思うのは、『クロニクル』がさまざまなコーナー企画を揃えたお笑いに徹したバラエティ、『関ジャム』がアーティストや音楽ジャンルを深掘りする音楽番組というように、二つの冠番組の棲み分けがきちんとできているところだ。


 もちろんそれが可能なのは、関ジャニ∞の対応能力の高さがあるからである。お笑いであれ音楽であれ、あるいはほかのジャンルであれ、自分たちのものとして消化して表現できる、そんな柔軟性が彼らにはある。


 それは、ジャニーズのエンターテインメントの持つ「ノンジャンル」の楽しさにも通じるように思える。ジャニーズのエンターテインメントは既成のジャンルにとらわれない。和であれ洋であれ、古典であれ前衛であれ、これは面白いと判断されたジャンルがこだわりなく取り入れられてブレンドされ、ひとつのショーとして提供される。そうしたところから醸し出される「ジャンルの坩堝」的な楽しさが“ジャニーズらしさ”の重要な一部だろう。


 ある意味では、テレビというメディアもそうした面が本質的な魅力だ。テレビもまた、ジャンルにこだわらずあらゆるものを貪欲に取り込み、映し出す。特にバラエティ番組は、「バラエティ=多種多様さ」という名が示す通り、「ノンジャンル」のジャンルとして発展してきたいかにもテレビ的なものだ。


 関ジャニ∞は、ジャニーズとテレビに共通するそうした楽しさを、彼らならではの旺盛なサービス精神で表現してくれる。その点、関ジャニ∞は、いまやジャニーズとテレビをつなぐ欠かせない存在になりつつある。と同時に、『クロニクル』と『関ジャム』は、彼らのファンやジャニーズファンだけでなく、テレビ好きであればいま見ておいて損はないクオリティを持った番組であると言っていい。(太田省一)