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KinKi Kidsの新作『N album』に瑞々しい風が吹いた理由ーー9月21日発売の注目新譜5選

2016年09月20日 13:11  リアルサウンド

リアルサウンド

(C)タナカケンイチ

 その週のリリース作品の中から、押さえておきたい新譜をご紹介する連載「本日、フラゲ日!」。9月21日リリースからは、KinKi Kids、EXILE THE SECOND、Aimer、寺嶋由芙、Reiをピックアップ。ライターの森朋之氏が、それぞれの特徴とともに、楽曲の聴きどころを解説します。(編集部)


(関連:KinKi Kidsのコンサートは一味違う! パフォーマンスと2人の距離感が心を掴む


・KinKi Kids『N album』(AL)


 堂本剛がギターを弾き、堂本光一がフラメンコ風のダンスを踊るという、それぞれの特性を活かしたパフォーマンスも話題を集めた最新シングル曲「薔薇と太陽」(作詞作曲/吉井和哉)を含む15thアルバムは、“naked&natural”というテーマ通り、彼らの音楽的な魅力ーー歌謡的な情緒性とソウル、ファンク系のサウンドの融合ーーがきわめて自然に表現された作品となった。ポイントは堂島孝平がプロデューサー的な立場で参加したこと。「Misty」「カナシミブルー」などのKinKiの人気曲を手がけてきた堂島は、本作に「モノクローム ドリーム」「夜を止めてくれ」といったポップ&ダンサブルな楽曲を提供。歌の上手さゆえ、ともすれば重厚になりがちだった最近のKinKi Kidsに瑞々しい風を吹かせることに成功している。正確なリズムとピッチで楽曲の枠組みを作る光一、歌の心情、物語を描き出す剛のボーカルの対比も明確になり、日本を代表する男性デュオとしての実力をたっぷり感じることが出来る。なかでも印象的なのは、ふたりのユニゾン(あえてハモリは封印)が堪能できる「なんねんたっても」。“何年たっても今日という日のことを覚えている”というメッセージ性も15周年のアニバーサリーにもふさわしい。


・EXILE THE SECOND『WILD WILD WILD』(SG)


 享楽的なEDMサウンドを取り入れたパーティチューン「YEAH!!YEAH!!YEAH!!」、ヒップホップ、ダブの要素を混ぜ合わせたトラックとともに“情報に惑わされず、本物を見ろ”とメッセージする「Shut up!! Shut up!! Shut up!!」に続くシングル3部作のラスト作「WILD WILD WILD」は、このグループの魅力である“大人の男のワイルドな色気”を前面に押し出したエレクトロ・ダンス・ナンバー。プリミティブなパワーを感じさせるビート、重厚感としなやかさを兼ね備えたサウンドメイク、“一点突破”“限界突破”という勢いに満ちたフレーズが押し寄せるアグレッシブな楽曲に仕上がっている。


 このシングルからEXILE AKIRAが加入。ジャングルを舞台にしたミュージックビデオでも野性味に満ち溢れたパフォーマンスを披露し、EXILE THE SECONDの特徴を明確に打ち出している。シングル3部作を経て、10月からはいよいよ初の単独アリーナツアーがスタート。全員30代の彼らは、次世代のEXILEを背負うべき立場。今回のツアーは最初の試金石となりそうだ。


・Aimer『daydream』(AL)


 野田洋次郎(RADWIMPS)、Taka(ONE OK ROCK)という現在のロックシーンを象徴する2大カリスマをはじめ、TK(凛として時雨)、阿部真央、澤野弘之、内澤崇仁(androp)、スキマスイッチが参加したコラボレーション・アルバム。楽曲を提供したすべてのアーティストがAimerの声に強烈な愛情を感じ(TKは「声からメロディが生まれ、言葉が引き寄せられていく」とコメント、野田に至っては「声だけで、この人のことなんか好きだなと思ってしまった」と“告白”)、“自分の作家性によって、彼女の新しい魅力を引き出してみせる”とばかりに気合の入った仕事をしている。楽曲のテイストは驚くほどに幅広いが、Aimerは優れた演奏者のように自らの声を完璧にコントロールし、鋭さと優しさを同時に感じさせるボーカルをたっぷりと披露。特に5曲を提供しているTakaの楽曲との相性の良さは、今後のAimerの方向性を示唆しているように感じる。それにしても才能あふれるアーティストたちにこんなにも愛される女性シンガーの気分とは、一体どんなものなのだろうか…?


・寺嶋由芙『わたしになる』(AL)


 ソロアイドルとして再スタートしてから約3年を経て完成した1stフルアルバムは『わたしになる』というタイトルが示唆するように、彼女のキャラクター、嗜好性、これからのビジョンがポップに描かれた作品に仕上がった。アルバムの軸になっているのは、早稲田大学で日本文学を学んだ寺嶋が敬愛する歌人・作家の加藤千恵が作詞した表題曲「わたしになる」。“まだまだ未熟かもしれないけど、このまま進んでいく”という意志を表現したこの曲は、グループアイドル全盛の時代にソロアイドルとして活動している彼女自身の意志に直結している。さらに“ゆるキャラ好き”を前面に押し出した「ゆるキャラ舞踏会」(作詞は“ゆるキャラ”命名者のみうらじゅん)、夢眠ねむが歌詞を担当し、寺嶋のプライベートな感情を浮き彫りにした「オブラート・オブ・ラブ」、真部脩一(Vampillia)がプロデュースを手掛けた抒情的なラブソング「101回目のファーストキス」も。ノスタルジックな正統派アイドルポップスと寺嶋の個性がバランスよく共存した充実作だと思う。


・Rei『ORB』(ミニAL)


 戦前のブルース、1950年代~1970年代あたりのロックンロールから最新のエレクトロまでを吸収し、ルーツミュージックの力強さと現代的なポップネスを融合させた楽曲へと結びつけるReiの3rdミニアルバム。長岡亮介(ペトロールズ)のプロデュースによりReiの基本的なスタイルが提示された1stミニアルバム『BLU』、ほとんどの楽器を自ら演奏することで独自のグルーヴを追求した『UNO』に続く本作『ORB』には、彼女のソングライターとしての資質がもっとも強く表れている。“あなたには本当に夢中になれるものがある?”と問いかけるようなリリックが印象的なポップチューン「Pay Day」、東京という街に対する憧れと“この場所で自分の夢を掴みたい”という思いがひとつになったロックンロールナンバー「Route246」など、彼女自身の感情が色濃く反映されている楽曲が軸になっているのだ。爽やかさ、凛とした鋭さ、女の子らしい可愛らしさなど、楽曲によって表情を変えるボーカルも魅力的。


(森朋之)