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FLOWER FLOWER、新作『宝物』の鮮烈なコントラスト! “yui”と“バンド”両面が見える内容に

2016年09月17日 17:01  リアルサウンド

リアルサウンド

FLOWER FLOWER『宝物』(通常盤)

【参考:2016年9月5日~2016年9月11日のCDシングル週間ランキング(2016年9月19日付・ORICON STYLE)】(http://www.oricon.co.jp/rank/js/w/2016-09-19/)


 2016年9月19日付の週間CDシングルランキングを1位から10位まで聴いた中で、もっとも耳に残ったのは10位のFLOWER FLOWERの『宝物』でした。そのバンド・サウンドは耳に優しくも新鮮だったのです。


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 FLOWER FLOWERは、かつて「YUI」としてソロで活動していたyuiが在籍する4人組バンド。キーボードのmura☆junこと村山☆潤はでんぱ組.incのサポート、ベースのmafumafuこと真船勝博はEGO-WRAPPIN'のサポート、ドラムのsacchanこと佐治宣英は清木場俊介のサポートなどでも活躍しています。


 ライブでこれまでも演奏されてきたという「宝物」は、2013年から活動するFLOWER FLOWERにとって初めてのシングルCD。アコースティックな感触が強いミディアム・ナンバーです。


 そして、冒頭で歌われるのは<君が死ぬ時は僕の息も止めてよ>という歌詞。歌いだされた瞬間に胸をつかまれるものがあります。Bメロやサビも凝ったメロディー・ライン。そして、<もし私がいなくなっても/ちゃんと生きてゆくのよ>という歌詞で「宝物」は終わるのです。


 「宝物」は、yuiの恩人夫妻のエピソードを歌にしたという楽曲ですが、その詳細を私は寡聞にして知りません。しかし、その物語を知らなくても聴き手に迫ってくるところに、ソングライターとしてのyuiの力量を感じます。「宝物」には「僕」と「私」が登場しますが、その両者に聴き手は自身が抱えるさまざまなものを投影させることができるでしょう。


 人間というものは死と性の匂いには敏感なものです。それは音楽においても例外ではありません。「宝物」はまぎれもなくラブソングなのですが、最初から最後まで死の予感がつきまといます。しかし、聴き手はせつないラブソングとしても聴くことができるという多面性こそが、FLOWER FLOWERの「宝物」が私の心をつかんだ理由でした。


 そして、カップリングの「炎」は一転してソウル色が濃く、メロウなナンバー。ギターのリフもファンキーです。


 「宝物」はyuiの作詞作曲によるものですが、「炎」はyui作詞、FLOWER FLOWER作曲。FLOWER FLOWERの公式Twitterアカウントでは、曲作りについて、yuiがモチーフとなる楽曲をアコースティックで作ってバンドでアレンジする形と、ジャムセッションで作る形があると紹介しています。「宝物」は前者、「炎」は後者に当たるそうです。


 終盤に向けて緊張感と昂揚感を増していく「炎」では、各メンバーのプレイにも個性がはっきりと感じられ、「宝物」以上に「バンドの楽曲」だと感じます。


 そして、まるで雰囲気が異なる「宝物」と「炎」ですが、2曲とも実はラブソングである点では共通しています。しかしながら、yuiというシンガーソングライターとしての側面と、FLOWER FLOWERというバンドとしての側面が、それぞれ浮かびあがっています。生と死、あるいはソロとバンド。FLOWER FLOWERの『宝物』は、そうしたコントラストを鮮やかに浮かびあがらせているシングルです。(宗像明将)