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欅坂46・平手友梨奈&長濱ねる、演技上達の鍵を握るのは嶋田久作? 『徳山大五郎』での成長を見る

2016年09月17日 07:21  リアルサウンド

リアルサウンド

(c)「徳山大五郎を誰が殺したか?」製作委員会

 嶋田久作といえば、『帝都物語』で演じた加藤保憲の強烈すぎるインパクトが未だに消えない、日本を代表する個性派俳優だ。名バイプレーヤーとして、様々な映画やドラマで脇を固める彼が、この『徳山大五郎を誰が殺したか?』ではタイトルロールを演じている。そのタイトルの通り、第1話からずっと死んでいる状態で1クール駆け抜けるから、なかなか奇妙な役回りだ。


 第7話で徳山大五郎の双子の兄の大四郎としてにこやかな表情で登場したように、見た目のイメージを大きく覆すような役柄も難なくこなす一方で、今回の第9話の冒頭では独特の存在感を遺憾なく発揮する。平手友梨奈が夢の中で自分が犯人だと責め立てられるこの場面で、まるでゾンビのように起き上がって近づいてくる嶋田久作の不気味さは、他の役者では決して演じることができない凄みがにじみ出ている。


 そんなベテラン個性派俳優の存在は、演技未経験の欅坂46メンバーに大きな刺激となっていることは間違いない。9月11日に放送された『欅って、書けない?』で、メンバーの素性を知るためのスタッフアンケートが行われたが、その中で嶋田久作は律儀にも各メンバーについてアンケート用紙いっぱいにコメントを書いてくれていた。役柄同様に教室のロッカーから常に彼女たちの拙い演技を見守る担任教師なのだ。


 そのおかげもあってか、第1話からもう2ヶ月で、確実に彼女たちの演技は巧くなってきている。とくに平手と長濱ねるの二人は、出番も多く、物語の中心にいるメンバーだけあって、それが顕著に見受けられる。


 このドラマに関する記事で、欅坂46メンバーそれぞれに触れてきているが、この二人については再び触れておく必要があるだろう。第1話の時に真っ先に平手を取り上げてその無限の可能性を秘めた才能を絶賛した(参考:欅坂46平手友梨奈は女優としても逸材だ! 『徳山大五郎を誰が殺したか?』で見せた将来性)が、最初の頃に見せた堂々とした立ち居振る舞いはそのままに、後半になるにつれて微細な演技にも磨きがかかっている印象を受ける。


 冒頭の夢の場面でロッカーに入ったメンバーたちを見つめる表情から、嶋田久作ゾンビに怯み、叫ぶ。そこから起き上がったときの少しあどけなさの残る表情のギャップ。新たに校長として赴任した濱田マリ演じる御堂園を睨みつける表情、そして追い詰められたときに夢の場面との反復するような芝居。無表情で毅然とした振る舞いを見せ続けてきた彼女に、演技のバリエーションが着実に増えてきている証拠である。


 一方、長濱ねるも負けてはいない。初登場シーンのホラーっぽさを皮切りに、彼女持ち前の知的さを残す、ミステリアスな魅力を発揮し続ける。平手が御堂園にロッカーを見られそうになったタイミングで、彼女も瞬時に表情を変える技を見せるが、それだけではない。その後に教室に戻ってきた彼女が披露する一連の芝居は、平手を飲み込むほどの力強さを放つ。


 クラス中から疑いの目をかけられた平手を擁護するかのように、冷静に現状の分析を行う長濱。彼女自身、すでに第5話で犯人に疑われている立場でありながら、探偵芝居を行うというのは面白い。しかも、その言葉に妙に説得力がある。第6話での渡邉理佐とのやり取りのせいで険悪な雰囲気になっている石森虹花から「誰の味方なんだよ」と問われると、「味方って何? じゃあ誰だよ敵は」と、すっぱり切り捨てる良い台詞を吐くではないか。


 これからドラマのクライマックスに向けて、謎の解明と同時に、平手と長濱の二人の演技合戦(個人的にはこれを“てちねる合戦”と呼びたい)も見ものとなってくるに違いない。また終盤では、これまであまり目立ってこなかった中立派のグループにも見せ場が訪れるようなので、それも楽しみだ。(久保田和馬)