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浜野謙太、志磨遼平、石崎ひゅーい……個性が光る! 注目のミュージシャン俳優たち

2016年09月18日 12:21  リアルサウンド

リアルサウンド

リアルサウンド映画部

 福山雅治、星野源、ピエール瀧など、俳優業と音楽活動を両立しているアーティストは少なくない。また、最近では『トイレのピエタ』で主演を務めたRADWIMPSの野田洋次郎や、『ピースオブケイク』で千葉役を務めた銀杏BOYZの峯田和伸なども話題となり、その演技にも注目が集まった。ミュージシャンならではの個性は、映画やドラマの中でも独特の存在感となり、作品に奥行きを与えるようだ。そこで今回は、これから公開される映画から、特に注目したい個性的なミュージシャン俳優を3人紹介したい。


■『闇金ウシジマくん Part3』浜野謙太


 “ハマケン”こと浜野謙太は、昨年解散したインストゥルメンタルバンド・SAKEROCKや現在活動中のディープファンクバンド・在日ファンクなど、様々なバンドで活躍しているミュージシャンだ。


 9月22日に公開される映画『闇金ウシジマくん Part3』では、“誰でも稼げる”と謳うアフェリエイト塾を主宰するネット長者・天生翔役を演じる。浜野はインタビューで「天生のカリスマ性は、本人も自覚してエンタメとして演出している部分が大きいので、役作りを構築するというより、音楽のライブのつもりで挑みましたね」(引用:otoCoto/芝居も一度「音楽」に翻訳するのが“ハマケン流” 映画『闇金ウシジマくんPart3』 浜野謙太インタビュー)と語っているように、ミュージシャンならではのスタンスで役と向き合っている。そのためか、浜野が演じるキャラクターは毎回エンターテインメント性が高く、観るものを虜にさせるのだ。


 ほかにも、現在公開中の映画『ディアスポリス -DIRTY YELLOW BOYS-』や、月9ドラマ『好きな人がいること』(フジテレビ系)、連続テレビ小説 『とと姉ちゃん』(NHK)などにも出演しており、近年最も活躍が目立つミュージシャン俳優の一人だ。今までは性格が軽く、テンションが高いムードメーカー的な役柄が多かったが、先述した『闇金ウシジマくん Part3』では、初めての悪役を演じる浜野。ミュージシャンの経験を活かした演技と持ち前のユーモアさがどのように反映されたヒール役になるのか楽しみだ。


■『溺れるナイフ』志磨遼平


 2011年に解散したロックバンド・毛皮のマリーズを経て、現在はロックバンド・ドレスコーズのボーカルを務める志磨遼平。ミステリアスな雰囲気とウェーブがかったロングヘアが印象的なミュージシャンだ。


 11月5日に公開される映画『溺れるナイフ』では、カメラマン・広能晶吾役として初めて演技に挑戦し、主題歌も担当している。主題歌「コミック・ジェネレイション」は、毛皮のマリーズの楽曲であり、今回ドレスコーズとして再録音したものが使用されている。


 志磨が演じる広能晶吾は、気鋭のフォトグラファーで映像クリエイター。望月夏芽(小松菜奈)を気に入り、東京から遠く離れた浮雲町まで訪れ、彼女の写真集を制作する。一見、軽い性格で適当な人間の様に見えるが、夏芽が何度つまずいても手を差し伸べ、強引に救い出す。ジョージ朝倉による原作で広能は、才能あふれるクリエイターだからこその変人であり、独特な雰囲気をまとったキャラクターとして描かれている。


 本作でメガホンを取った山戸結希監督は、「志磨さんの眼の、ひとを硬直させる感じ。声の、がんじがらめにする感じ。誰にも似ていない手。志磨さんだけが歌う歌だと、1秒目から永遠に分からせてくれる感覚。志磨遼平さんは、すべての女の子にとっての、広能さんみたいな男の子でもある」(引用:映画『溺れるナイフ』公式サイト|NEWS)とコメントしている。


 志磨が持つ、ふわっとしている一方でどこか鋭く狂気じみた雰囲気は、目を惹き付けて離さない。そして、一度聴いたら忘れられない唯一無二の唄声が人々を魅了する。志磨の持つ不思議な魅力は、まさに広能晶吾というキャラクターと重なる。志磨が演じる広能もきっと、非常に魅力的なキャラクターに仕上がっているのではないだろうか。


■『アズミ・ハルコは行方不明』石崎ひゅーい


 シンガーソングライターである石崎ひゅーい。『アズミ・ハルコは行方不明』で、映画初出演を果たす。石崎演じる曽我雄二(28歳)は、安曇春子(蒼井優)の同級生であり、ある日をキッカケに“付き合う”という言葉はないまま、春子と曖昧な関係になっていくという役どころだ。


 本作への出演がきっかけとなり、今年5月にリリースしたアルバム『花瓶の花』に収録された同名曲をもとに制作した短編映画『花瓶に花』が、「ショートショートフィルムフェスティバル&アジア2016MUSIC VIDEO部門」で優秀賞を受賞した。


 石崎は、真っ直ぐ感情のまま歌い、底に秘めたエネルギーをぶつけるようなライブパフォーマンスをする。楽曲によって、石崎自身の雰囲気を含めガラリと調子が変わるが、どの楽曲もどこか優しく温かい部分がある。だからこそ、人々の心に染みる。また、ほとんどのPVに石崎自身が出演しているが、どれも楽曲と映像の世界観に見事に溶け込んでいる。しかし、PVで観る石崎は、まるで何かに取り憑かれているような非現実感もあるのだ。その世界の人物になりきっているからこそ、ファンタジー性を感じさせるのである。


 そんな表現者である石崎は、『アズミ・ハルコは行方不明』でどのように曽我雄二という人物になりきり、作品に色を添えていくのだろうか。石崎の姿をスクリーンで観るのが、とても楽しみだ。



 今回紹介した3人は、全員が自ら作詞作曲も手がけるシンガーであり、その世界を構築するためのパフォーマンスは、演技にも通じるところがありそうである。彼らの個性的な表現が、芝居の中でどのように活かされていくのか、ぜひチェックしてみてほしい。(戸塚安友奈)