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MACOが語る新作の“広がり”と“挑戦”「出せる感情が増えて、恥ずかしくないと思えるようになった」

2016年09月20日 17:41  リアルサウンド

リアルサウンド

MACO(写真=三橋優美子)

 MACOが、2ndフルアルバム『love letter』を9月21日にリリースする。前作『FIRST KISS』からおそよ1年、ラブソングにこだわり続ける姿勢は変わらないものの、今作ではよりさまざまな感情を素直に表現することに挑戦したという。サウンド面では生バンドによるサウンドを多く取り入れ、ライブを意識した作品に仕上がった。今回の制作に関しては、歌詞が先に浮かぶことが多かったというMACO。楽曲の制作スタイルにまで変化をもたらしたMACOの「伝えたい思い」はどこから生まれているのだろうか。言葉と歌、そしてサウンドにもこだわりぬいて完成した本作について訊いた。(編集部)


(関連:MACO、『SUMMER STATION』で届けた“恋する歌声” 新曲「love letter」サプライズ初披露


■「『赤』と『青』が浮かんできた」


――今回の『love letter』は、前アルバムの『FIRST KISS』よりも内容が一貫しているようで、コンセプチュアルに仕上がっているように感じました。最後の「手紙」が1曲目の「love letter」と繋がっていて、繰り返し聴くことでより楽しめるというか。

MACO:2ndアルバムを作るにあたって、自分の中で「どんなアルバムにしようかな?」とずっと迷っていたんです。でも、「love letter」の歌詞を思いついてから、アルバムの色とコンセプトがスッと降りてきて、制作スタッフさんたちへ一斉に「自分はこういう思いでアルバムを作るから」ってメールしたんです。

――色というのはどのような?

MACO:前回の『FIRST KISS』はMVも含めて「ピンク」をイメージにしていた部分があったのですが、今回は「赤」と「青」が浮かんできました。「赤」は情熱的な色という意味合いのほかに、「ほっぺや耳たぶが赤くなった」というイメージがあるんです。で、「青」は恋を楽しんでいる自分を、冷静な目で客観視しているもう一人の自分がいるのを感じていて、「これは赤と青だなー」と思いました。

――それをアルバムに落とし込むとき、「赤」と「青」の自分として表現しようとした。

MACO:感情がその時々でバラバラなんですよね。だから自分で自分を気持ち悪いと感じることもあったりして。恋に恋している自分をバカみたいって思ったり、恋愛に一喜一憂していることが可笑しく思えたり。でも、最近はそんな自分の素をステージでもSNSでも出せるようになってきたし、作品にも散りばめていいのかもしれないと考えたんです。だからスタッフさんに初めて作品のコンセプトを細かいところまで伝えたし、そういう風に思えたことも自分としては嬉しくて。

――確かに、歌詞も主観と客観がいつもに比べ何度も切り替わっている印象を受けました。変な言い方かもしれませんが「リア充っぽくなった」というか(笑)。それはやっぱり素を出せるようになったことが大きいんですね。

MACO:リア充って(笑)。まあでも、確かにそうかもしれないですね。歌詞はある意味日記のようなものだと思っていて、その日記に書ける自分が増えたことで、より自由になったというか。

――それは、MACOさん自身のメディア出演にも関係しているのかもしれませんね。YouTubeのポスターやTVCM、歌番組などの出演が増えて、MACOさんのキャラクターがより多くのかたに広がったからこそ、次のステップに進めたのでは?

MACO:本当にそうだと思います。ラブソングが多いから、たくさん恋愛経験をしたから表現できることが増えたと思われがちですが、そういうわけではなくて(笑)。アルバムを作る前から、日常を細かく切り取って歌詞にすることが増えたんです。今まではフレーズごとに書いていたけれど、今回はタイトルが決まって、Aメロ・Bメロがこれで、サビで伝えたいことはこれ、と一曲分書き上げることが当たり前になってきましたね。


――ということは、必然と詞先の曲が多くなった?

MACO:多くなりました。これまでは「この曲だからこういう歌詞にしよう」と曲ありきだったのですが、今回は自分から「こういう歌詞だからこういう曲を作りたい」と、プロデューサーさんにお願いすることが増えたんです。

――今作の特徴として、MACOさんが作曲クレジットに参加している曲がこれまでよりも圧倒的に多いというポイントもありますよね。これも詞先で書いたことが影響しているのでしょうか。

MACO:間違いなく影響していますね。歌詞を書いているときに「ここでギターが欲しい」とか「ベースが入ってきて欲しい」とか、ピアノの音色まで浮かんでくることがあって、それを各プロデューサーさんに膨らませてもらっているんです。

――そこまで細かく自分で設計図を描けるようになったのは、なにか外的要因があるのでしょうか。

MACO:リア充になったからだと思います、というのは嘘で(笑)。前回の『FIRST KISS』はがむしゃらにアルバムに値するような楽曲を作ろうとしていたんです。だからこそ力の入った楽曲たちができたし、それはそれで自分の頑張りとして良かったと思います。ただ、今回はラブでハッピーなMACO以外に、自分の青い部分を出したいと決めたのは……何なんだろう(笑)。たぶん年齢的なものもあるのかもしれないです。

――なるほど、キャリアを積んだからこそ今回のアルバムがあると。

MACO:1歳変わっただけでこんなに広がるんだなと思いました。

――それは『FIRST KISS』を出してからの1年が濃かったという証明なのかもしれませんね。

MACO:だと思います。だからこそ「手紙」のような大事な曲ができたんだと思いますし。この曲は歌詞も曲も自分の中にある思いをそのまま書いて、メロディーもほとんど変えていないんです。スタッフのみんなも「いい曲だね」って言ってくれましたし、家に帰ってじっくり聴いてみたら涙が止まらなくて。本当にこの曲を書けたことがうれしいし、自分が思っていることが全部詰まっているといっても大げさじゃないですね。


■「生々しい自分をさらけ出すことができたらと思っていた」


――この「手紙」もそうですし、これまでMACOさんが作曲クレジットに携わっている楽曲ってどこか懐かしい感じというか、90年代のJ-POP的な質感がありましたよね。でも、「under the rose」はアーバンなバンドサウンドで、初めて聴いたときは驚きました。

MACO:「under the rose」は“秘密”をテーマに歌詞を作ったのですが、音までドロドロしたものになっていたらすごくいやらしいかなと思って、オシャレなバンドサウンドで歌いたいと思い、ある程度のところまで決めて、プロデューサーさんにお願いしました。

――アルバム全体を見てもバンドサウンドがどんどん多くなっているなと感じます。このあたりはやはり自分で意識したんですか?

MACO:かなり意識しました。バンドでライブや『FIRST KISS』のツアーをどんどん重ねるうちに、生のバンドが好きなんだと改めて自覚したんです。兄もベースをやっていましたし、パパもギターを弾いていましたし、ギターやベース、ドラムの音が大好きなのは、そういう環境で育ったからなのかもしれません。ファンのみんなもライブを見て、MACOの曲をバンドで聴く良さを感じてもらっていたはずだから、作品に収録しても喜んでくれるだろうと思った部分もありますね。

――MACOさんの声はバンドと相性がいいというか、バンドに全く負けないから、聴いててより気持ち良く感じます。

MACO:ありがとうございます。だからアルバムのツアーでまたこれらの楽曲をバンドセットで披露できると思うとワクワクします。

――ライブの話になったので、ここで一つ訊いておきたいんですが、今年はとくにフェスやイベントなどに出ることが多かったですよね。爪痕を残せたという手ごたえはありますか?

MACO:そうですね。フェスに関しては、MACOのことを名前だけしか知らないというお客さんが多いので、良い意味で空気の違うところに放り出される感覚があるんですよ。最初は驚いた顔で見られるんですけど、トークでみんなが笑顔になってくれたり、曲に込めた思いを話してから歌うと、みんなの目が少しだけ変わったように見えるんです。今年のフェスでは毎回ちゃんと伝わっていることを感じれて嬉しかったです。

――大先輩であるDREAMS COME TRUEのライブ『私だけのドリカム THE LIVE in 万博公園』にも出演しましたよね。ここも試練の場だったのでは?

MACO:試練の場でしたね(笑)。あんな場所で歌えると思っていなかったですし、歌う曲がまさかの「未来予想図II」だという。めちゃくちゃ緊張して、汗が止まらなかったんですけど、中村正人さんが袖で見ていてくださって、終わってから「自分のものにしてくれていたから、見ていてすごく気持ち良かった」と暖かい言葉をかけてくれたんです。その後はドリカムさんのライブを見させていただいて、最初から最後まで号泣で。そのとき丁度アルバム制作期間で感受性も高かったので、号泣しながらもアルバムのことがずーっと頭の中にあったんです。吉田美和さんの歌詞って、ほとんどがラブソングで、しかも生活感もあって生々しさがあるんですよね。自分の書く歌詞にも重なるところがあって、理想的だなと思える部分も多かったです。『love letter』の配信版には「未来予想図II」のカバーも収録させていただけて、本当に光栄です。

――吉田美和さんの歌詞と自身の歌詞に共通する部分があるということですが、確かに細かいアイテムの使い方などにその片鱗を感じますね。歌詞の中にさりげなく出てくるアイテムが、その曲を引き立たせるキーになっているというか。

MACO:そこは今回のアルバム曲の歌詞でも意識した部分ですね。前は恥ずかしいと思って出さなかったり、あえて普遍的な表現にすることもあったのですが、今回は生々しい自分をさらけ出すことができたらと思っていたので、遠慮なく書かせてもらいました。

――確かに、『恋心』あたりから増えてきたイメージがあります。

MACO:まさにそのあたりからですね。でも、細かい表現まで入れようとすると、言いたいことがたくさんありすぎて曲が3番まで必要になっちゃうくらいの量になるので、そこから削るのは大変です(笑)。その分アルバム制作はいつもより時間が掛かりました。

――ちなみにアルバム曲のなかで一番最初に形になったのはどの曲ですか?

MACO:最初に形になったのは「あなたの彼女」ですね。以前にMUSOHさんに作っていただいてからずっと温め続けていた曲なんです。

――『恋心』のインタビュー時に話してくれていましたよね。

MACO:そうだ! なので今年の初めごろに作った曲ということになりますね。これは最初から片思いの曲だったんですが、どんどん表現は生々しいものに変わってきました。最終的には彼女がいる人を好きになってしまって、「あなたの彼女になりたかった……」と病んじゃう歌になって(笑)。

――アルバムの中でも特に生々しい曲になっていると思います。

MACO:さっき「一番最初に形になった」と言ったんですけど、歌はかなり長い期間をかけてレコーディングしたんです。曲と歌詞が持つ生々しさを歌でも出さなきゃと思って、何度も録りなおしました。エンジニアさんにOKと言われても、持ち帰って聴いたら納得できないこともあったりして。とくにブリッジ部分の感情の入れ加減には苦戦しました。


■「幅広い世代の方に聴いてほしい」


――今回はどこか開放感のある曲が多いので、この曲が異端に映る理由もわかりますし、そこまで歌入れに苦労したという部分も、何となく伝わります。

MACO:曲によって全然声が違うんですよね。自分の中でもキャラクターを変えて歌うことを意識したんだと思います。

――それは、経験を積む中で演じれるキャラクターが多くなったということでしょうか。

MACO:そうですね。自分のもともと持っている声って、すごくバラード向きなんです。でも、明るい「family」を切ない声で歌ったら弱々しくなっちゃうので、そんなときにもう一人のMACOを何パターンも用意できるようになりました。それだけ出せる感情が増えて、恥ずかしくないと思えるようになったんですよ。

――新しいキャラクターという意味では、表題曲「love letter」で見せた一面に驚きました。初めてタッグを組んだ丸山真由子さんの作った楽曲もミュージカル的なポップスで面白いし、MACOさん自身の声も曲の中で移り変わっていて。

MACO:丸山さんに関しては、もちろん他のアーティストさんの作る楽曲で存在は知っていて、このタイミングでぜひお願いしたいと思って依頼させていただきました。曲を聴いたらすぐに<臆病なlove letter>という歌詞が浮かんできて、そこから色々膨らませていったんです。

――タイトルはこの曲きっかけで決まったということですが、そもそもアルバムタイトルを「love letter」にしようと思ったのはどうしてなのでしょう。

MACO:歌詞はスマートフォンで書くことが多いんですけど、それって歌詞というより好きな人に対するラブレターであり、日々の日記のようなものだなと感じたんです。だから最初はアルバムタイトルも「Diary」みたいなものにするかどうか迷ったんですが、私の楽曲はラブソングが多いですし、だったら「love letter」にしようかなと。

――なるほど。冒頭に話したように、アルバム全体を見たときに、曲調はバラバラだけど内容は一貫しているように思えるのは、その軸がしっかりと固まっていたのもあるんでしょうね。

MACO:アルバムを通してひとつの「love letter」というストーリーを自分の中では作ったつもりなんです。全部MACOという人物を通したものなんですけど、あなたの彼女になれなくて、元彼を思い出して、でも夢見る私を笑わないでほしくて、もう一回ポジティブになったり、そこから過去に想っていた人へのメールが見つかったりとかして。でも、最終的には「手紙」で自分のちゃんとした感情に気づけて、その相手へ手紙を渡したいという想いがあったことに気づけるという。

――そのストーリーの中で、自分は色んなキャラクターを演じているのではなく、あくまで様々な出来事に遭遇した時の感情を出しているというスタンスなんですね。

MACO:はい。「私はこの曲に一番共感できる」って感じてくれたら嬉しいなと思いますし、それぞれのなかで、自分のストーリーと重ねて合わせて聴いてくれたら幸せです。

――最後に、今後の展開について訊きたいのですが、25歳のMACOさんが、26歳になるまでにたどり着きたい場所はありますか。

MACO:全国ツアーのステージの規模もどんどん大きくなっている実感はあるのですが、そこで満足せず、もっと大きい舞台でライブができる様になりたいですね。あと、25歳になった自分の歌を中高生の方が聴いてくれるのはすごく嬉しいし、みんなと一緒に歳をとって成長していきたいと思っています。もちろん、同年代やもっと上の年代、男女問わずたくさんの方に届いてほしいんですけど。特に今回のアルバムは、幅広い世代の方に聴いてほしいなと思っています。

――そういう意味では色々な曲を歌って、幅広い層にアプローチすることも大切だと思うのですが、次はどんなジャンルに挑戦してみたいですか。

MACO:もちろん今回のアルバムでトライした新しいジャンルには引き続き挑戦しつつ、どこか懐かしさも感じ取ってもらえるような、90年代の空気感に近い楽曲はもっと増やしていきたいですし、上の世代の方に「こんな良い曲を歌っているのね」と感心してもらえるような曲が自分のなかから出てくるようになりたいです。


(中村拓海)